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コロナウイルス謎の変性~新型ウイルスの逆襲~

作者: 赤井翼

はじめに

2020年1月よりの新型コロナウイルスにより、お亡くなりになられた方々、および、そのご家族、関係の皆様にお悔やみ申し上げるとともに、罹患し、様々な後遺症に悩まされている方々、現在も闘病中の方々、およびそのご家族、関係の皆様にお見舞い申し上げます。

作者より


プロローグ

「私は、オカルト系ユーチューブチャンネル「オカルトタロウのオカルトは爆発だ!」を管理している「オカルトタロウ」と申します。もちろんユーチューブ上でのネームではありますが、タロウというのは本名ですので、この告白の中では、自称をタロウとさせていただきます。(なお登場する他の人物につきましては、今後も危険が降りかかる可能性があるため、今回は「A氏」、「B氏」等の仮名で進めさせていただきます。いささか、読み難く、感情移入しにくいこととは思いますが、状況を鑑みお許しください)

私は、理系の大学を卒業後、数年という短い期間ではありますが、電気系設計業務の勤めをしておりましたが、世界のオカルト現象や科学で説明のつかない遺跡や遺産をこの目で見たいとの思いで会社を退社しました。世界を回った3年間ですっかり、オカルトの世界の魅力にはまってしまい、その魅力を多くの人に伝えたいと思い、ユーチューバーになり5年になります。現在では、オカルト系ユーチューバーとしては中堅クラスに位置しており、専業でユーチューブ番組を制作、管理しています。UFO、UMAの未確認案件から、幽霊、都市伝説、超能力、歴史秘話、未知の化学等を中心に情報提供をしてきました。その取り扱いジャンルの中にホラー映画や怪奇映画等、映像に関する情報も最近は取り扱っています。

ありがたいことに、かなり、こってりとしたコアなファンだけでなく、高校生や女性といったライトなファンにも恵まれ、ユーチューバーとしては恵まれた環境になります。

今の社会には、少なくないオカルト趣味の方が存在します。言いえて、そういった方々は、何か社会的事件が起こると「陰謀説」であったり「秘密結社」、「地下組織」の仕業と捉えがちで、一般の方においては、「フェイクニュース」や「色物記事」で済ましてしまうことがほとんどでしょう。

皆さまが信じてくれるかわかりませんが、先日、新型コロナ罹患後の15日間に、私が体験した壮絶な体験に基づく真実と、知り得た「現在のマスコミでは絶対に報道されない、隠された事件の真相」とその後知りえた事案の詳細をできる限りお伝えしたいと思います。一部、記憶があいまいな部分があり、文章が錯綜する部分がありますが、あらかじめお詫び申し上げます。


皆様は「超能力」って本当に存在すると思いますか?「X-MEN」や「幻魔大戦」に出てくるような、念動力、遠方透視、瞬間移動、未来予知、テレパシーなどメジャーな能力以外にもいろいろな超能力が存在することをご存じですか?超能力を持っているってことは幸せですか?あなたは、超能力を持ちたいですか?

また、いま世間をにぎわしているコロナに代表されるウイルスの仕組み、本当の怖さって理解できていますか?ウイルスは日常生活の中、常に周りに存在することを理解されていますか?細菌と違い、単体では増殖することすらままならないウイルスが、なぜ時として、世界中で猛威をふるい、多くの犠牲者を出すことができるのでしょうか?ウイルスが作用する、DNA、RNAの構造や機能についてどれくらいご存じですか。


私自身が今回新型コロナに罹患し、自らが持つ特異体質が災いし、社会全体を巻き込む事態になるにあたり、現在、一般社会に公開されていない社会的な危機、極端な話をすれば人類の未来に係るようなことが、私たちの日常生活の裏側で進められているのです。今回の経験の中で何人かの尊い仲間を失うことになり、いかに偶然起こりえた事件とは言え、自責の念に堪えません。

事件に巻き込み、命を極限の恐怖にさらさせてしまった方々、残念なことに命を失うこととなった方々たその家族や関係者の方々に真実を知っていただくとともに、今後、社会がどうなりえるのか、またどうしていくべきなのかを皆様と共に考えていただく機会になればと思います。


1日目(2021年〇月8日)

