第6章 文化祭の狐騒動 ~みんなの笑顔を守る~
文化祭当日。校庭は屋台の匂いと笑い声で溢れていた。さきのクラスは「稲荷神社カフェ」をテーマに、朱の鳥居を模した入口と狐耳アクセサリーを配るブースを出していた。さきは赤いワンピースをアレンジした簡易巫女服で、接客担当。
「いらっしゃいませ~。お稲荷さん、いかがですか?」
隣で、あかりが狐耳カチューシャを付けて元気に呼び込みをしている。
「さきちゃん、似合ってる! 銀髪に赤って、めっちゃ本物の巫女さんみたい!」
さきは照れくさそうに袖を引いた。
「これ、コンに『巫女服着ろ』って強制されたんだよね……」
肩のコン(小型狐姿で、狐耳カチューシャに紛れてる)は、耳をぴくぴくさせて囁いた。
「ふん。似合っているぞ。俺のセンスだ」
「うるさい。目立たないようにしてって言ったでしょ!」
文化祭は順調だった。客足も多く、クラスメイトみんなが笑顔。さきも、最初は緊張していたけど、少しずつ楽しめてきた。――でも、午後になると異変が起きた。屋台の奥で、黒い霧が薄く立ち込め始めた。影喰いの残滓か、それとも新しい厄か。客の何人かが
「なんか寒い……」と顔を曇らせる。コンが即座に反応した。
「また来た。今回は複数。文化祭の『楽しさ』に引き寄せられたらしい」さきは小声で聞いた。
「どうする? ここでバトルとか、目立つよ……」
コンは尻尾を振って提案した。
「俺が小型のままで、影を一つずつ喰らう。お前は客を誘導して、気を散らせ」
さきは頷いた。
「わかった。みんなの文化祭、壊させない」
さきは明るく声を張り上げた。
「みんな~! 次はフォトタイム! 狐耳付けて記念撮影しよー!」
クラスメイトたちがわっと集まる。あかりも「いいね!」とノリノリ。その隙に、コンが影のように動き始めた。小さな白い狐が、客の足元をすり抜け、黒い霧に噛みつく。赤い瞳が光り、影が次々と消えていく。さきは客を笑わせながら、左手首の紋章を握った。
少しの力が流れ、コンをサポートする。赤い光の糸が、目に見えないように影を絡め取る。――数分後、霧は完全に消えた。客たちは何も気づかず、笑顔で写真を撮り続けている。あかりがさきに駆け寄った。
「さきちゃん、なんか今日超パワフル! みんな楽しそうで、ありがとうね」さきは少し疲れた笑顔で答えた。
「ううん、私こそ……みんなのおかげ」コンが肩に戻ってきて、満足げに言った。
「よくやった。人間の『楽しさ』を、守れたな」
さきはコンを優しく撫でた。
「これが、私の守り方かも。
バトルだけじゃなくて、笑顔を守るのも」コンは赤い目を細めて、静かに頷いた。
「ふん……相棒らしい答えだ」
夕方の文化祭終了後、片付けを手伝うさき。クラスメイトたちが
「また来年も一緒にやろう!」と声をかけ合う。さきは胸が温かくなった。
「うん……また、みんなで」肩のコンが、そっと耳元で囁いた。
「俺も、いるぞ」
さきは小さく笑った。
「もちろん。ずっと、一緒だよ」
朱色の夕陽が、校庭を優しく染めた。
狐の影が、みんなの笑顔に溶け込むように揺れた。




