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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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夢の世界の住人

竜のたまごが孵ったら

掲載日:2023/12/31

嘗て竜の王が治める、最強の国があったという。

※本作は、コロン様主催の「たまご祭り」参加作品です。

 

『すぐに会える。だから……』


 あれは何時(いつ)、誰の言葉だろう。

 頭に浮かぶ言葉を反芻し、今日もラコは森を歩く。


 ラコは自分の年も家族も知らない。名前すら分からない。

 森の入口で気が付いた時、誰かに「ラコ」と呼ばれた。

 だから名を聞かれたらそう答える。


 ラコと。


 長く続いた先の大戦で、国土は荒れた。

 竜を祀る国をこの国が滅ぼし、この国も半分は焦土となった。

 家族も家も、失くした民は緩衝地帯の森に逃げ込む。



 以来ラコも森に住む。

 小さな小屋で暮らしている。


 時折森の奥から声がする。

 ラコの名を呼ぶ声がする。


 声に導かれラコは森を行く。

 薪を拾う。茸を拾う。

 たまに黒い石も拾う。


 薪と茸は自分用。

 黒い石は炎を作り出す売り物だ。

 ラコは石を売った小銭で、僅かな食べ物を得る。


 そうして数年たった。



 ある日朽ちかけた木の(うろ)で、ラコは大きな卵を見つけた。

 ラコの頭より何倍も大きい卵だ。

 差し込む光が卵の殻を通過する。


 思わず殻を触ったら、ラコの掌よりも温かかった。

 触れた瞬間、卵から声が響く。

 いつも「ラコ」と呼ぶ声だ。


 ラコ……ラコ……。

 ようやく会えたね!


 卵から響く声で、ラコの頭の中の殻が、ぱりんと割れた。



『ラコール、これ以上の(いくさ)は、双方の民を苦しめるだけだ。私は敵将に討たれよう』

『討たれるって、陛下。あなたは……』


 陛下は言った。

 ラコの夫、竜の一族の(おさ)


 そうして彼は死んだ……。

 死んだ?


『君を、森に飛ばす。

 私もすぐに行く。

 だから、探してくれ。

 卵を。



 竜の卵を。


 卵を孵せるのは、きみだけだ」


 全てを想い出したラコは、卵を抱きしめる。

 見つけたわ!

 愛しいあなた。



「手を上げろ」


 いつの間にかラコの背後には、銃火器を構える小隊がいた。


「伝承通りか。竜族は死んでもすぐに蘇る。しばし卵に守られて、とな」


 ラコは両腕を一杯に広げ、首を横に振る。

 卵を。

 夫を包む卵を、守らなければと。


「逆らうなら女とて容赦せぬ。撃て!」



 ラコは目を瞑る。

 火縄の燃える臭いがする。


 その瞬間。

 突風が、木々を兵士を薙倒す。

 兵士らの悲鳴にラコは目を開ける。


 腰を抜かした隊長と、ラコを抱く腕が見えた。


「そこの兵、王に伝えよ。竜王が蘇ったと。一度死に戻りし竜の力、万倍になれり」


 慌てて去る小隊を見ることなく、ラコは竜王に抱きつく。


「待たせたな」

「いいえ」

「もう二度と離れない」

「はい」


 竜王はラコを抱いて飛び上がる。


 その後山の頂に、竜族の住む国が出来たという。

 竜王と王妃(ラコ)は末永く、幸せに暮らしたと伝え聞く。

お読みくださいまして、ありがとうございました!!

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― 新着の感想 ―
えっ、これで1000字……!? あまりにも壮大すぎる物語、さすが高取さん! 卵を孵せるのは……という設定も素敵でした。 最近自分も1000字掌編をよく書くんですが、すごくすごく読み応えあり、勉強になり…
1000文字の中に壮大な世界観がギュッと凝縮されていますね。 この物語はラコさんのルーツを辿る話でもあり、竜族の国の再興の物語でもあったのですか。 竜族は滅びぬ、何度でも蘇るさ!
[良い点] とても良かったです! 1000字とは思えない作り込まれたファンタジーだと思いました。 [一言] こう360度この世界を見ることができたような、イマジネーション掻き立てられるお話でした。
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