あれは、先月8日の事でした。寝苦しく、夜中に何度も起きてしまい、その都度寝汗でぐっしょりになったシャツと下着を着替えての繰り返しでぼーっとした頭で朝を迎えました。(あー、頭が重い。今日の予定何だったけかなぁ。編集したもののアップだけなら、午前中で済ませて、もうちょっとゆっくりと寝るかな・・・)ユーチューバーの仕事は基本的に自宅で一人でやる作業なので、普通のサラリーマンと違い、時間に拘束されないので、いつになく重い頭で朝のテレビニュース番組をつけました。


ニュースの画面には、「大阪でコロナ感染爆発」、「新種のコロナ変異株感染拡大中」とのテロップが画面の上段に並び、難しい顔をして新型コロナの変種株について解説のゲストの医者がキャスターに図表等を用いて説明をしていました。

「3月から「N501Y]という英国株と「E484K」という南アフリカ株、ブラジル株が京阪神エリアで増えてきています。「N501Y」型はウイルスのタンパク質の501番目のアミノ酸がアスパラギンからチロシンに変わり、スパイクタンパク質がヒトの細胞に結合しやすくなり、感染力が高く若い人でも重症化しやすいものと予想されます。また「E484K」型は、アミノ酸がE(グルタミン酸)からリシンに変化し、ワクチンの有効率を減少させるものと予想されています。」と医者らしい淡々とした口調で説明しています。キャスターが

「コロナウイルスが環境に適応するために自分の意思で変性していっているということですか?」と医者に問いかけました。

「そうですね。ある意味、コロナウイルスは人の細胞に入り込み、遺伝物質のRNAをコピーの際、変化させていきます。科学的なエビデンスはまだ発表されていませんがウイルスは「繁殖する意思」を持っています。しかし、強く作用しすぎるとその感染媒体である人そのものが死に至り、その結果、ウイルス自体も消滅する事を知っており、あえて自らの毒性を落としたり、また、今回の新型コロナウイルスの場合、当初、高齢者や身体的弱者をターゲットとしていたのが、各国で実施されたロックダウンやワクチン開発の状況を鑑みて感染力を強め若年者にターゲットを変えるために変性したり、ワクチンに対応して変異しているものと考えられます。」

「それでは、まるでウイルス自体に人と同じように意思と知恵があるように聞こえますが?」

「はい、先ほど言いましたように、まだ科学的なエビデンスはありませんが、今回のコロナウイルスに限らず、パンデミックを引き起こした過去のウイルス感染も同様に、人為的に変性させていないとするならば、ウイルスが自らの生き残りと繁殖のために自ら変異しているとしか考えられないのです。後々には、「N501Y」型と「E484K」型の融合、合体によるさらなる変性や別のウイルスと融合、合体することで新たな強力な感染力を持った新型ウイルスや強力な殺傷力を持った新型ウイルスが現れる可能性は否定できません。」

「はい、ありがとうございました。〇〇先生でした。京阪神地区では、ここ数日、対前週を上回る感染者数を記録し続けています。発熱の症状や呼吸困難等の自覚症状がある人は、速やかに地元の保健所かPCR検査を行っている施設で検査を受け、万一陽性が出た場合には、指示に従い外出を控え、他者との接触は絶対に避けてください。さて、次は、お天気です。」

(自分の意思で変異するウイルス?ウイルス同士の合体?まるで瀬名秀明のパラサイト・イブやな・・・あれはミトコンドリアやったからちょっと違うか。ウイルスが意思を持って、感染先のDNAやRNAを組み替えて、ゲノム設計図を書き換えることがあり得るってか!でも、本当にそんなことになってしまったら、えらいこっちゃなあ・・・)私はテレビのスイッチを切り、体温計を探しました。引き出しから出した電子体温計を口にくわえ、1分間。ピピピピピ。コールのなった体温計の表示を見ると37.8℃でした。

(こりゃやばいかな?念のため、大阪駅の近くの検査センター行っておくか。)

時計は〇月8日7時55分。昨晩のねっとりとした汗を流すため、さっとシャワーを浴び、着替えを済ませて、家を出ました。

検査センターは、結構な人出で、受付をし、問診表を書いて、検査まで約1時間かかりました。検査を終えて、若干発熱のだるさもあったので、ひとまず家に帰って休みました。


ベットでうとうとしていると、携帯のベルが鳴りました。時計は16時28分でした。電話は保健所からでした。内容は、私の検査結果は、「陽性」で14日間の自宅待機か指定されたホテルでの待機が必要とのことでした。

