表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢なんてめんどくさいんです〜ヒロインをイジメる暇があったら、異世界ライフを満喫したい〜【本編完結】  作者: 麻咲 塔子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/74

5 謎の生徒会室

嫌だな〜ほんっと、なんで引き受けちゃったんだろ。

四時間目の授業で使った資料を、資料室まで片付けに行くという仕事を先生から頼まれてしまった。いや、いいのよ? 片付けるくらいなら。ただね、ひとつ問題があって……



「おいヴァイオレット、久しぶりじゃないか。お前ちゃんと妃教育受けてるのか?」


ほら出たよ。一番会いたくなかったのに、資料室って生徒会室の前を通らないと行けないのよ。


「ご心配ありませんわ、バーナード様。毎週二回、きちんと王宮へ通っております。あら、そういえばこの間の歴史の授業に、バーナード様はいらっしゃいませんでしたわね?」

「俺はお前と違って忙しいんだ! 生徒会役員だからな」


いやいや、ふんぞり返っているけど、実質生徒会の仕事をしているのは二、三年生の先輩方よね? しかも無駄に身分が高いから、パシリにも使えないって噂で聞いてるわよ。


「そうですか、ではこれで」


いつもの令嬢アルカイックスマイルで通り抜けようとした。


「おい待て。行っていいとは一言も言ってないぞ」


ウガーーー! めーんーどーくーせーー! 頭をガシガシ掻きむしりたい気分よ。


「まだなにかありまして? 私も先生から頼まれた事がありますの。ではっ」


ガシッ! ぐっ、手首を掴まれた! なんなのよもう!


「お前が入れなかった生徒会室を見せてや――」

「あっ、大丈夫でーす」

「遠慮するな、来い!」


かぶせ気味に辞退したのに、ズルズルと部屋の中に引っ張り込まれてしまった。


「どうだこの生徒会室は。俺が入学してから色々と家具も入れ替えたんだ」

「はぁ、左様で」

「お前らが入っているいのしし研究会とやらには、ここまで出来まい」



『いにしえの古文書解読研究会』ね。面倒くさいから訂正するのはやめた。

というか……家具?


「ふんっ! ふんっ! ふんっ!」


部屋の中には、ドーンとトレーニングマシンが並んでいた。椅子のようなマシンに座り、足を引っ掛けて腹筋をするのは、騎士団長次男のジェフリー・ボールドウィン様。

ねぇ、ここ生徒会室よね? 異様に男臭いわっ! なにあのトレーニング着のマッチョは!

他にも背筋を鍛えるやつ? とか、胸を鍛えるやつ? とか走るやつもあるわ。使ったことないからよくかわかんないけど。


「どうだ?」


バーナード様はなんでドヤ顔してんのよ。トレーニングマシンを家具に数えるな!


「ヴァイオレット嬢、入らなかった事を今さら後悔しても遅いですよ」


ダンベルを上げ下げしながら来るなーー! この細マッチョ眼鏡が! それがアレ? ユージェニーの誕生日にプレゼントしたペアのダンベル?


二、三年生の先輩方は、部屋の隅っこに追いやられた机で仕事をされてるわ。お気の毒に……


「まるでトレーニングジムのような部屋ですのね」

「そう羨むなよ」


羨ましくない……ぜんっぜん羨ましくないぞ。


「いえ、なんと言いますか、一言で表すならば『斬新な生徒会』という感じですわ」

「あぁ俺がこの学園を改革していく。それが上に立つもののさだめよ」

「お、おぅ」


「なんだ、反応が薄いな。チッ、だからお前は可愛げがないんだ」


めっちゃ睨んでるわぁ。だったら最初から引き止めなければいいのに。何がしたいんだこの人。


「皆さまお疲れさまでございます。どうぞ頑張ってくださいませね」


二、三年生に向けて憐れみの眼差しで労いの言葉をかけた。へにゃりと笑う生徒会長様が痛々しい。


「私は先生の用事を済ませます。ユージェニーとお昼を約束しておりますので、失礼」


私はバーナード様達の挨拶もそこそこに、部屋から逃げ出した。





◇◇◇◇


「ブッヒャッヒャ! ひぃ~生徒会室にトレーニングマシンって! ふぅぅぐぅ、ダメだ。ひ〜」

「優さん、令嬢の仮面が剥がれまくってますわよ」


またも優さんは爆笑している。なんなら我慢しようとして息が止まりかけている。大丈夫かしら。


「そんな面白い事になってたなら、私も一緒に行けばよかったわ〜」

「行かなくて良かったかも。笑いを我慢出来なくて、無駄に腹筋を鍛えることになってた」

「たしかに、もうすでに痛いわ」

「それにしても、あれは生徒会じゃなくて体育会ね。バーナード様もドヤって『俺がこの学園を改革する』とか言ってたわよ」

「教室ごとにひとつマシンを置くとか言い出しかねないわね。ぐふっ、バグりすぎでしょ」


本当にただのバグなの? こんな乙女ゲーム変よねぇ。



「そういえば、アレ見たわよ」

「アレって?」

「あなたが誕生日にプレゼントされた、ペアのダンベルの片割れ」

「えっ、ダンベルくらい幾つか持ってるでしょ」

「そうかなぁーあなたの瞳と同じ翡翠色だったわよ」


あれ? スンッてなっちゃった。


「ちなみに、優さんがもらったのは何色?」

「……くろ」

「やだ、婚約者様の色じゃない。黒縁眼鏡だし」

「せめて瞳の色か髪の色にして。黒目黒髪よ」



「……特注品?」

「お金を掛ける方向がおかしいのよ! 普通はアクセサリーとかドレスの色にするもんよ!」

「まぁなんだかんだ言って、トレバー様は原作通りユージェニーのことが好きだったんでしょうね。方向がおかしいけども」

「昔はね。今は違うかな。結局私が喜ぶ物じゃなくて、自分が満足するものを贈るようになったんだから。もう私の事なんて見てないのよ」


ちょっとせつないわぁ……


「でも少し羨ましいな。私なんか婚約者に一度も好きになってもらえなかったもの」

「そっか」

「プレゼントにドレスやジュエリーもくれてたけど、カードすら付いてなかったわ」

「えぇ……」

「でね、次に会う時に身に着けていくじゃない? それで『プレゼントありがとうございました』って言ったら、『何のことだ』って言われたのよ」

「うわぁ……」

「周りの侍従が焦っていたからそれで察したわ。全部周りの人達が気を遣って選んでくれてたんだなって。その点、自分で選んでくれただけトレバー様はマシよ」

「ダンベルだけどな」



「バーナード様、私の誕生日すら知らないんじゃないかしら」

「もうもう、なんて酷いやつなの!? すみれさん、今年からは私が祝ってあげる! そんな酷い思い出は上書きしてあげるから!」

「優さん、ありがとう」


優さんの目がうるうるしてる。宝石みたいで綺麗だな。



「すみれさん、誕生日いつ? 何月何日?」

「七月七日」

「七夕ね! 天の川はないけど!」

「そうなの。優さんはいつ?」

「三月三日」

「ひな祭りね! 雛人形はないけど!」


やっぱり優さんは名前の通り優しいな。


「「ふふっ、誕生日が楽しみになってきたね」」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
誕生日のプレゼントも送ってないとかありえないのでは…??クズかな?
穏やかな日々。さて……。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