家庭科室ロケット花火ヌンチャククッキー
朝の8時頃、テレビの撮影チームが忙しく撮影の準備をしていた。
「いつも大変ですよね〜先輩!朝早くから起きて街に繰り出して人探してカメラ構えて!」
「仕方ねぇだろ!この【今日のべっぴんさん】はウチの局の朝番(朝の情報番組)で1番人気あるコーナーなんだからよ!」
「現場の身にもなってほしいッスよね。毎朝美人探してインタビューして…てか美人なんてそうそういないじゃないスか。」
「まあ…だから【別嬪】っつーんだよ。」
そんな会話をしながら、そそくさとカメラを取り出して機材の準備をしていたその時、彼らの横を1人の女子高生が横切った。
フワッ
「先輩!あの子!あの子行きましょう!」
「あのレベルは中々いないぞ!よし!カメラ構えろ!おーい!すみません!君〜!」
声をかけられた少女が振り向く。
「ほい?」
「君凄く綺麗だねぇ!ちょっとお話聞いても良いかな?」
「ごめん遅刻してるから!」
「そこをなんとか…あ!」
カンッ!
その時、ロケ陣の持っていた撮影機材に少女の手が当たってしまった。
そこそこ大きな激突音が響く……が、その音は少女の腕と撮影機材がぶつかって鳴った音ではなく─────
「あ、ごめん落ちたわ手。」
「………………きみ…!」
「そういうことだから。じゃあね〜。」
転げ落ちた義手をもう片方の手で拾って付け直すと、取材陣に手を振って駆け出した少女。その姿を後ろから見ていたロケ陣。
「………大変っすね…なんか…。」
「ああ………けどまあ……たくましいよ……。」
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「とーこー………ゲェ…。」
登校早々、校門の前に立っている男を視界に捉えて嫌な顔をする少女。視線の先、腕を組んで立っていたのは─────
「2年生2組の足高掴美!遅刻だぞ!何時だと思ってる!」
「2年2組担任の池水瑠唯!お昼だぞ!何時だと思ってる!」
「うるせぇ馬鹿たれ。」
「え…………馬鹿たれ?(クルッ)」
「いやお前お前お前お前お前お前お前お前お前………」
「うん私私私私私私私私私私私私私………。」
「殴りてぇ〜コイツ!」
「速攻クビですよアナタ。」
「いや分かってるよ。」
「ちょ…じゃあもう教室…行っていい?」
「あ〜…じゃあとりあえず…教室…今授業中だから静かに行けよ…。」
「ほーい………あ、新卒ぅ!」
「先生って言え!」
「頑張れヨッ」
「あとで音楽室に来いよ……!」
「いや~ん♡何する気?/////」
「説教に決まってんだろ。」
※池水先生は音楽担当です。
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キーンコーンカーンコーン……
「4限終わったじゃん。」
午前中の授業が終わったチャイムが鳴り響く。12時過ぎだ。テレビの人たちに話しかけらた後、ゲーム屋や本屋で暇をつぶしていた。結果普通に遅刻した。ちなみに常習犯である。はーい。
すると程なくして各教室から生徒がゾロゾロと出てくる。うちの学校は共学だが、5年前までは女子校だった。だから割合としては女子のほうが多い。地球の海と陸くらいの割合だ。
「姉さんおそよ!」
「んぉ、デカ子おそよ〜。」
「もうお昼だけど」
「ウザw」
コイツはデカ子。嘘、ホントの名前は大野路広子。身長180cmのデカ女。顔は綺麗、グラマラス。
「エチエチ。」
「やめとくれよ姉さん/////」
「ちなみにお昼ごはんのシーンはカットします。今んとこホント…ね、作品的な撮れ高が全然こう…ね、わかるでしょ?感のいいアナタなんだから。」
「ぜんっぜんわかんない。」
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「はい皆さん!今日の5限の家庭科は調理実習です!班に分かれてクッキーを作ってもらいます。早速取り掛かってもらいますが何か質問がある方…はい、足高さん!」
「これって作ったらどうするンスかぁ?」
「自分たちで食べてもいいし誰かにあげてもいいわよ。」
「はーい……誰かに…ね。へへへ…w」
というわけで今日はクッキーを作る。作り散らかしてやんよ。
「よーし、作るぞい。デカ子、まず何したらいいの?」
「姉さん生地作んなきゃ。」
「生地ね…じゃあボウル2つに分けよう。」
「2つ……はい、分けたけど。」
「うんありがとう…じゃあ片方には。」
「片方には?」
「グチュグチュグチュグチュ………ぺっへぇ!」
「きったねぇ!」
「もっといっぱいがいいな……定期的に入れよ。」
「姉さんきったねぇ!なんで!?」
「いやこれはちょっと…ねw」
「姉さんあの…みんなどん引いてるから。」
「えへえへえへえへえへえへwwwwwww」
(怖い………………。)
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「皆さんどうですか〜?」
「先生…あの…あっちの班…。」
「あっちの班……え?」
「………アレぇ〜はぁ…何をしてるの?」
「足高さんが置き型花火に火を付けてますね。」
「ダメダメダメダメ!ちょっと足高さん!やめn」
「刺激刺激!刺激がね!欲しくてちょっとぶっ放そうかなって!」
「何の!?とにかくやめなさい!足高さん!」
「違う違う違う!これは違うからホントにあの……いいヤツだから。」
「いいヤツ!?」
「そうそうそうあの…隠し味にね。」
「いや隠し味なら中に入れなきゃダメよ!………………いや中に入れちゃダメよ!」
「先生なに!入れろっつったり入れるなっつったり!」
「とにかくやめなさい!みんなちょっと、バケツに水を入r」
「Activeあー、チャッカマンの音〜!」
バチバチバチ…………ポンッ
ヒュルルルルルルルルル!ドパーン!ドパーン!ドパーン!
