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それぞれの末路  作者: 途山 晋
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返還

美鈴は署に戻るとさっき見つけた車のナンバーを早速調べてもらうことにした。

しかし、他の事件もあり忙しいらしく結果は明日になるだろうと言われたので、また外に出て調査を始めることにした。

さっきは朝だったから人はあまりいなかったが、昼になったのでさっきよりはいるだろうと思った。

更に、朝に見た白い車の向かって行った方を調べればいいのだからヒントは増えてる。

そして、彼女は公園近くの道路へと再び向かった。

彼女は、車が去っていった方向に車で進んでいった。

そこに、十字路が現れたので一旦止まった。

そして、そこから情報収集を始めた。

この時間だとやはり人がいた。しかし、情報は集まらなかった。考えれば当然だったが、車を気にしてる人など一人もいなかった。

彼女は途方に暮れた。やっと順調に進むと思ったのに。

ナンバーの結果を待つしかない。そう思い、今日はこれくらいにして署に戻ろうとした。

そこで、高木の言葉が蘇る。情報量が足りない。今、集められる情報を全て集めただろうか。そう思い考え直した。

その結果、拓馬君の両親の家へ行くことにした。もしかしたら、犯人からなんらかの要求が来ているかもしれない。

殆ど無いとは思ったが、情報を集めるために彼女は家に行くことにした。


宮田は安心した。依頼主がなんとかしてくれるようだから、もう大丈夫だと。

さっき見たワイドショーでは、まだ報道されていたが明日からは無くなるのか、それとも報道はされて警察の捜査だけ止めるのだろうかと考えた。

しかし、それは明日にはわかる。そして、実験の現在の様子に思考をいかせた。

彼は、三日間の観察の結果C拓馬の爪や髪は伸びないようだから、不老については成功。行動や性格も同じようだからなんの問題もないと考えた。

問題があるとすれば拓馬の方だ。流石に三日間親と会えず、外にも出ずにこの研究所にいたせいか少しやつれてきた。さっきのワイドショーに出てきた拓馬の両親も相当やつれていた。

これ以上は、両親と拓馬の精神が保たないかもしれない。

明日にでも拓馬を解放しよう。C拓馬が残っていれば、問題は無いだろう。

しかし、そのC拓馬も今の拓馬のようになってしまうだろう。

子供じゃなく、最初から成人で実験をしたら良かったと今更後悔した。

C拓馬はどうするべきか。今のところは保留するしか無い。いずれ複製だということを教える事が必要かもしれない。それが、どういう結果をもたらすかはわからないが。

そして、彼はどう拓馬を返すかを考えることにした。


美鈴は赤西家についた。

美鈴はふと、空を見ると夕陽によって空は赤く染まっていた。彼女は血のような赤では無いのに、血を思い浮かべてしまった。

血を流しているのは誰だろうか。拓馬君の体か。両親の心か。それとも他の誰か。誰かとは誰だろうか。そして、不吉だと思い考えるのをやめた。

インターフォンを押すと、父親が出てきた。

「刑事さんですか。何のご用ですか?」

父親は相当疲れていた。ただでさえ、拓馬がいなくてショックを受けているのに、記者がインタビューしに来るから尚更だ。

「突然すみません。何か新しい情報は無いかと思いまして」

彼女は、少し罪悪感を感じながら聞いた。

「今のところ、何も無いです。一旦家にあがってください」

「大丈夫なんですか?」

「えぇ。出来れば妻を励まして欲しいので」

「わかりました。お邪魔します」

家に入り、そのままリビングに向かった。

そこには、ソファに座ってる母親がいた。

「あら、刑事さんだったんですね」

母親は、笑おうとしてるがうまくいっていない。

「すみません。拓馬君は絶対に見つけます。もしかしたら、明日か明後日にはもう犯人を見つけられるかもしれません」

「本当ですか⁉お願いします。拓馬を取り戻してくださいね」

母親の目には光が宿った。

「はい。絶対に取り戻します」

美鈴も強い意思で返した。

「それでは、私はそろそろ署に戻ります」

「わかりました。ありがとうございます」これは、父親が言った。父親も少し元気になったように見える。

そして、美鈴がリビングのドアに向かって行った時に電話のベルが鳴った。

「一体誰だろうか」

父親はそう言って受話器を取った。

そして、何かを激しい剣幕で言った。それが終わり受話器を置いた彼は呆然としていた。

「一体誰だったんですか?」

彼女は、彼の怒り具合が気になり尋ねた。

彼は、ゆっくりした動きで妻を見た。そして、美鈴を見てこう言った。

「犯人からです」

「本当に⁉」と母親は叫んだ。

「一体何と言っていたんですか?」美鈴は尋ねた。

「あぁ、本当だ。刑事さん男の声でした。そして、明日拓馬を返すと言ってきました」

「明日、拓馬君を?」

「そのようです。方法は教えてくれませんでしたが」

母親は、涙を流している。

美鈴は、無事な体で帰ってくるかはわからないと思った。そして、方法を言わないのもおかしいと思った。だから、本当に帰って来るかはわからないと思った。

そう思い「良かったですね」とだけ言った。

「では、私は署に戻りこれを報告します。明日、何人かの他の刑事も連れて来たいと思います」

「はい」と言う父親はまだ呆然としている。

美鈴は、とりあえず家を去ることにした。

玄関のドアを開けた後、彼女は悪いことが起きないように願いながらドアを閉めた。

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