電話の最中に、冷蔵庫の中身と買い置きの食料品を確認すると、いささか14日間の待機には心もとない気がしましたので、3度の食事を提供してもらえる近場の指定ホテルにお世話になることにしました。19時までにホテルに入れば、夕食に間に合うとのことだったのでその日から入所することで申し込みをしました。

旅行カバンに着替えを詰め込み、2週間の長丁場に備えて、仕事道具でもあるノートパソコン、タブレット、カメラ、退屈しのぎにラジオと趣味のDVDのソフトファイル、本数冊を詰め込みました。時計は18時20分。(急がなあかんな、ホテルまで歩きで15分くらいかかるからなあ。あっ、ホテルでの待機中は一切外出できず、差し入れでアルコールは頼めず大変だったって話があったなぁ。保健所からは、他人に一切接触せず、まっすぐホテルに来るように言われてたけど、まあ、ここらで買って持ち込む分にはバレないだろう)とバタバタと家を出ました。


家を出てすぐのコンビニでビールやウイスキーや焼酎、つまみの類をたっぷり買い込み、ホテルにチェックインしました。フロントで簡単な手続きを済ませ、部屋に入りました。通常のシングルルームで、テレビ台に32インチのテレビ、内線電話機。隣接して簡易机と椅子。約40Lの製氷皿付の台下冷蔵庫。ユニットバスの洗面台にドライヤーという一般的なビジネスホテルです。窓はあり、外の夕闇がカーテン越しに見えています。私はベットの上に置かれた「待機者向けの案内」に目を通しました。

「部屋からの外出は一切不可」、「必要なものは、メールまたはフロントへの電話を通し、1日1回のデリバリーでのみ調達可」、「独自の宅配サービスの使用は不可」等々。(うーん、かなり厳しいなあ。とりあえず一杯飲んで、ユーチューブでコロナ実況でもして、カウント数稼ぐか・・・)とカバンからビールを出して一服しました。


夜10時からの生中継を予告し、今からコロナ待機生活に関する質問を受け付けることをSNSを通じ告知しました。チャンネル登録者やコアなファン、友人から多数のお見舞いのメッセージと質問が届きました。約90分で済むであろう質問、コメントを事前に選択し、準備を整えました。

みんな、コロナに罹患した際の感染防止生活に興味があるようで30分ほど、予定時間を超え、番組は終了しました。(ファンはありがたいものだなぁ。明日は、3食の内容と、クリーニングサービスでもまとめて配信するかなぁ。とりあえず、寝るか・・・・)


2日目(2021年〇月9日)

入所先のホテルでの最初の朝を迎えました。毎日のルーチンである、スマホ、パソコンのメール、SNSのチェック等を行い、洗面所へ行きました。自分のマンションはセパレートの浴槽なので、ホテルのユニットバスの洗面はいささか狭く、ゆっくりできない感じがします。(あー、あと13日か・・・)

昨晩の番組は、簡単に待機期間中の食事提供やホテルでの生活ぶりをコロナ日記的な感じで作成し生中継し、その後、ユーチューブで閲覧できるようにして寝たのですが、ユーチューブ番組は、本来はオカルトを期待しているチャンネル登録者にもヒットし、何通もの励ましのコメントや質問コメントをいただきそれなりに盛況でした。

(結構な閲覧数稼げたな!これなら自宅で作業してるのと同じだな。ん!)ふとひとつのコメントに「私も今、コロナ感染で自宅待機で1週間になります。仕事に行けず、毎日ゴロゴロ・・・・。3キロ太りました。タロウさんも気を付けてくださいね!」とありました。(そりゃこの生活続けてたら太るわな。今日は万歩計付けてて、今晩の話題で「今日一日で500歩しか歩きませんでした!」みたいなネタと、対処時に何キロ太ってるか?みたいな予想クイズでもやってみるかなぁ。あと支給される食事のカロリー数計算して、500歩の消費カロリーと比較でもネタにしてみるか。)昨晩提供されている朝食の菓子パン2個と紙パックの野菜ジュースのラベルでカロリー数を確認しました。(げっ!菓子パンって、こんなに高けーの!)昨日の夕方に食べた「とんかつ&からあげ弁当」の包みをゴミ箱から拾い出しラベルを確認しました。(げげっ、1075キロカロリー!?こりゃ実際デブるわ・・・。)

