3話:魔王の子
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私は、何だ?
身体が…これを身体と呼んでいいか分からないが、何か霧のようなもので構成されている。視覚や聴覚は無いようだ…
いや?もしかしたら、目や耳を造る事が出来るかも知れない。人間の頃の身体に比べて無限の自由度がある気がする。
そうして、身体を変形させ、藻掻いていたら、自分が何か狭い空間に居る事が分かった。出口は無さそうだ。取り敢えず、周囲の状況を把握したい…
どれだけの時間が経っただろうか。遂に、聴覚を手に入れることに成功した。何やら、声が聞こえる。
「d”z”:yfd”8”ya9”4w”r…」
聞き取れない。しかし、音の感じからして、壁の外側から聞こえてきているようだと分かった。
ここで、ステータスパネルの事を思い出した。視覚が無くても使えるのか?『ステータス』…
【未定 Lv.6(999)】
見れた。正確には、思考の中に出てきた。そして、前回はよく見ていなかった部分にも気づいた。
【使用可能SP:9990】
SPは、どうやらスキルを強化する事に使えるようだ。Lvを強制的に1上げるのに1ポイント、派生させる時に3ポイント必要らしい。いつの間にか、ステータスパネルの使い方が思考の中に入っていた。
【SKILL▼】【変形 Lv.3/100 New!】
【日本語 Lv.92/100 (派生可能)】
まず、【変形】をLv.50まで上昇させた。今の身体だと最重要のスキルだろう。最大まで上げずに、少し様子見をした。
そして、【日本語】を派生させ、【万能言語】を獲得した。このLvを上げれば、恐らくは外からの声も聴きとれるようになるだろう。Lvは日本語と同じ92まで上げた。
【使用可能SP:9842】
「完成が楽しみだな…魔王様も喜んでくれるだろうか?」
「そうだな、これで魔王様の念願も…」
もしかして、私は人工生物なのか?そんな事を考えながら、変形を再開する。
程なくして、視覚を得た。予想はしていたが、私は半透明な筒状の容器に入れられていた。
変形を続ける。少し楽しくなって来た。動きやすいような身体を形成しようと思ったが…今のままが一番動きやすい。
ただ、このまま霧として浮遊しているのも少し癪に障ったので、外側に見える人物を参考に個体の身体を形成していった。
完成したら、霧の一部を飛ばして、目を作り、俯瞰してみる。少々子供のような身体つきになってしまったが、髪の間から頭を出す小さな角、背中に生えた翼、外に見える人物のものとそっくりに形成出来た。あとは、もう少し髪を伸ばしてみても面白いか…
「あっ!先輩、見てください!これ!」
「何だ、急に…あっ!?」
研究者と見られる者のうち二人が、こちらを見ている。形成した身体で微笑みを向けてみる。
「今、こっちを見て笑ったぞ!しかも、あの姿…お前を参考にしているんじゃないか?翼に角に…」
「えっ!ほ、本当だ、!!ちょっと、俺、魔王様の所へ行ってきます!」
折角、身体が出来たのだから、意思の疎通が出来るようにしたい。言語能力がはある、足りないのは発声器官。【変形】を駆使して…
「ア…ア…」
「え?」
「アー。こ、ん、に、ち、は。」
「意思の疎通が出来るのか!?」
「そ、う、だよ。アー、アーー…」
ちょっとまだ声が出しづらい。
「魔王様呼んできました!」
「わわわ…ちょ、魔王様、…」
「遂に完成したのか?魔法生物『フウカ』が…?」
フウカ?元の名と同じだ。偶然か必然かと言われたら、必然の可能性が高そうだ。
「完成…あれを見てください!」
「ふむ、どれだ…… …!!」
「アー、…わた、し、ふう、か?」
「そうだ!お前がフウカだ。ハハハ、凄い擬態能力だな、翼といい、角といい、リュート、お前にそっくりじゃないか。」
「そ、そうですね…!」
そういえば、他人のステータスも(Lvのみなら)確認できるようだ。早速周りの三人を確認する。
【リュート Lv.73(78)】半分、龍のような見た目の、若い方の研究者。
【ギル Lv.104(104)】鬼のような見た目の、先輩と呼ばれていた研究者。
【ダーク Lv.666(666)】魔王。
「こいつは、もう解放してもいいのか?」
「えーと…まだ危険だと思います。風が大きな弱点なので、少し吹いただけで致命的な可能性があります。」
私は風が弱点の様だ。確かに、大部分が霧…塵?細かい粒子で出来ているこの身体は少しの風で吹き飛んでしまいそうだ。
「そうか…それなら、このカプセルごと運ぶのは駄目か?」
「え…確かに、風が直接当たらなければ大丈夫ですが。」
「このまま持って行くのは障害が多すぎますし、別の容器に移した方が。」
「そうか、なら新しい容器を持ってきてくれ。」
この間に他のスキルを見ておく。【《レア》癒しの闇 Lv.1/100】…神から貰ったスキルはこれだと思われる。早速Lv.100まで上げて、派生も可能になったので派生させた。【《レア》ダークヒール Lv.1/100】…さっきから名称が不穏だ。
「こんなのでどうでしょうか?」
リュートが持ってきたカプセルは、上面に蓋があり、蓋に小さな穴が幾つか空いている。
「おお、それならフウカも余裕をもって入れるな。」
「じゃあ、解放して大丈夫ですね?」
そう言ったギルが、スイッチを押す。すると、容器の蓋が開く。初めての外気。気圧の差で、身体が霧散しかける。何とか踏みとどまったが、思っていたよりだいぶ風に弱い。
慌ててカプセルの中に飛び込む。
「おっと、大丈夫か?」
「ウ…こわ、かった…。」
「そうか、すまなかった。」
「うん……。」
「魔王様、それで、フウカをどうするのです?」
「私がこの手で育て上げる。」
「そだ…て、る…?」
「そうだ。お前には、俺の身に何かあっても、ここの皆が路頭に迷わないように、統率出来るだけの力をつけてもらいたいからな。」
「わたし…に、できる、の?」
「出来るさ。お前には、漂うエネルギーを吸収して自己強化する能力がある。今は風に吹かれて吹き飛ぶほど貧弱でも、いつかは、魔王である俺の跡を継げる程の大きな力を持てるだろう。今日から、俺がお前の親だ。よろしく頼む。」
予想だにしていない境遇に生まれてしまったと痛感する。まさか、魔王の子とは。だが、魔王の見立ては正しいと言えるかもしれない。何せ、完全体になれば、私のLvは、最低でも魔王をも大きく超えるLv.999だから。
第三話です。
タイトルに「風の子」とありますが、風は致命的な弱点となっています。




