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二 紅茶党のコーヒーブレイク

 僕は古い書棚の前に立ち、整理を続けていた。手に持つのは、色あせた古びた会計学の書物の束。作業はなんだか集中できず、強すぎるコーヒーのカフェインのせいで頭が少しぼんやりしていた。喉の渇きとともに、慣れないコーヒーの苦味と香りだけが口の中に残っていた。

 「ふぅ…」

 息をつきながら、僕は棚から本を一冊ずつ取り出して整理していた。古い帳簿や資料の間に混ざる紙切れをめくりながら、時折目を凝らす。ちょっとした手間も、紅茶党には強すぎるコーヒーの覚醒作用のおかげで何とかやり遂げていた。

 本の整理もかれこれ、1時間ほど経ったとき、ふと、背表紙に金色の文字が輝いている本を見つけた。それは見慣れない佇まいの古書だった。黒い皮革の表紙に、「独逸原価計算史序説」と記されていた。

 僕は、ひときわ際立つ金色文字に興味を惹かれ、その本を引き抜いた。コーヒーの刺激で少しふらつきながら、意味もわからず、1ページずつ流し読みをしていくと、何となくなじむ単語が目に飛び込んできた。


 “コンテンラーメン(Kontenrahmen)”


 「これだ!」

 僕は思わず、声をあげた。

 その文章を読み進めると、どうやら“コンテンラーメン(Kontenrahmen)”は、ドイツ語で、勘定の体系を意味するものらしい。勘定組織のようなものだろうか。

 この「独逸原価計算史序説」は、ドイツにおける原価計算の歴史と、その背後にある理論的背景を詳述しているものと思われる。特に、「コンテンラーメン」という語は、その章の核心をなす概念であり、ある種の枠組みを指しているようである。

 僕はさらにページを開き続けた。ページをめくるたび、そこには、古い会計の概念や、勘定の枠組みについて、詳細な記述がなされていた。そして、その中に、まるで教訓めいた一節が鉛筆でなぐり書きされていた。


 “コンテンラーメンは、まるで一杯のラーメンのようだ。さまざまな勘定が絡まり合い、調和を保ちながら一つの計算機構たる味を作り出す。”


 おそらく、誰かが教授のジョークが秀逸だったので、つい書きなぐってしまったのだろう。たしかに、なかなかおもしろい。

 だが、それはさておき、このとき、僕はあの壁の文字が、”コンテンラーメン”の“コン”が消えてしまっていたものだったということを思いがけず理解したのである。


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