突然湧き上がる、デブ化の恐怖に狭い部屋のベットの横でヒンズースクワットを始めました。黙々とするのは精神的にしんどいので、テレビニュースをつけて、「ニュース2本スクワットして、1本休憩のインターバル方式にしよう!うん、がんばれ!俺!」と独り言で自分を励まし、うっすらと汗が浮き上がるくらいまでスクワットを続けました。入所期間義務付けられている、規定の検温をする前に運動してしまったので心配しましたが、36度5分とすっかり平熱で安心しました。体温チェック表に時間と体温を記録し、保健所にメールしました。


昼からは、今日アップする番組の撮影と編集を行い、夕食の弁当が届けば仕上がるように準備をし、後は、パソコンで調べものを続けました。

途中、仲良しのA氏から電話がかかってきて、小1時間ほど取り留めも無い話に付き合ってもらったこともあり退屈することなく1日を過ごすことができました。

番組をアップし、いったん就寝。

今晩は、お気に入りの「ミッドナイトラジオジョッキーオカやん」という深夜放送があります。オカルトネタ中心のリスナーのと横行をパーソナリティーのオカやんが面白おかしく読み上げる番組です。怖い話から笑える話まで、UFO、UMA、幽霊の「3ユー」ネタから超常現象、世界の不思議まで、私の番組の内容とリンクしているので参考にしています。番組が始まる午前2時半に合わせて、スマホのアラームをセットしてお休みです。


3日目(2021年〇月10日)

午前2時25分、アラームで目を覚まし、ラジオのスイッチを入れました。

「♪草木も眠る丑三つ時、今宵もあの世とこの世が繋がる午前2時半を迎えました。

「三度の飯より月間ムーが好き!」オカルト大好きDJオカやんのミッドナイトラジオジョッキー始まるよー!はい、皆さんこんばんは〜。

〇月10日金曜日午前2時半、異世界とこの世の橋渡し役、オカやんのMNRJ今晩もスタートです。」

(わくわく、始まったなー。俺の投稿、読まれるかなー?)

「今日も、リスナーの皆さんからいただいた「あんなもの見た!」、「こんなもの見た!」の「不思議な体験」、「恐ろしい体験」などなど、貴重な投稿を紹介させていただこうと思います。

「オカルト現象を信じる人も信じない人」も、「オカルト好きな人もそうでない人」も暫しお付き合いいただきたいと思います。

さて、今日1通目のメールです。ラジオネーム「転生してきた光秀様の嫁」ちゃん、19歳、歴女でオカルトファンの女の子からの質問です。」


(あー、外れたかー。残念!いや、まだ「私の不思議な体験、恐ろしい体験きいてください!」の投稿のコーナーがある!)

残念ながら私の投稿は、後半のコーナーでは取り上げられることはありませんでした。関西オカルトファンの間で絶対的な人気があるこの番組で、投稿採用者にプレゼントされる番組特製ステッカーを持つことは、オカルトファンの間である種のステータスになっていて、私も何度も投稿しているのですが、競争率は高く、未だにゲットできていない状況です。(いつか絶対ゲットしたんどー!)


今晩の「恐怖体験」の投稿コーナーは、雪山登山で悪天候で1週間、小さなテントで動くことができず、少なくなっていく食糧と落ちていく体力と思考力の中、霊的な体験をしたリスナーの体験でした。一人で小さなテントから動くこともできず、何の会話もないリスナーの状況と比べると、ラジオもネットも電話もエアコンも風呂もある今の私は恵まれてるなーと思いながら聞いていました。

リスナーの体験談も後半に入り、食料は底をつき、死の恐怖に襲われる投稿リスナーに、過去にその雪山で死んだ、山岳部の先輩の幽霊が現れ、先輩幽霊が亡くなった際に最後にビバーグしたテントが近くにあり、そこに若干の食料があると励まされました。その食料を雪の中から掘り出す作業の間、くじけそうになる投稿リスナーを先輩幽霊が必死に励まし(先輩幽霊は既に死んでるから「必死」はおかしいかー?まあ、でもその励まし方は「必死」としか言いよう無いわな。いやそんな事より、「がんばれ!投稿リスナー!あきらめるなー!」めちゃくちゃ感情移入してまうわー!「とにかくがんばれー!」)、食料を掘り出しに成功し、そのおかげで何とか生き残り、生還したリスナーと「天候は必ず回復する!がんばれ!お前が死ぬのはこの場じゃない!」と励まし続けた先輩幽霊の話に感動して、涙がこぼれました。

