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無骨と干物


 俺の名前は黒咲(くろさき)(はる)

 警視庁本部庁舎勤務、捜査二課所属の刑事だ。

 警視庁本庁は霞ヶ関桜田門。俺の所属する刑事部捜査二課は、主に知能犯を担当する。

 知能犯は主に詐欺や通貨偽造、贈収賄といった金銭・経済・企業犯罪などをいう。

 知能犯と他の刑事犯との大きな違いは、綿密な計画に基づいて行われる点だ。その犯罪計画の中には、犯行が発覚したときの対処法も盛り込まれているケースが多く見られるため被疑者は口が上手く、巧妙に嘘の仮面を被りやがるので、取り調べがとても厄介。

 そのため捜査二課の刑事は、特に緻密な捜査が求められる。

 そんな部署で、俺は取調官として重宝されている。なぜなら心理学に飛び抜けて才があるからだ。自慢じゃないが、これまでの犯罪者の嘘を見抜けなかったことはない。

 人が嘘をつくときは少なからず目の動き、頬の筋肉の収縮、足の向き、呼吸、視線、発汗状態など、あらゆる器官において変化がある。どうやら俺は、その僅かな変化を見つける洞察力に長けているらしい。

 だがしかし。俺は今、悩んでいる。

 その理由は、俺の横でピコピコと愉快な音を鳴らしているこの女。


 場所はつい数ヶ月前まで俺のベッドだったはずのそれに、そいつは俺のシャツを着て呑気にゲームをやっている。


「おい、着替えくらいしろ。つか顔洗え。飯を食え」

「これ、いいとこまでやってから」

「これから仕事なんだよ。お前、洗っておいてくれるのか?」

「いいよ!」

 あっさりとした返事が返ってくる。

「おぉ。それは助か……」

 鵜呑みにしかけて我に返る。

「……いや、ダメだ。絶対皿割るだろ。お前これまでに何枚割った」

「覚えてない。だってわざとじゃないもーん」


 時刻は朝七時五分。朝っぱらからゲームをやっているこの女の名前は、白鳥(しらとり)泉水(いずみ)。うちの居候だ。

 そして、この女の正体は恋愛詐欺師である。

「ちっ……成人のくせに。働けよ」

 見た目は童顔だが、れっきとした二十歳。成人済み。この女とは数ヶ月前、取調室と出会った。

 白鳥はこれまで世の男を虜にしてきただけあって、その容姿は飛び抜けている。


 長い黒髪は艶やか。大きな二重瞼は目尻が垂れていてあどけなく、絶妙に庇護欲を誘う。くわえて小さな鼻から続く薄桃色の唇はぷるぷるで。

 容姿完璧の白鳥は、ベッドの上で転がったままだらけて言う。

「まかせろ。今日競馬場行ってくっからヨ」

 なんちゅう言葉遣い。

「ドヤ顔で言うな。俺は九時五時で規則正しくまともな職場で働けと言っている」

「要は稼げばいいんでしょ? ちゃんと家賃入れるから安心してよ!」

 思わず額を押さえる。

 とはいえ。

 こんな奴にもいっちょこまえに特技というものがあるらしい。賭けごとにめっぽう強いのだ。

 働かずに大金を持って帰ってくるのだから、真面目に働いているこっちが惨めに思えてくる。にも関わらず、当てた金は貯めずにさっさと使ってしまうからいつだって金がない。


 とどのつまり、ただの金欠干物ニートである。働きもせず、家もなく、金もないの三拍子が揃ったろくでなし。

 家事もできない世間知らずもいいところなこの女詐欺師が、なぜ警視庁捜査二課所属の俺の部屋にいるかというと……。


 コイツとの出会いは数ヶ月前に遡る。


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