6話:吸収
風の終着点は、山の中腹、森の中の滝だった。それほど遠くまでは飛ばされなかったのは幸いだった。これなら、半日もあれば山頂に戻れるだろう。と、ここまで考えて気付いた。この世界の1日は、私の感覚で言う何時間なのか?
…分からない事を考えても、仕方がない。そして、もう一つ問題がある。今のLv帯では、山頂に戻ろうとしてもまた風に吹き飛ばされてしまう事だ。もう少し、Lvを上げなければならない。
【フウカ Lv.34(999)】
さっきの風で、多くのエネルギーを吸収した自覚があるのだが、Lvが3しか上がっていない。恐らく、Lvが上がる毎に必要なエネルギー量が違うのだろう。
「何か、手っ取り早く、Lvを、上げる、方法は…」
その時、頭上で物音がした。木の葉が落ちてくる。音がした方向を見ると、大型の鳥のような何かが居た。こちらを凝視している。威嚇か?
「あの…どうかしましたか?」
一応話しかけてみる。対話が可能かもしれないとの僅かな希望を持って。
「見慣れぬ者が森に入ったとの報告を受け、見に来たのだ。」
「うわっ、喋った…!」
「何を驚いている。そちらから話し掛けて来たのではないか。」
「いや…まさか本当に、話せるとは…。」
「話せるぞ。我のような高位の魔物は大抵、対話が可能だ。それで、お前はここに何の用なのだ?」
「あ…いや、用は特に、無いのですが…帰れなくなってしまって…。」
「どうした、迷子か?」
「いえ…山頂まで帰りたいのですが、」
「その翼や角を見れば、お前が帰る場所が魔王のねぐらである山頂な事くらいは分かる。」
「あ、いや、これは、私の元の姿では、無くて。」
私は人型形態を解除し、霧のような姿に戻って見せた。
「何と。姿形を自由に変えられるのか。我の部下にも、姿形を変えられるスライムが居るが…お前はそれとは少々様相が異なるな。液体より、気体に近い。」
人型形態でないと発声が出来ないので、私は人型に戻る。
「と、私は、このような身体を、していて、すぐ、風に飛ばされてしまうのです。さっきも突風に吹かれ、ここに墜落して…。もう少し、強くなれば、風に逆らって、動くことも出来ると、思うのですが…。」
「強くなる…か。一番手っ取り早い方法は、生物を殺す事だな。幸い、ここには大量の下級の魔物が居る。増えすぎて困っていた所だ。ついでに駆除していってくれないか?」
レベリング、という言葉を聞いたことがあるが、この世界でもそれに近しい事が出来るようだ。
「分かりました。どんな魔物を、駆除すればいいでしょうか?」
「スライム、ゴブリン、オーク、トレントなんかだな。まぁ、見ればわかるさ。ほら、あれなんか、そうだ。」
そこには、熊より少し大きいくらいの体躯の、豚と牛の中間のような生物が立っていた。こちらに気付くと、目を見開いて突進してくる。
【一閃】!
「グォォ!」
かなり効いたようだ。灯で相手の命が大幅に削られたのが分かる。しかし、まだ諦めてはいない様子だ。【一閃】は連発出来ない。他の攻撃をしなければ…他の攻撃?
「あ、あれ…?」
隙を見て、ステータスパネルを開く。スキルを確認する。端から端までざっと確認する。【殴打】…これでは決定打にならない。そして、他の攻撃技は一つしかない。これ、使って大丈夫か…?
「ガァァ!」
相手に攻撃の隙を与えてしまった。避け切れず、正面から受ける。が、勿論、流動体なので受け流す。崩れた身体を再度構成しなおす。その間に2発目が来る。今度は右に避ける。それを狙いすましたかのような、空中回転からの蹴り。
「何をしている、攻撃しろ!」
仕方がない、一か八か、この攻撃を…!
【疾風撃】!!