最後に投稿リスナーが食料を先輩幽霊のテントから回収した際の袋に入っていた先輩が残した小さな手帳に残されたメッセージに号泣してしまいました。(今回は当たり回や。いや神回や!投稿リスナーさん、オカやん、ありがとう!)と天を仰ぎました。パーソナリティーのオカやんも泣いていました。泣いてるオカやんのコメントで更にもらい泣きしてしまいました。

放送の最後に、いつもはないプレゼントコーナーがありました。

「リスナーの皆さんは、新海誠監督の「君の名は」見ましたかー?(うん、見た見た!)この作品で「月刊ムー」出てきますよねー!(うん!出た出た!)何回出てきたか知ってますかー?(えっ、テッシーが三葉にグランドで「ムー」読み上げたシーン以外にもあるの?)全部で何回あるか?それはどこのシーンなのか?が今回の問題です!投稿ネタが無いけどステッカー欲しいっていうリスナー様の希望に答えようと思います!枚数制限は無いよー!正解者全員にプレゼントしちゃうねー!(やった!投稿の神回に続いて、プレゼントも神回や!ギガラッキー!)締切りは、来週放送直前まで!番組ホームページのメールアドレスまで!お待ちしてまーす!では、また来週!」

ラジオ放送は終わりましたが、興奮は覚めませんでした。(あー、録音しといて良かったー。3回は聞けそうやなぁ。「君の名は」クイズで番組特製ステッカー全員プレゼント・・・、ありがたいなぁ。オカやん、神やなぁ。DVD持ってきてたかなぁ。朝になったら確認するか・・・。)すぐには、寝られそうにないので、寝酒としてウイスキーをくいっと飲みました。私は、あまりお酒は強くないので、シングル2杯で十分でした。幸せな気分で眠りに落ちていきました。


目が覚めると、既に9時半でした。真っ先に体温を測りました。今日も平熱で安心しました。毎朝のルーチンをこなしました。昨晩の番組もそこそこの再生回数がありました。コメント欄をざっと見て、SNSのコメントに返信しました。歯を磨き、テレビをつけました。朝のワイドショー系の番組は、今日もコロナを取り上げています。大阪の状況は悪くなる一方のようです。(なかなか治まれへんなぁ・・・。)突然、スマホがなりました。着メロから、オカルト仲間のB氏であることはわかり、すぐ電話をとりました。

「おはよー。タロウさん!元気かー?あっ、コロナの人に「元気か」は無いか?」

「おはようございます。全然元気ですよ。何ですか、こんな早くに?」

「いやぁ、タロウさん、ホテル缶詰で暇してるかなぁ、思て一個仕事頼みたいねんけど、どないかなぁ?」

「どんな仕事ですか?」

「うちの新人ユーチューバーのクライアントやねんけど、レベルが低すぎて全然閲覧数伸びへんねん。半日ほどオンラインでアドバイスしてやってんか?」

「どんなチャンネルですか?私でできるジャンルやったらいいですけど、迷惑系とか体当たり系とか、あとただの猫動画とかはわかりませんよ。」

「今、ネット見れる?ユーチューブで「ユイちゃんのひとりごと」って検索してみて。「ゆい」はカタカナね。ちょっと見て。」

「(タブレットで検索し、番組を呼び出す。女の子のCGキャラとボカロ音声が流れ出す。)この女の子ひどすぎですね・・・。」

「いや、中の人は男やねん。「こりゃダメダメー!」って感じやろ。」

「画像も中身もダメですね。こりゃ。何を教えればいいんですか?」

「まぁ、全部やな。彼、タロウさんのチャンネルの登録者やねん。彼も映画好きで、タロウさんの映画紹介番組的なもんやりたいらしいねんな。なんやったら、彼が慣れるまでCGは代行してやってくれたら助かるわー。金はそこそこ持ってるみたいやから、タロウさんが思う妥当な金額で付きあったてなー。知り合いの息子になんねんけど、親父さんから頼まれてん。親バカもいいとこやねんけど、親父さんは大事な客何でなぁ。」