シューーーーーーーーーッ!ドパン!パチパチパチパチパチ!
キャー!
アシダカサンガハナビツケター!
ミズーミズモッテキテー!
バクハツシテルー!
ヤバイー!
「飛んでいけ…あの夏の夜空へ…!」
「姉さんまだ夏休み来月だわ。」
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「ジャーン!多目的義手に付け替え完了!そしてぇ!」
ギュルルルルルルルルルルルルル!
「姉さんそれ何?」
「義手のね、ドリル機能。」
「どりるきのう?」
「これで生地かき混ぜたら早くない?」
「それで生地かき混ぜたらヤバくない?」
「………………………(ಠωಠ)」
「………………………………。」
「まあまあまあ、まあ、1回ほら、ね、やってみよ、かき混ぜてみようよ。」
「絶対飛び散るからやめといたほうがいいのに。」
「効率…効率がね良いじゃない。」
「え〜やめといたほうが良いt」
ギュチュチュチュチュチュチュチュチャチュチュ!
ビチャチャチャチャチャヂャチャチャチャヂャ!
ギュゥゥゥゥゥン……………
「……………………………。」
「……………………………。」
「……………ぶっかけられたみたい。」
「うわもう、最悪。」
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ブオンブオンブオンブオン
「…………姉さん何やってんの?」
「生地ヌンチャク。」
「その心は?」
「生地をイイ感じにしてる。」
「フワッとしてるねなんか。」
ブオンブオンブオンブオンブオンブオン
「危ない危ない!ちょっと足高さんやめなさい!」
「先生止めないで!邪魔者は倒す全て!私のクッキーヌンチャクで!あ。」
ブヒュンッ(手から離れた音)
バコッ!ドンガラガッシャーン!
ガラガラガラガラ……カーン!コロコロコロコロ……ガシャンガシャンガシャンガシャーン!
クルクルクルクル………………カコーン。
「……………………………みなさーん!クッキーはできましたかー?」
※家庭科の先生は現実逃避を選択しました。
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「姉さんそれ誰にあげるんだい?」
「新卒。」
「おや?姉さんも隅に置けないね!」
「何いってんのアンタ……ん?」
家庭科で作ったクッキーを可愛い袋に入れて音楽室へと向かっていた2人のもとへ、1人の女の子が駆けてくる。綺麗な黒髪にグリーンのインナーカラーを入れており、可愛いツーサイドアップにまとめた女子力の高そうな女の子だ。
「ツカミーン!デカちゃーん!」
「あ、萌だ。」
「2人とも、な~にしてるの?」
「クッキー作ったから新卒に持ってく。」
「池水ちゃん?うわ~お♡女子にモテモテイケメン教師♡」
「そうなんだよ。姉さんも隅に置k」
「わかったそれもうさっき聞いたよ。隅に置いときな?その台詞。」
「ツカミン上手い!」
「うるさいよw」
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コンコンッ
「はーい!」
「新卒〜♡」
「足高……やっと来たのか。」
「お・ま・た・せ♡遅くなってごめんね新卒♡」
「先生つけろ。もう良い、とりあえず座れ。」
「は~い!」
義足とは思えなほど軽やかなステップで音楽室の奥、音楽教員の準備室に入って行く。
「説教聞きに来たお♡」
「もう怒る気も失せたよ……コーヒー飲めるか?」
「砂糖とミルクを馬鹿みたいに少々。」
「な、どういう量だそれ。」
「ちょうどいい量。」
「そうか…愉快なやつだなお前は。」
ティーカップに注がれたコーヒーが温かい湯気を立ち昇らせている。淹れたてだが片方の乗っている更には5つの角砂糖とミルクが2つ添えられていた。
「よいしょ………また違う義手だな。」
「先の方だけ機械のタイプ。」
「朝の義肢は違和感なかったな。」
「うん、あれが日常生活用の義肢なの。めちゃくちゃ高機能でさ。パッと見じゃ、もう普通の手足にしか見えないから好きなの。」
「そうか…たしかに見た目が普通なら視線も集めないしな。」
「そうそう。義肢ってだけで変な視線向けてくる人いるからね。なんせ四肢が義肢なもんで!」
「嫌なのか?」
「嫌というか……特別扱いされるのがあんまり好きじゃないかな私。「かわいそう」とかよく言われんだけどさ?それって私のこと本当にかわいそうだと思ってんのか、それとも私を見て義肢の人をかわいそうだと思える自分のことを偉いと思ってんのか…そういうのがなんか…ね。」
