9話:同盟
「は…っ、ここは…?」
気が付くと…私は、見知らぬ部屋に居た。壁や床は木で出来ているようだ。外を見ると、部屋の高さは3階程度の様だ。外は明るい。夜は明けた様子だ。
「おう、フウカ君…だっけ?気が付いたかい。」
部屋の隅に居た大蜘蛛が話しかけて来る。会話可能という事は、上位の魔物のようだ。
「はい、私はフウカ…貴方は?」
「俺はビルド・スパイダーのダズだ。グラム様の部下だぜ。」
「あぁ、あのイビル・ホークの…。」
【ダズ Lv.189(189)】
彼もかなりLvが高い。
「ここは、俺達、『緑の勇士』の拠点だ。『緑の勇士』は、俺達のような、森に生きる高位の魔物が集まって、森の保全活動をしてるんだ。グラム様が最高責任者だ。」
「そうなんですね、お疲れ様です。」
「お疲れ様だって?それはこっちの台詞だぞ。『変異種』をアンタが倒してくれたんだろ?」
「変異種…あー、あの、カオススライムっていう…。」
「そうそう。アレは変異種の中でも特段厄介で、火は吹くわ、物理攻撃は効かないわ、放っておくと周りの雑魚を吸収して手が付けられなくなるわ…。スーのやつじゃ、相性が悪いしな。アンタが居なかったら、最低でも、俺達は優秀な仲間を一人失っていただろうな。ま、こんな所で話をしていても時間が勿体ないな。スーの所へ行こうぜ。」
そう言うと彼は、私の手を引き、部屋の外へ出た。よく観察すると、彼の8本の脚のうち4本は、人間の手のような構造になっている。
階段を下りながら彼は自慢げに話す。
「いい拠点だろう?ここの構造物は殆ど、俺が組み立てたんだ。」
「へぇ~、ビルド・スパイダーですもんね、建築がお得意なんですね。」
「その通り。グラム様みたいな鳥の魔物や、俺のような多足のもの、スーのように個体ですらない奴、色々居るから、ゆとりを持って設計しなきゃならなかったんだ。俺はその頃、緑の勇士に参加したばっかでな…おっと、もう1階か。そこの部屋にスーが居るはずだぜ。」
そう言うと、彼は部屋の扉をノックした。
「スー?あいつが起きたぜ…えーと、そうだ、フウカ君だ。」
「…今行く。」
5秒ほど後、扉がゆっくりと開いた。
「ああ、フウカ…君は、僕が思っていた以上の逸材だったね。立ち話もなんだ、部屋へ入ってくれ。」
「まさか、君が魔法を使うとは、ね…。」
「直前までは使えなかったのですが、いつの間にか、使えるようになっていました。」
「『大成長』だね。魔物を倒したから、急速に成長して、自分の能力に認識が追い付かなくなっていたんだろう。」
本当は、スキルの派生で使えるようになったのだが…そう言っても理解されないだろう。
「成程…です。」
話すうちに、ある事に気が付いた。スーの命の灯が以前より少し弱まっているように見えたのだ。
【スー Lv.164(197)】
Lvも微妙に下がっている。
「スーさん…もしかして、体調が悪いですか?」
「…よく分かったね?実はさっきの戦闘でちょっとね…どうせ死ぬと思っていたから、少々無茶を…。まぁ、そのうち治るんじゃないかな。確証はないけどね。」
「ふーん…」
【ダークヒール】…
「…」
時折ブレていた彼の灯は、元の安定性を取り戻した。回復が効くかは分からなかったが、一応効果はあったようだ。
「驚いたな。まさか他者の回復まで出来るとは。…君はどう見ても闇属性なのに。」
「はは…治ったなら良かったです。私にできることをしたまでですから。」
【スー Lv.195(197)】
若干の後遺症のようなものが残ってしまったようだが、殆ど元通りだ。よかった。
「本当は、君にはずっとここに居て欲しいくらいだが…君の目的は『帰る』ことだったね。全く、残念だよ。」
「す、すいません…でも、私には帰りを待ってくれる人が居るので…。」
「…もし、君が嫌でなかったら、これを持って行ってくれないか。」
そう言って彼が手渡してきたものは…水晶のような球体。
「これは僕の分身体なんだけど…関わりの深い人に端から渡しているんだ。分身体は僕本体と意思を共有している。つまり、どういうことかと言うと、これがを持っていれば互いに連絡を取り合う事が出来る。」
「成程、理解しました。また問題が起きたら、助けてくれって事ですね。」
「まぁ、そういう事だ。だが、その逆も然りだ。君が困っていたら、僕や、仲間たちが助けに行ける。まぁ、同盟関係のようなものだね。」
「いいですね。そういう関係、好きですよ。私で宜しければ、力になります。」
「ありがとう。いやはや、心強い味方を手に入れられて僕は嬉しいよ。それで…風は克服出来たのかい?」
「まだ試してないですが…今の私なら、大丈夫だと思っています。」
「そうか、それは良かった。はは、いざ別れが訪れると、ちょっと寂しいね。」
「いずれ、また来ますよ。場所もそんなに離れていませんし。」
「おじさんも喜ぶんじゃないかな。なんせ、君は森を救った英雄だからね。」
「え、いつの間にそんな話に?」
「僕はただ、事実をありのまま話しただけだよ。それがいつの間にか英雄譚に…。」
「…はは、は…。」
第九話です。
お友達が出来たフウカ、Lvも上がって一段階成長しました。