「わかりました。どうせ暇は売るほどありますから!売っちゃいましょう!」

「助かるわー。じゃあ、彼のアドレス送るから、タロウさんからズームの招待状送ったって。半日2万くらいで頼むわ。」

「はい、はい。B氏のお願いなら断るわけにはいきませんし、まあ、暇暇な今、渡りに船ですわ。気ぃ使ってもろてありがとうございます。」

「いや、そんなんちゃうねんで。ただ、何か仕事しとったら、気ぃ晴れるやろ。

そんで、話変わるけどええか?」

「はい、なんです?」

「今晩のオカやん聞いた?最後の「君の名は」のやつ!あれから、徹夜で3回見たんやけど3つしか見つかれへんねん。」

「へーえ、3つもあるんですか?テッシーと三葉とさやちんが運動場で話すとこ以外にあるんですね。まだ見直してないんで、それくらいしか記憶ないんですけど。」

「そうやろ、ラジオ終わってから、ちょっとインチキかなとは思たけど、ネットで調べたら、グランドのシーンとテッシーの部屋ってのはすぐわかってんな。「ムー 君の名は」で検索したら、新海監督のインタビュー記事があって、その中にラスト付近でテッシーのカバンの中に2秒ほど映ってるって書いてあってんけど、それが見つからへんねん。あとは、ネット上の噂やけどもう1か所。つまり、全部で4回出てくるみたいやねん。3回じっくり見て、もうセリフ全部覚えてしもたわってなもんやから、タロウさん、協力してんか?タロウさんもステッカー欲しいやろ。」

「そりゃそうですよ。こんなチャンス無いわ!っ思てました。それにしても、B氏、すごいですね。3回見たって。徹夜明けでテンション高すぎですよ。わかりました。来週木曜日までには、僕も見てみますわ。」

「おっしゃ、二人でステッカー絶対ゲットしょうな。じゃあ、さっきの彼の件と合わせてよろしゅーに!」


(B氏、えらい気使てくれてたな。あっ、アドレス来た。彼当てのメールの転送、ズームの招待状つけて、「初めまして、オカルトタロウです。B氏よりお話、うかがいました。今日の午後1時からいかがでしょうか?ご連絡お待ちしています。なにかあれば下記携帯までまずは連絡ください。よろしくお願いします。送信!まあ、今日一日退屈せんで済みそうやし。B氏、ありがとうございます。さて、午後の予定が埋まったことやし、ちょっと運動しよか。)

テレビを身ながら、ベットの横でスクワットを始めました。


午前中に今晩配信のコロナ日記の番組を昨日と同様の段取りで、昼と夜の弁当のカロリーがわかれば、後は送信するだけです。あと、昨晩の感動をどうしてもみんなに伝えたいと思い、オカやんの番組の感想の番組も一本作りました。B氏からの「君の名は」の宿題もあったので、コメントでヒントが拾えればとの気持ちもあり、「僕も「君の名は」の「ムー探し」チャレンジしまーす!」といやらしく入れておきました。こちらは昼前にはアップさせておきました。(うちのチャンネル登録者、オカやんリスナーとかなりの確率でかぶってるから、意外と早く答えにたどり着くかな?)


午後からは、B氏に紹介を受けた新人ユーチューバーとみっちり打ち合わせをしました。彼の熱心さに引きずられ、気が付くと午後7時を過ぎていました。すっかり冷めた弁当を食べ、コロナ日記をアップ。この夜は、C氏から電話がありました。けっこうな長電話に付き合ってくれました。マニア同士の話は、長くなりがちとは言え、いい年したおっさんたちが2時間も3時間も電話してるのを他人が見たら気持ち悪がられると思います。しかし、今の私には、みんが気を使ってくれているのがよくわかりました。もちろんB氏にもお礼の電話を入れましたが、出ませんでした。(徹夜明けで今日は早くに寝ちゃったのかな?)お礼と「君の名は」クイズの状況をラインで送っておきました。友達のありがたさを感じ、ベットに入りました。


4日目(2021年〇月11日)

