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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

夏のホラー

【夏のホラー2025】仮初めのミモザ

作者: 花萌ゆる
掲載日:2025/07/06

俺には言えない秘密がある。

「大好き!」と言われて付き合った人がいる。

彼女の熱意に根負けするかたちで付き合うことにした。

でも、どこか想いを利用している自覚があった。

理想の彼女に出逢ったときに巧く立ち回れるように、恋の練習がしたい。

そう思ったのだ。

もちろん、デートを重ね、人並みに彼女への気持ちを募らせて、愛を育んできたつもりだ。

たまに情緒不安定になるけど、そんなときも真摯に向き合ってきた。


付き合って3ヶ月。風車のある公園で、彼女とデートした。

まるでオランダにいるみたいだった。

「すごい!日本じゃないみたい!!」と、彼女も嬉しそうに、目を輝かせている。

デートコースとしては上々のようだ。

メモ帳をポケットから取り出し彼女の反応をなぐり書きした。

「風車小屋に行ってみようか?」と、俺は、すっかりこなれてエスコートする。

ふと、彼女を見ると、さっきまで、はしゃいでいた表情とは変わって、どんよりとした空気が漂っていた。

「どうしたの?」と、恐る恐る聞いた。

「……」


もしかして、俺の気持ちがホンモノではないことに気づいたのか。

焦りにも似た感情が俺を襲った。

「怒らせたのなら謝るよ。ごめん。」

この関係性が生んだ常套句を口にした。

彼女は池の方をゆっくりと指差し、こう言った。


「……女の人がいる。」


「えっ、どこに?」


「池の上にいる。」


「俺を驚かそうたってそうはいかないよ。」


柵越しに池に近づくと、俺にもゆらゆらした何かが視界に入った。

それが何か確かめようとして、身を乗り出す。

すると、たしかに女の人が池の上に立っていた。

あり得ない!どうなってるんだ?

俺を見て、手招きをしている。

つい、目を合わせてしまった。


「何してるの!危ないよ、早く戻って!!」


気がついたら、柵を乗り越えていた。

俺の肩を掴んで、彼女が何か叫んでいる。

何を言っているのか理解できない。

その手を振り払い、俺は足を一歩踏み出した。


バシャッ


そして、何かに頭を掴まれ顔を水面に押しつけられた。

強い力で押さえつけられ、抵抗できない。

何でこんなことになったんだ。

彼女の気持ちを知ってて練習台にしたからだろうか。

変なモノを見せられたのも、彼女の仕業なんじゃないかとすら思えてくる。

酸素が肺から少なくなり、頭がボーッとしてきた。

最後の力を振り絞って顔を水面から上げると、柵越しに彼女は不気味な笑みを浮かべていた。

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― 新着の感想 ―
ホラーというよりは、恋愛小説のような印象の題名ですが、しっかり怖かったです。 下心を隠してのお付き合いは、意外とあるような気がしますが、「彼女の仕業」と人のせいにしているところが、こんな目にあっても救…
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