新しい挑戦
真守は、異世界から来る者が珍しくないこの世界で、役所の手続きにより3ヶ月間利用できる寮に住むことになった。寮は町の外れにあり、異世界からの来訪者を受け入れるために整備されているため、役所の職員も慣れた様子で案内してくれた。基本的な生活環境が整っており、真守はこの場所を拠点に、新たな生活をスタートさせた。
真守が新しい住まいに移った後、彼はこの異世界での生活を維持するために、さまざまな仕事を手伝うことにした。まずは、町の市場での仕事に取り掛かった。
**市場での仕事**
市場は活気に満ちていた。商人たちは大きな声で商品の宣伝をし、買い物客が絶え間なく行き交う。真守は市場で果物を運ぶ仕事を任された。大きなカゴに積まれた果物は重く、何度も手が滑りそうになりながらも、彼は懸命に運んだ。
「この果物を、向こうの店まで頼むよ!」
商人が指示を出し、真守は汗だくになりながら指示された場所へと運んだ。しかし、彼は保育士としての経験が役立つ場面がないことに気づき、心の中で焦りを感じ始めた。果物を運ぶだけの仕事に、どこか虚しさを覚えたのだ。
**宿屋での仕事**
次に、真守は宿屋での清掃の仕事を引き受けた。宿屋の女主人は真守に部屋の掃除を任せた。シーツを取り替え、床を磨き、客室を整える仕事だった。
「綺麗にしてくれて助かるわ。次は2階の部屋もお願いね。」
女主人の言葉に応じて、真守は丁寧に掃除を続けた。しかし、ここでもまた保育士としての自分のスキルは活かされなかった。真守は子どもたちと接する機会もなく、ただ目の前の仕事を淡々とこなしていく日々が続いた。
日々の労働の中で、真守は保育士としての自分の経験が、この世界では全く役に立たないことに気づき始めた。彼がこれまで培ってきたスキルや知識は、この世界では全く求められていないようだった。保育士としての仕事がなければ、自分の存在意義を見失ってしまうのではないかという不安が募る。
例えば、真守は市場で一人の子どもが興味津々に果物を触ろうとしているのを目にした。彼は思わずその子に優しく声をかけ、果物を手に取らせてあげたが、その直後に商人から注意されてしまった。
「そんなことをしている場合じゃないだろう。働け!」
商人の言葉は厳しかった。真守は子どもと触れ合うことすら許されず、再び果物を運び始めた。彼の心の中では、保育士としてのスキルが役立たないことへの焦りが募っていた。
宿屋でも、真守は子どもと接する機会を探していたが、宿屋を利用する客は大人ばかりで、子どもはほとんど見かけなかった。宿屋の仕事を終えて一人になったとき、真守は手を止めて自問した。
「本当にこれでいいのか?僕の役割は、こんなところにはないんじゃないか…?」
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