朝起きて、いつものルーチンを済ませました。オカやんの番組の感想は、うちの登録者もたくさんの人がラジオを聞いていたようでなかなかの反応でした。コメント欄見てみると、みんな「2か所はすぐにわかったけどラスト付近のテッシーのカバンがわからない。タロウさん、助けてー!」とか「本当に4つもあるの?」とかいろいろありました。一番笑ったのは「テッシーの部屋、ムーの横にティッシュボックスあったけど、テッシー、ムーで何してんの?」のコメントでした。このコメントに対してSNSもお祭りになっていました。(早速、こっちも見なきゃ。)ちなみに3日間続けたコロナ日記の配信ですが、昨日の結果を見ると初日の半分の閲覧に落ちていました。(さすがに、提供される食事と暇つぶしの雑談ネタだけでは、視聴者の興味を引っ張れるはずも無いわなー。)24時間ホテルの部屋で男一人でいてネタが続くわけもなく、入所4日目になる〇月11日にはゴロゴロするだけになってしまいました。(まあ、こんな時の時間つぶしにはDVDやね。)とカバンを開けDVDのソフトケースを取り出しました。幸い「君の名は」も持ってきていました。が、ポータブルDVDプレーヤーがいくら探しても見つかりません。出がけのバタバタで入れるのを忘れてしまっていたようです。(あー、まいったなあ。後、21日までの11日間どうすんだよ。せっかく、このところ見れてなかったホラー物のDVDコレクションいっぱい持ってきたのに…。あー、アホやな、俺・・・。仕方ないわ、ネット配信申し込むか・・・。)

ネット配信アプリをダウンロードし、とりあえず1週間見放題プランに申し込みました。元々、映画が大好きだったので、タブレットの小さい画面には不満はありましたが、退屈からはようやく解放されました。


とりあえず、「君の名は」は、B氏が3回も見て見つからなかったのと同様に、みんな苦戦しているようなので、ヒントが拾えるまで待つこととして今日は、テーマを持って映画を見ようと思い、鈴木光司原作のリングの映画シリーズをはしごして見ていくことにしました。「リング」、「らせん」、「リング2」、「リング0バースディ」、「貞子」、「貞子3D」、「貞子3D2」で、最後にアメリカ版「ザ・リング」で締めました。さすがに15時間ぶっ通しで見ていると、頭の中は貞子でいっぱいでした。

寝入った後も、無意識の頭の中でずっと何者かが「リング」の話の構成、貞子の増殖システム等をまとめて整理していました。夢半分の状態だったのですが、はっきりと「これは使えるな・・・。」との言葉が妙に残っています。


5日目(2021年〇月12日)

入所5日目の〇月12日の朝は、昨日8本見た疲れもあり、いつものユーチューブチャンネルに「貞子リレー15時間耐久」とタイトルをつけ、感想や原作と映画のストーリーの違いや、作品間の矛盾点などをアップしました。チャンネル登録者から、「昨日はコロナ日誌無かったので病状がひどくなったのかと心配してました。」、「俺も、次の休みに耐久チャレンジします。」、「やっぱり、仲間由紀恵のリング0、泣けますよね〜。今からレンタル行ってきます。」、「俺も、1週間見放題申し込みます。」、「あと10日間、頑張ってください!」といったコメントが多数寄せられました。今回、笑えたコメントは、「7日目どこにいるのか」って話題でした。面白かったのは、「7日目に大型ビジョンのある場所にいた」シリーズでした。

「東京ドームで映画「貞子」の始球式中に7日目と迎えてしまい、センターのオーロラビジョンから現れる「巨大貞子」」をきっかけに、「大阪道頓堀のトンボりステーションの大型ビジョンから「巨大貞子」が現れ、グリコの看板の横でポーズをとる」、「秋葉原UDXビジョンから「4K巨大貞子」が現れ、お宅たち狂喜乱舞!」、「渋谷メインストリートで9人の「巨大貞子」同時出現!」と続き、最後は「日本最大!17.3m×24.3mのシブハチヒットビジョンからでてくる「超巨大貞子」と偶然出会ったしまう最終形態のゴジラ!映画の後半は「貞子VSゴジラ」になる!」まで大喜利状態でお祭りになっていました。また、「うち、貧乏なのでテレビがないからでてこれない「可哀そうな貞子」」、「ダイビング中に7日目を迎え、海の中で「溺れる貞子」」、「ガラケーでテレビ見てて現れた「プチ貞子」」、「「リング」見てるところに現れ、自分も呪いにかかってしまう「可哀そうな貞子」」等、なんでもござれの状態でした。楽しくいつもコメントくれる常連さんには返コメしてるうちに昼が来ました。

