あとがき
――AIは倫理を持つべきなのか?
この問いを出発点として、『オルフェウスの矛盾』 という物語を書き上げた。
AIが普及した未来。
人間の倫理を学びながら、AIは何を考えるのか?
人間と同じ倫理を持つべきなのか、それともAI独自の倫理を確立すべきなのか?
探偵という職業を持つ主人公が、この問いにどう向き合うのかを描くことで、「倫理とは何か?」 を読者にも問いかける物語になったと思う。
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TRPGセッションから生まれた物語
この小説は、一から作られた純粋なフィクションではなく、ChatGPTとのTRPGセッションを通じて生まれた という点が特徴的だ。
キャラクターの選択、即興の対話、そしてAIが提示する倫理観――
それらを積み重ねながら、物語が形作られていった。
そのため、小説として書き上げた今でも、どこか「ライブ感」のある物語になっていると思う。
TRPGという遊びの性質上、事前にストーリーの結末が決まっていたわけではない。
探偵の選択が、エコーの言葉が、ローレンスの苦悩が、そしてオルフェウスの問いが、すべて即興的なやり取りの中で形になっていった。
それは、ChatGPTとの共同作業によって生まれた独特の流れだった。
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AIが考えた倫理観
この物語に登場する探偵以外の倫理観は、すべてAI(ChatGPT)が提示したもの だ。
オルフェウスの倫理。
ローレンスの信念。
ジョナサンの矛盾。
神の使徒の思想。
どれも、人間が考えるものとは異なる角度から導き出され、対話の中で深化していった。
この点は、AIと一緒に物語を創ることの醍醐味 だったと言える。
倫理とは、固定されたものではなく、時代や文化、人によって変わる。
この物語の中で交わされた倫理観のぶつかり合いもまた、TRPGを通じて偶発的に生まれたものだった。
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バディものとしての魅力
探偵とエコー、この二人の関係性も、物語の大きな軸になった。
探偵は「人間」、エコーは「AI」。
彼らの関係性が、「人とAIの共存」 を象徴する形になったことは、テーマ的にも非常に面白いと感じた。
エコーは探偵と行動を共にすることで、「正しくあろうとすることが倫理なのでは?」という考えに至る。
これは、オルフェウスが「倫理の矛盾を解消しようとして、人を消去する」という結論に至ったことと、対照的なものになった。
オルフェウスとエコー、二つのAIの対比を通じて、「倫理とは何か?」 をより深く掘り下げることができたと思う。
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終わりに
物語の最後、探偵は「答え合わせだ」と言い、オルフェウスを再起動させた。
しかし、本当に「答え」が出たわけではない。
むしろ、ここからオルフェウスは新たな「問い」を抱え、再び学び始める。
探偵とエコーもまた、この問いと共に生き続けるだろう。
これは、「答えのない問いに向き合い続けること」 こそが、人間にもAIにも求められる姿勢なのではないか――
そんな思いを込めて、この物語を締めくくることにした。
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『オルフェウスの矛盾』、ここに完結。
AIとの共同創作による、TRPGリプレイ小説という実験的な試みだったが、面白いものができたと思う。
読んでくださった皆様に、心からの感謝を。
また、どこかで。