4話:闇と光
「ちょっと待っていてくれ、『奴』に連絡をしたい。」
広間と思しき部屋で、ダークは、そう言いながら、薄い箱のようなものを懐から取り出した。もしかして、通信機のようなものだろうか。
「もしもし、ライト?」
『何だ。貴様から連絡を寄越すとは珍しいな。まさか、また何かやらかしたんじゃないだろうな…?』
「やらかしたとは失敬な。俺の所で研究していた『魔法生物 フウカ』は覚えているだろう?」
『何?まさか完成したとか言うんじゃなかろうな?』
「お前はなんでもお見通しだな。そうだよ、完成したんだよ。」
『この阿呆!クソ、今からそっちへ行く!首を洗って待っていろ!』
ブツッ…
それから、訪問者が現れるのにかかった時間は15秒程。
「ダーク!貴様、そんなモノを作りおって…おのれ!」
悪魔のような見た目のダークとは逆に、天使のような見た目のライトが現れた。次の瞬間、
「ぐぉっ…!!」
ドゴーン!!
ダークの身体が宙を舞い、壁に激突した。ここは地下のようなので、壁は貫通しなかったが、少し凹んだ。
ダークの命の灯が少し揺らぐ。
「やはり貴様と組むのは間違いだったか。そうと認めざるを得ないな。ひとくくりに『人間を滅ぼさないで平和を創る』といっても、私と貴様では方向性が違う。はっ、いっそのことここで殺してしまおうか…っ!」
ライトが追撃する。ダークは再び宙を舞う。命の灯が少し萎む。
咄嗟に、私はカプセルの小さな穴に粒子を潜らせ、外へ出る。行け。【ダークヒール】!
緑色の光と漆黒の闇がダークに向かって飛ぶ。ライトは、驚いた表情を見せた。
「何…!?」
ダークの命の灯…HPが少し回復した気がした。そういえば、スキルLvが1のままであった。そのせいであまり回復量が無かったのかもしれない。
「今のは…回復魔法…?闇には存在し得ない筈では…」
たじろくライトに、私はこう言い放つ。
「もう、やめて。ダークさま、キズつける、の。」
「…フハハ、こやつはこの程度で倒れる程ヤワではないわ。しかし、まさか、回復魔法を使うとはな…。貴様に免じて、これ以上の追及はしないでおこう。」
「追及はしない、だと?俺の顔を2発も殴っておいてか?一発お返しだ!」
いつの間にか背後で起き上がっていたダークによる渾身の殴打。しかし、それがライトの顔に届くことは叶わなかった。
私の【一閃】により、ダークの腕は横に逸れ、空を切った。
「フウカ!?」
「ダークさま、ストップ。これいじょうの、あらそい、ムダ。」
「だが…1発殴るくらい…」
「ダメ。それより、このひと、ダレ?」
「こいつか?こいつは、光の魔王・ライトだ。俺は闇の魔王なんだが、この世界には魔族の王である魔王が6人いる。その中でも、火、水、風、土の4人の魔王は人間を滅ぼして魔族の世界を作ると躍起になっている。俺達2人は、人間を滅ぼさず、和解する道を目指したい。その点で、今は俺とこいつは協力関係にあるんだ。」
「勘違いするな。他の愚かな魔王どもに比べたら貴様と組む方がマシなだけだ。私の目指すのは『対等』、お前の目指すのは『支配』だ。どこかで必ず綻びが生じる。そうなった時、私は容赦しないからな。」
その話を聞きながら、ライトのステータスを覗き見る。
【ライト Lv.666(666)】
ダークと同じLvだ。二人の実力は対等と見て差し支えないだろう。
「力が強い者による統治が必要なのは当然だろう。野放しにされた者がどれだけ恐ろしいかは、人間だけでなく魔族でも実例があるのだから、理解できるだろう!」
「力が強い者による支配は下に押しつぶされる者が必ず出て来る。だからこそ、皆が協力し、共に暮らせる世界を作るのが私の目的なのだ!」
「はい、わかった。そのへんで、ストップ。ふたりとも、へいわ、めざしてる。ほかの魔王、人間、ほろぼそうと、してる。ほかの魔王、なんとかする、それまで、ふたりは、なかよくして。」
私も出来れば人間を滅ぼしたくはない。平和の道があるならそれを選びたい。だからこそ、平和を目指すこの2人を仲たがいさせるのは得策ではないと考えた。
「まぁ確かに…こやつもクソだが、他の奴らよりはマシだ。」
「それは俺も同意見だな。ま、こんな所で争ってる場合じゃなかったってことだな。」
「うん、うん…」
「フッ、それにしても、今回は久々にいいものが見れた。あの『破壊生物 リクウ』よりは数百倍マシな出来だな。」
「リクウだって俺の自信作なんだぞ?それを貶すとは…お前…」
「あの殺意の塊が?自信作?よくもそんな事が言えたな。破壊は平和に最も必要のない行為だ。それを生業とする生物をわざわざ創って、何をしたいのか。」
「お前になんぞ理解して欲しくも無い!」
「まーまー、そのへんで…。」
「ハッ、私はもう帰る。覚えているな?3日後…」
「分かっている。」
「そうか。では、さらばだ。」
第四話です。
一旦ここまで投稿しておきます。2026/02/11