身体が吹き飛びそうだ。やはり、前世と違い、この身体では【疾風撃】を使うと自分にもダメージが入ってしまう。しかし、空中で無防備な相手に、その重い一撃をぶつけることに成功した。
「グファァ…!」
相手は空中にいたため斜め上に吹き飛び、近くの大木に衝突。命の灯…HPと言うべきか?HPが尽きたようだ。
「すまない、お前の実力を見誤っていたようだ。下位のオークくらいなら問題ないかと…。大丈夫か?」
「ハハハ…大丈夫、です。私、あまり攻撃向きでは、ないようで…最終的に、自分の攻撃の反動で、大ダメージを受ける始末…全然、てんで駄目でしたね…」
【ダークヒール】…は、他人にしか使えないようなので、【癒しの闇】で自己回復した。癒しの闇は逆に他人には使えないようだ。そして、忘れないうちにダークヒールのスキルLvを最大にしておく。
「なんだ、自己再生まで兼ね備えているのか。心配する必要も無かったかもしれんな。」
「いやー、そもそも、僕は、結構、筋がいいと思ったけど?攻撃手段が足りてないだけなんじゃあないの?」
いつの間にか、木の上から降りてきた少年がそう言った。
「誰ですか?」
「あぁ、こいつは私の部下、マナ・スライムのスーだ。さっき話した面白変形スライムはこいつのことだ。」
「面白変形スライムって…。そうそう、おじさんが帰ってこないから、心配で見に来たんだよ。無事で何より。」
「そういえば、我も自己紹介をしていなかったな。我はイビル・ホークのグラムだ。」
「私は、フウカといいます。以後、お見知りおきを…。」
二人のステータスを確認する。
【グラム Lv.225(300)】
【スー Lv.197(197)】
二人とも、研究者のリュートやギルよりも遥かにLvが高い。どのくらいがLvの基準かは分からないが、恐らく、リュート(Lv.73)が少し強い一般人程度と思われる。
【フウカ Lv.38(1000)】
今の戦闘で、私のLvが4上昇した…と共に、素のLvも1上昇している。前世で鹿や熊を狩っていたのと同様に、こちらでも恐らく生物を狩るとLvが上昇するようだ。確か、『人間の最大Lvは999』という話を聞いたような気がする。そう、人間は、だ。この身体は人間ではないので、どこまで強くなれるかは未知数だ。そう考えると、ワクワクしてきた。
「そういえば、君も流動体の生物だろ?もしかしたら、【吸収】が使えるかも知れない。」
「吸収…?」
【SKILL▼】【吸収 Lv.1/1】
さっきざっと見た時に、これがあったのは覚えている。攻撃に関係無いようだったので、スルーしたが。
「倒した魔物とその力を、文字通り吸収出来るんだよ、僕達スライムは。最も、普通のスライムは下位中の下位、最下位といってもいい存在だから、魔物を倒せないで、この能力も活かせない事が殆どなんだけどね。」
「吸収…。やってみます。」
【吸収】!
私の身体の闇の一部がさっきの魔物を包み込み、…消失させた。
【フウカ Lv.45(1000)】
Lvが7も上昇した。倒した時のLv上昇と、吸収した時のLv上昇、2回のLvアップチャンスがあるようだ。これは有難い情報だ。
「出来ました!」
「おー、すごい。吸収速度だけを見たら僕達、スライムよりも早い。」
「お前達はいいなぁ、我は吸収など使えないのだぞ…」
「おじさんはそんな事しなくても十分強いじゃないか。」
Lvが40を超えたが…まだ風に対する抵抗が増したようには思えない。
「下級の魔物、もっと狩っていいですか?」
「あぁ、いいぞ。我らだけでは処理が追い付かなくなってきていてな。増えすぎると森の外に溢れ出し、人間や魔族に被害が出る。だから好きなだけ狩って行ってくれ。」
「分かりました。」
「それじゃ、僕らは拠点に戻るとするよ。頑張ってね~。」
第六話です。
遊びを詰め込んでいるのが「転生魔王と七色の光」ですが、この作品は浪漫と性癖を詰め込んでいます。
不定形人工生命体、よくないっすか?




