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四 事件の真相

違う部屋に通された後、再び僕はイスに座らされた。すべての感覚が戻った今でも、もやっとしたものをぬぐいきれない。この場所はどこだろうか。助けを呼ぼうにもここがどこだか分からなければ、どうしようもない。第六感ともいうべき場所が、この場所はとてつもなくいやなものだとおびえている。それにつられ他の五感もこの場所を嫌いだと叫んでいるようにさえ思う。


「この場所を説明するわ。」


 また、ありもしないドアから女性が現れた。先ほどの女性と同じ、いや、少し、違うか。


「さっきのは、私の姉。私は妹。双子だから、よく間違われるわ。」


 そんな説明をしながら、女性は機械口調で話し始めた。


「この世界は普通の世界じゃないわ。私たちにとっては普通だけれど、あなたたちにとってはっていうことね。簡単にいえば、あなたたちにとって私たちは宇宙人の一つだと考えてもらえばいいわ。少し違うけど、あなたたちとは違う存在っていう意味。そう捉えてもらうと分かりやすいわ。


そして、私たちはある目的のために動いている。その目的を教えることはできないけれど、あなたにはその役目の一部を負ってもらうっていうことよ。もちろん、強制はしないわ。だけど、このままあなたたちが元の世界に戻ったとして、無事に戻すことができるかどうかはまた、別問題だけれどね。


 あなたにやってほしいのは、一つ。あなたたちの世界にあるという、七つの秘宝を手に入れてきてほしいの。」


 ちょっと待った。僕は、初めてこの女性の話に口をはさんだ。いまだ状況が飲み込めないまま、いろいろと聞かされるがままに聞いてきたが、ようやく頭の中の整理が済んだ。済んだところで、この女性はとんでもないことを言い出した。僕が無事に元の世界に戻れる保証はできなくて、元の世界の秘宝を集めてほしい、こんなことを言っているように聞こえる。おそらくそれで間違いないのだろうが、これはいったいどういうことなのだろう、というわけだ。


「簡単なことよ。手順を守れば、無事に戻ることができる。そいう言うこと。」


 つまり、手順を踏まず戻ることがこの要求を飲まずに元の世界に帰るということか。なるほど、僕はこの選択肢の一つしかない選択肢を選ばされ、女性の説明を最後まで聞いた。


 女性の説明はこうだ。私たちは宇宙人か何かだけれど、あなたたちとは違う存在であり、何か目的のために動いている。しかしそれを達成するには何かが足りない。それが秘宝。その秘宝は僕たちの世界にあり、僕たちの世界へはある手段を用いなければ、無事には帰れない。その手段を用いるためには私たちの要求を飲みなさい。と、つまりはこういうことなのだ。むちゃくちゃだ。でも、僕は従うしかなかった。無事に帰りたかったし、ひそかにその秘宝を見てみたかったという好奇心すらあった。


「じゃあ、決まりね。頑張って探すのよ。」


 女性はそう言い残すと、僕を椅子に座らせたままどこかへ行ってしまった。また、そこになかったドアを通って。

 いつの間にかほどけていた僕の後ろ手の縄のおかげで自由の身となった。しかしこの部屋、入り口や出口の類が見つからない。どう動けばいいかわからない。僕ははたはた困ってしまった。


 女性の話を聞いていて、ふと一つの僕なりの答えを導いた。この世界とは全く関係ないと思われていたことが、僕の頭の中でうまいこと一つにつながったのである。最近見つかった変死体。僕を免職に導いた怪事件の真相とやらだ。犯人は、さっきの女性、含めてこの異質ともいえる組織の仕業ではないだろうか。死体のひとつひとつ、それはこの世界の者たちの要求を飲むことなく地球に帰還することを求めた者たち。そういうことではないだろうか。かくして、無事に戻れず、あのような変わり果てた姿になったのではないだろうか。僕の予想でしかないが、もし、警察がいまだ犯人を追っているのだとしたら、到底追いつける相手ではない。


 しかし、すべてが嘘だという可能性も否定はできない。僕は催眠ガスをかがされるように意識をふと失った。今度はやさしく意識を失った。


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