5話:散策
「地上を見てみるか?エネルギーの吸収にも繋がるだろうからな。」
「…でる。」
【フウカ Lv.12(999)】
さっきカプセル外に飛び出した時、魔王2人の溢れたエネルギーを吸収したのかもしれない。Lvが倍増している。活気溢れる場所に行けば、もっと成長が見込めるかもしれない。そのうち、以前のように熊を…いや、それ以前にこの世界に熊がいるのか?
「よし、お前もきっと、あそこなら気に入ってくれるはずだ。」
そう言って、私のカプセルを抱え、階段を上っていくダーク。そして、最上段まで上り、扉を開けた。
「おおっ…!」
「どうだ、良い眺めだろう?」
そこは山の頂上だった。闇魔王の拠点は山の中に造られていたらしい。そして、そこから見えたのは、いくつもの村らしき構造物と、広大な平原。日本の山からとはまた違った絶景に、思わず息を飲んだ(呼吸はしていないが)。
「ここからの景色を見たら、人間を滅ぼすなんて、二度と考えられなくなったさ…他の魔王は、人間のよい部分を知らないから、滅ぼそうとしているんだろうな。あいつらにとって、人間は自分たちに仇なす敵でしかないのだろう…。」
ダークの声が少し震えている。
「ダーク様…んっ?」
急に発声がしやすくなった。何か変化が無いか確認する。
【フウカ Lv.25(999)】
すぐに分かる違いとしては、Lvが13上がって20を超えた事だろうか。仮説としては、Lvが10上がる毎に大きめの変化が起こる、という感じだろうか。ダークの殴打を【一閃】で防いだ時も、自分の中で何かが変化したような気がしていた。そもそも、Lv1桁の時は、外に出ただけで霧散しかけていた。そして、さっきから、身体が軽い(元から重量は無いようなものだが、動きが軽い)気がする。
「どうした?」
「あー、あー、今までより、より良い、コミュニケーションが、とれるような、気がします。」
「『大成長』か?人間も魔族も、成長する間に時々、大きな変化がある。何がトリガーとなっているかは解明されていなけどな。」
「原因不明?そうなのですね。私は、てっきり、Lvが関係している、の、かと。」
「Lv…何だ、それは?」
「え…?」
Lvを知らない…?いや、元の世界にもLvという概念は無かった。こちらの世界でも知られていないのは当然のことなのかもしれない。私だけが知っていていいのだろうか?
「いや、なんでもないです。それより、訊きたい事が…。」
「何だ?」
「さっき、光の魔王が、言っていた、3日後…何をするの、ですか?」
「…土の魔王を、倒しに行くんだ。俺とあいつで。」
「そ、そうなのですか…?」
魔族と人間との間で戦っているだけかと思っていたが、魔族同士でも戦いが起きるらしい。
「土の魔王・ランドは、今、人間に対して侵略戦争を仕掛けている。俺達、平和主義組は黙って見ているわけにはいかん。それに、奴を討ち倒せば、俺達に対する人間の見方も少しは変わるかもしれない。まぁ、なんにしろ、負けるわけにはいかんな。だが…もし俺達が負けた時には、お前に後を託す事になるだろう。」
「それは、私には、荷が重すぎます。」
「ああ、そうだろうな。俺達も負ける気は無い。万が一の話だ。」
そうは言っても…相手も魔王だ。一筋縄でいくとは思えない。
「私も、行きます。」
「いや、駄目だ。それでは俺が死んだら、俺の部下が路頭に迷ってしまう。万一だ、万一の話だが…。」
万一、と濁してはいるが、ダーク本人も死を覚悟しているのだろう。さっきから声が震えっぱなしだ。
「…分かりました。」
【フウカ Lv.31(999)】
Lvが30を超えた。今なら、行ける気がする。私はカプセルの蓋を内側から開け、外へ顔を出した。
「お、おい…」
「大丈夫、です。ふふふ、こうして、風に当たって、みたかったのです。」
微小な粒子が吹き飛んでいっている気がするが、大した問題ではない。風属性を克服、とは到底いかないが、そよ風程度なら吹かれても大丈夫な所まで成長した。
と、思っていたのだが。(人型の部分の)全身を外に出したところ、身体全体ごと宙に浮き、コントロールが効かなくなってしまった。そんな馬鹿な。
「ふ、フウカ!」
「ダーク様…っ!」
ダークが手を伸ばしたが、時すでに遅し。私の身体は少し強まった風に飛ばされ、宙を舞う。上昇気流に乗って、私は舞い上がる。もう、どうしようもない。
「か、必ず戻ります、から、ダーク様は、お気に、なさらず…!」
「フウカぁっ!」
私は舞い、舞い、舞い…
第五話です。
風に乗ってどこへ行くのやら。ダーク様とはしばしお別れです。