「なるほどな……まあ、俺はお前とは違うからこう、下手なことは言えないけどさ…お前のことはカッコいいと思うよ。」
「だからさ〜私嬉しかったんだよね〜。」
「嬉しかった?何が?」
「今年の4月にさ、あんたが新任で学校に来てさ、担任になったじゃん。」
「ハハハ。新任でいきなりクラスを持つのは大変だからな。」
「それでさ、先生がさ、私のことちゃんとなんか…皆とおんなじ感じでさ、怒ったりしてくれるからさ、嬉しいんだ〜。」
「そうか……そう言ってくれると俺も教員冥利に尽きるよ。」
「そんな教員冥利に尽きるYouにプレゼント持ってきたべ?」
「プレゼント?」
「これ。家庭科で作った。」
「クッキーか?俺に?」
「そうそう。頑張って作ったんだぞ!」
「家庭科室がボロボロだったのと関係あるか?」
「…………………………………♡」
「ネタは上がってんだぞ。」
「さーせん。」
「全く……けどありがとな。先生こんなの貰ったの初めてだよ。」
「人生で?」
「いや人生ではそこそこあるよ。」
「童貞?」
「なぜ?ちげぇよ馬鹿。」
「草草の草w」
「まあありがとう…開けてもいいか?」
「うん!コーヒーに合うと思う!」
カサッ
「よくできてるじゃないか。」
「うん!匂いとか大丈夫そ?」
「おお、いい匂いだぞ?焼きたてのクッキーの………」
袋のリボンを取って中身のクッキーに鼻を近づける池水と、それをニヤニヤしながら見つめる掴美。およそ10秒後、池水より己が傷付くことを知らずに………!
スンッ
「くっっっっっっっっっっせぇ!?」
「アヒャヒャヒャヒャヒャ!そうだろうそうだろう!」
「なんだこの臭い!?」
「刺激を強めようと思って花火に火を付けたのだ!ニャハハハハハ!どうだ池水!日頃のフクシューだバーk」
「くっさ!なんか生ゴミみてぇな臭い!」
「……………………は?」
「なんか生ぬるい……生々しい臭いdぅぶる"る"る"る"る"る"る"る"ぉえ"え"え"!」
「……火薬っぽい匂いじゃなくて?」
「ほぉえ……火薬じゃねぇ…マジでォウブ…おならみたいな臭いゥグブ…!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
回想↓
「生地ね…じゃあボウル2つに分けよう。」
「2つ……はい、分けたけど。」
「うんありがとう…じゃあ片方には。」
「片方には?」
「グチュグチュグチュグチュ………ぺっへぇ!」
「きったねぇ!」
「もっといっぱいがいいな……定期的に入れよ。」
「姉さんきったねぇ!なんで!?」
「いやこれはちょっと…ねw」
「姉さんあの…みんなどん引いてるから。」
「えへえへえへえへえへえへwwwwwww」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ちょっと甘臭い……ツバ!?ツバか!?そうだ!この臭いは口臭だ!口の臭いだ!」
「……………………………。」
「いや誰のっていうか……あ。」
「……………………………。」
「…………………………ぁ足高。」
「……………………………。」
「……………………………ごめn」
「帰る(泣)」
「あ、足高!すまn」
バタンッ!
「…………しまった…年頃の女子に。」
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「姉さんどうだったんだろうね?」
「いや〜ツカミンは頭ぶっ飛んでるからn」
うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!
「うわっ!」
「ツカミンッ!?…………行っちゃった。」
「姉さん泣いてたね。」
「すごく傷ついたって感じだったけど。」
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2時間後、コンビニ────
「お客様…商品は以上でよろしいですか?」
「はい……。」
(大量のブレスケアタブレット…と口内消毒液。)
「………明日から口開かない(泣)」
そんなわけで、これは【マイノリティーをアビリティーに】を信条とする両手両足が義肢の女の子、足高掴美が、楽しく生きていくお話である!
【次回:ロケットパンチでワラシベチョージャ】
「炎上するぞこんな作品w」
「姉さん次第だね。」




