隠蔽
美鈴がそのまま道路に戻ろうとするとすぐ前を車が通過した。
彼女は驚いてそこで立ち止まった。
危ないなと思いながら車を見ると白い車だ。
歩きでは追いつくわけが無い。急いでナンバーを確認する。車は、そのまま道路を進んで行ったがナンバーは覚えた。
あとは、これを署の担当に調べて貰おう。
あの車が犯人の車かわからないし運転手も確認出来なかったが、念には念を。そう思いながら、彼女は車に乗り署に向かって行った。
宮田は少し息を乱していた。
危うく人を轢くところだった。轢くことは依頼主はなんとか出来る範囲なのだろうか。
そんなことを考えながら、彼は研究所へと向かって行く。
まさか、家で手紙を取って来てからこんなことになるとは。
研究所に着いた時にはもう彼は落ち着いていた。
早く依頼主に連絡しないと、さっきも目撃されてしまったしまずい。
彼は研究所の一部屋に入り電話をかけ始めた。
「社長、電話です」峯田は社長室で仕事をしていた。そこへ、佐久田が入ってきてそう言った。
「誰からだ?」
「宮田博士からです」
峯田は、今まで手紙でのやり取りだったのでいきなりの電話という手段に少し戸惑った。
「わかった。ここに繋いでくれ」
佐久田は、ズボンのポケットから携帯を取り出し電話し始めた。下の受付の者に繋いでくれるよう頼んでいるのだ。
「繋げました」と佐久田が言った。
峯田は電話を取り「宮田博士ですか?」と尋ねた。
「はい。突然の電話、失礼しました。実は頼みがあり急遽、電話という手段を使わせていただきました」
「そうか、一体どうしたんだ?」
「まずは、今ニュースで報道されてる誘拐事件のことを知ってますでしょうか?」
「あぁ、知っている。新聞で読んだがな」
「そうでしたか。だとしたら、話は早い。その誘拐されてる子供は私が実験に使うために誘拐した子供なのです。そこで、調査の目がこちらに行かないようにしてもらいたいのです。私の見た目は分かっていないそうですが、車の色は知られているのでいずれここに辿り着くと思われます」
「わかった」峯田は即答した。
「儂にとっても、その実験は大事なことだしな。車も今日の夜に支給しよう。で、実験の調子はどうなんだ?」
宮田は、ホッとした様子で話した。
「ありがとうございます。実験は、現在子供でやってますが成功していると思われます。細胞の成長も止まっているので、不老状態も維持してます。しかし、念の為に次は成人でやりたいと思います。それで、成功したら貴方の複製を作ります」
「そうか。それを聞いて儂も安心した。その調子で頼む」
「えぇ、勿論です。それではこれで」
そして、電話は切れた。
峯田は、最初の確信はやはり外れてはいなかったと安心した。
裏切る様子も無い。この調子で行けば望みの達成も近いだろう。
そして彼は、警察を止めるために政府にいる関係者に電話をかけた。
彼は、佐久田にはもう大丈夫だと言った。それを聞いて佐久田は、部屋を去っていった。
峯田は電話が繋がると早速要件を話し始めた。相手は承諾したが、交換条件として自分も不老にして欲しいと言ってきた。
峯田は、そのぐらいならいいだろうと思い承諾を返した。
これで大丈夫だ。もうすぐ不老になれる。
彼は、再び確信した。