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バス停

作者: 高橋峻

 反省会は、いつも夕日のバス停だった。さびれた停留所にはベンチがあって、そこがぼくの特等席になっていた。家にいるときには何もしないけど、このベンチに座ったぼくはちょっとした「考える人」だ。

 今日一日を振り返って、なにがいけなかったのかを考えていた。失恋したときも、受験に落ちたときも。そういうブルーな気分のときに限って、夕日は「ばかばかしい」と笑い飛ばしてきた。いいよな、おまえは悩みなさそうだし。けれど、ぼくの反抗的な態度でさえ笑われるだけだった。言い返しているうちに虚しさだけが残って、ちょうどそのくらいにバスがやってくるのだ。

 今日もぼくは考えていた。遠くの空を見ても、雲がぽつんと浮かんでいるだけだった。はあ、と溜息がこぼれた。別に悩んでるわけじゃなかったのに、気分が落ち込んでくる。雲の上に立っている鳥がうらやましく見えた。みんなみんな遠いところにいた。ぼくだけ同じバス停だった。同じ道路を行ったりきたり。みんなが新しい道路に行く中で、ぼくは「考える人」になっていた。「最近会社に行きづらくてさあ」というぼくに、夕日は「ばかばかしい」と笑った。「違うバス停に行っていたら、雲の上にだって行けたかもしれない」というぼくに、夕日は「ばかばかしい」とまた笑った。「おまえはもともと雲の上にいるからだろ」といっても、夕日は「ばかばかしい」と笑うだけだった。つられて雲まで笑った。そうこうしているうちにバスがやってきた。

「明日から、転勤になるんだ」

「ばかばかしい」

 ぼくは笑って、バスに乗った。

変わった色を出す努力。

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