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2話:いざない

「ようこそ、世界の狭間へ…。」

私を待ち受けていたのは、形容しがたい…強いて言えば輪郭が直線的な化け物だった。意思の疎通は出来るようだ。

「…驚かないのですか?急にこちらへ連れてこられた事、そして私のこの姿を見ても…。」

「驚いてはいる…だが、敵意は無いのだろう?」

「無いですよ。」

「なら、あたふたとする理由も無い。」

「流石、限界まで永く生きているだけのことはありますね…。」

「所で、海野くん…」

彼の方を見る。すると、彼の輪郭が揺らぎ、小さな人形のような姿となった。こちらも直線的な見た目だ。

「…騙していてすいません。僕は、カイノカツミ…アナグラムで、神の使い、です。伊藤さんを『監視』するため、神から派遣されていました。」

「私を監視?何の為に?」

「力を持った者は、世界のバランスを崩壊させない為に、制御が必要なのです。」

「はぁ、しかし、私はただの人間だが…」

「僕達でもよく分からない『命の灯』が視えると言っておいてですか?」

「そうですね、それに貴方のこの…あっ。そちらの世界にはコレが無いんでしたね。」

そう言うと、神?は私の身体に光る玉のような物を押し込んだ。身体に浸透していくのが分かる。もう何も驚かない。

「ちょっと、『ステータス』…いや、『ステ』でもいいです。念じてみてください。」

言われた通りに念じる。『ステータス』…

すると、目の前に青緑色の薄い、半透明の板のような何かが現れる。

伊藤封禍(いとうふうか) Lv.299(999)】

自分の全身を投影したと思われるものと共に映し出された、自分の名前と謎の数値。そして…

【SKILL▼】【《ユニーク》生命力可視 Lv.1/1】

【《オリジン》一閃 Lv.100/100】

【《オリジン》疾風撃 Lv.100/100】

何か、技らしきものが列挙されていた。【一閃】や【疾風撃】は心当たりがある。山奥でよく獣を狩っていた時に、そんなイメージの動きをよく使っていた為だ。一閃は高速で移動しながら相手の急所を正確に突く技、疾風撃は敵に素早く接近し、その速度から殴打を繰り出す技だ。他にも、【屍骸解体】【建築】【調理】とそれっぽいものから、【日本語】というのもあった。そして【ステータスパネル】もあった。

「こちらからはLvしか見えないですが、それだけでも貴方の力が凄まじい事がよく分かります。衰えて7割減少しているとはいえ、素のLvは999…人間が取り得る最大の値です。Lv.300を超えた時点で、超人の域なのですが…。」

「それで、命の灯で見えているっていう光は、恐らく『HP』、所謂、生命力と呼ばれるものですね。様々な条件で変動し、0になると死に至るという。それを確認出来る者は…殆ど、いや、ほぼ全く居ないのですが。」

「この《ユニーク》というものか。」

「多分それですね。世界には稀に『ユニーカー』と呼ばれる、生まれながらにユニークスキルを持つ者が生まれます。伊藤さんも恐らくその一人でしょう。そんな貴重な人材、しかも、伝説級のLv…みすみす死なすわけには行きません、という結論に至ったのです、私達は。」

「とはいえ、その肉体は滅ぶ寸前…貴方達の世界に戻れば、数日で崩壊してしまうでしょう。というわけで、貴方の魂を他の世界へ転送することに決めました。異世界でその力を活かし、大きな影響を与えてもらいます。このままで居ても死ぬのを待つだけなのですから、いいですよね?」

「いや、私は…」

このままゆっくりと死を待つつもりなのだが…と、そう言おうとした。だが、誰かに期待されるなどという経験は今まで殆どしてこなかった。期待されているのに、それに応えない…それはどうなのか?…

「…分かった。いいだろう。」

「ありがとうございます。では、転送先ですが…うーん…」

「ちょっと、決めてなかったんですか!?問題が起きている世界なんて山ほどあるじゃないですか!それを管理するのが貴方の仕事のはずです!」

「あはは…そうですね。まぁ、見当は付けていたんですよ。第8世界。魔族と人間達との間に、緊張が走っている状態の世界です。ここに行ってもらいましょう。貴方には、この世界の戦いを終結させてもらいたい。」

「出来るかは未知数だが、やってみようじゃないか。」

「方法は何でも構いません。魔族側を滅ぼしても、人間側を滅ぼしても、問題はありません。その後はのんびり暮らして貰っても構いません。」

「出来れば平和的に解決したい所だがな…」

「それと。スキル、そして元となる魂のLvは引き継ぎです。最後に。何か一つだけ、貴方にスキルを付与しましょう。私の出来る範囲であれば、ですが。」

「重要な事を、最後に言わないでくれ…。少し考える。」

考える…考えるうちに、昔の経験が蘇ってきた。

100年以上前に…後輩の一人が事故に遭い…病院に駆け付けた時。その命の灯が弱り、消えゆくのを目の当たりにした時…。その時のことを思い出した。私が山に籠るようになった間接的な要因だ。

それを思い出した時、願う事は決まった。

「決めた。回復の技をくれ。」

「回復、ですか。いいと思いますよ。私が授けられるのは、ちょっとした癒やしのようなものしかありませんが…スキルのLvを上げたり、変化させれば…実用的な回復スキルとなる事でしょう。」

「回復スキル…渋いところを突きますねぇ。伊藤さんらしいと言えばそうですが。」

「それでは。肉体と魂を分離し、転送します。向こうにも、私の使いを何人か置いてあるはずです。彼らが貴方と接触を試みるでしょう。さぁ、よろしく、頼みましたよ。」

肉体から自分が離れていくのを感じる。さらば、150年、ありがとう。

第二話です。

本作主人公は、転生前からチートキャラのパターンです。

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