拓馬
翌日、美鈴は署に行き最初に高木に話を聞くことにした。高木なら何か知ってるかもしれないと思ったのだ。
まず、高木がまだいるか彼女は心配してたがまだ残っていた。他に、何人かの刑事もいる。
「高木先輩、話があります」と彼女は話しかけた。
それに対して、高木は「おっ、告白かい?嬉しいね〜」と返した。
「違います」
「恥ずかしがらなくてもいいんだぜ」と笑いながら高木は言った。
「恥ずかしがってなんかいませんが」冷静に彼女は返した。
「だから、愛想がないんだって…」
「先輩、ちょっと来てくれませんか?」
彼女の顔は急に笑顔になり、冷たい声でそういった。
「怖っ。やっぱり、お前に愛想は要らんかったな」と言って彼はついてきた。
部屋を出るときには、笑い声が聞こえてきた。
二人はとりあえず、誰もいない部屋を見つけたのでそこで話すことにした。
「私の捜査している事件の捜査が打ち切りになったんですが」
「ありゃ、本当に告白じゃなかったか」
「ふざけないでください」
「はいはい、俺も気になったんだよな。可愛い後輩の捜査している事件だからさ〜」と言って、彼女の方を見た。
「何かわかりましたか?」
「あぁ、隠してる奴もいるみたいだがどうやら上からの圧力らしい」
「上って、警視庁ですか?」
「いやいや、国だってよ。なんで、こんな小さい事件に国が絡むかね〜」
それを聞いて彼女は驚いた。
国が圧力をかけるとしたら、余程のことだ。
他の国が関係してるのかもしれない。
そして、「まぁ、この事件は辞めといた方がいい。警察を辞めたくなかったらな」と高木は続けた。
彼女は、「わかりました」とだけ言った。
それを聞いて高木はこの部屋を出て行った。
彼女は、どうしようか考えていた。
この後に、拓馬君が返されることもわかっているのに捜査を止められた。
そこで、彼女は思った。返されるというのがおかしい。もしかしたら、国と裏で何か取引をしたのでは無いかと。
しかし、拓馬君にそこまでの価値があるとは到底思えなかった。
一人の男の子が、国と取引する材料にはなるはずが無い。
この事件はわからないことばかりだ。
今わかることを整理しようとして、彼女はナンバーのことを思い出した。
もう既に終わっているはずだ。
あれが犯人かはわからないが、一応確認は必要だ。
そして、彼女は調べるのを頼んでおいた人のところへ向かっていった。
宮田は、椅子の上で目が覚めた。
状況が把握出来なかったので、昨日のことを思い出そうとした。
昨日は、夕食時まで本を読んでいた。そして、夕食にカレーを作り拓馬とC拓馬に与えた。その後、また本を読んでいたはずだが。
床には、本が落ちている。つまり本を読んでる途中に寝てしまったのか、と状況を理解した。
いつの間にか、自分も疲れているんだなと彼は思った。
この時間には、まだどちらも起きてないはずだが、やることも無いので見に行くことにした。
まず、C拓馬を見に行ったがやはり寝ていた。
次に、拓馬を見にいくと部屋の中から音が聞こえる。
入ってみると拓馬がゲームをしていた。
彼は珍しいと思い、「もう、起きてたのかい?」と聞いた。
「うんうん。寝れなくてずっとゲームやってるんだ」と拓馬は答えた。
宮田は、それを聞いて余程親に会えるのを楽しみにしているんだなと思った。
「そうか。もうすぐ、お父さんやお母さんに会えるからな。心配するだろうから、今は寝てなさい。目を閉じれば寝れるはずだよ」
「そうかな。わかったよ。お休みなさい」
そう言って、拓馬は目を閉じたので様子を見てると少しして寝息が聞こえてきた。
宮田は、安心して自分の部屋に戻った。
拓馬がまた、起きたら公園に届けよう。そこからは、自分で帰るか誰かが送ってくれるはずだ。
そして、彼は落ちてる本を拾い、ページをめくり始めた。