第26章:記録の証人と、語られざる魔王の素顔
《証人喚問、開始》
審問会の第二段階――
それは、“異端者の存在価値”を決めるため、過去を知る者から証言を得る場。
そして現れたのは、
灰色の長衣をまとった一人の老魔導士。
> 「証人、ユーデル=アルフレア。
元・王国魔導顧問、現・大陸中央記録庫長官」
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彼は高い杖を静かに地に突き立て、
その瞳でリアンを見つめた。
リアン「……あなたは、母の時代の人ですね」
ユーデル「ルーシェ=ノクス。あの女を忘れたことはない。
彼女は、“破壊の魔王”であり、“癒しの賢者”でもあった」
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会場がどよめく中、ミカエルが問う。
> 「証人。リアン=ノクスが“災厄の血”を継ぐ者であると、あなたは認めますか?」
ユーデルは静かに頷いた。
> 「彼は、確かに“ルーシェの血”を引いている。
だが、それは罪ではない。“選ばれた血”だ」
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> 「100年前、世界は教会と魔族、そして無数の戦火に引き裂かれていた。
その中で、ただ一人、両者を救おうとした者がいた。
……それがルーシェ=ノクスだった」
> 「彼女は“自ら封印される”ことを選び、
魔族も人も守るため、“名を捨てた”。
そして彼女の息子が、ここにいる」
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審問官A「それが何になる!? 魔王は魔王だ!」
ユーデル「ならば問おう。
“血”が罪なら、あなた方の手に染まった“聖戦”の血はどう説明する?」
沈黙。
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ルミナは見つめた。
リアンの仮面の奥、ほとんど震えることのないその心の揺れを。
ユーデル「リアン=ノクス。
君が“この世界に何を残すか”、それは君自身の行いで決まる」
> 「……母君も、そう言っていた」
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リアン「……ありがとうございます。
母の意思が、まだ誰かに届いていたことを、僕は誇りに思います」
ミカエル「証言、記録完了。審問会、次段階に移行する」
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だが、その瞬間――
天井から魔導警報が鳴り響いた。
> 《警告! 外周障壁 第三層に干渉信号!》
> 「何者かが聖堂内へ干渉を試みています!」
ロゼリア「こんなタイミングで……まさか!」
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ユーデルの瞳が鋭くなった。
「……来たか。“彼ら”は、“裁判を壊す者”でもある」
リアン「“彼ら”って……?」
ユーデルは言った。
> 「“人間でも魔族でもない者”。
“失われた第四種族”が動き始めたかもしれん」
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この章では、“母の真実”と、“記憶を継ぐ者”としてのリアンの立場が
ようやく一歩、認められ始めました。
ユーデルの登場は、過去と未来を繋ぐ“賢者の系譜”であり、
審問会がただの処刑劇ではなく、“思想と歴史の闘争”へと拡張される伏線です。
そして、謎の干渉信号――
次章、ついに現れる“第四種族”の影。
彼らは味方か敵か。
リアンの運命は、さらに混沌へと導かれます。