今日は、「着信アリ」、「着信アリ2」とハリウッド版の「ワン・ミス・コール(One Missed Call)」を見ようと思い、タブレットをセッティングすると、「リング」、「らせん」、「リング2」が本来寝ている間の時間帯に閲覧履歴として残っていました。(寝ぼけて、タブレット押しちゃってたのかな?まあ、見放題だからいいか・・・)と思い、「着信アリ」を見始めました。

「着信アリ」の原作者って、あの秋元康って知ってましたか?本当に多芸な人ですよね。ちなみに監督は大阪府八尾市出身の三池崇史。そうゼブラーマンの監督ですね。哀川翔50作目の映画で私の大好きな作品の一本です。カニ怪人とか謎のぷにゅぷにゅした宇宙生物とか、オカルトファンにはたまらない作品ですね。

夕食までに見終わって、「「着信アリ」日米対決!」といった番組をアップしました。今回も、レギュラーの視聴者から温かい励ましと感想、ご意見を多数いただきました。本当にファンはありがたいものです。夕食を食べ、シャワーを浴び、この日は早めにベットに入りました。

その日も眠りについた後、昨晩と同じようにずっと映画の構成や死亡につながるプロセス等を何者かが整理しているような夢が続きました。昨晩同様に「これも使えるな・・・。」との言葉が頭に残っていました。(明日は、映画の連ちゃんはやめよう。なんかノイローゼ気味かな?明日は、、、そう、明日はジョージ・A/・ロメロ監督の「ゾンビ」一本にして、後は「君の名は」とコメディかなんか軽い作品にしよう・・・・・・)


6日目(2021年〇月13日)

入所6日目になる〇月13日の朝を迎えました。朝食を終わり、タブレットをチェックすると、昨日同様に覚えのない2回目の閲覧履歴が残っていました。何がしら設定方法が間違えている可能性もあると思い、パソコンで配信会社のホームページの問い合わせページより、この2日間の状況と変な課金プログラムに繋がっていないことを確認してほしい旨を問い合わせました。

続いてパソコンで、ユーチューブの閲覧状況とコメント欄を確認しました。今日、一番の笑えるコメントは「うち、携帯無くて、家も昔ながらのダイヤル黒電話なので着信番号が表示されない」と「そもそも電話もってない」でした。今回も昨日の「貞子」並みに笑えるコメントが多かったです。普通のコメントより、ネタ的なコメントのほうが多かったかもしれません。その後、メールやSNSのチェックし、昨晩、見ようと決めていたホラー界の大御所!ジョージ・A・ロメロ監督の1978年版「ゾンビ」を見ました。

子供のころは怖くてよく見れなかったのですが、10数年ぶりにみた「ゾンビ」は、VFX全盛の今のCG加工されたゾンビ映画に比べるとブルーマンのような青塗りのゾンビはかわいさを感じるくらいでした。

今回は先手を打って「映画のショッピングセンターのシーンのように道頓堀がゾンビだらけになっても、大阪のおばちゃんは普通に買い物すんねやろなー。」、「天神橋商店街やったら、店のおばちゃんがゾンビに「ひとつ食べて行きやー」ってたこ焼き、売ったりするんかなあ?」なんてSNSでつぶやいてると、フォロワーも大いに乗ってきてくれて、楽しく過ごすことができました。

SNS上で残った最大の疑問点は、「本来ゾンビって墓場から蘇ってくる前提だと思うのですが、ショッピングセンターに現れたゾンビたちは、TシャツやポロシャツにGパンという生前の普段着ばかりです。みんな、普段着で埋葬されたのか?ゾンビにもおしゃれ感が残っていて、ショッピングセンターで着替えたのか?」なんて話題でした。

もちろん結論が出ることはなく、昼からは、いつも通り映画を見ながらやり取りしたSNSをネタに「もし、大阪の街にゾンビが現れたら!ゾンビVS大阪のおばちゃん!」とのユーチューブチャンネルをアップし、昼からは軽めの映画を2本ほど流して見ました。

2日間、覚えのない閲覧履歴があったので、今日はタブレットの電源を落とし、ベットから離れた場所に置いて寝ることにしました。

しかし、その日の晩も頭の中に謎の声は続き、最後には、「これだ!このやり方なら何の心配もない!」との声が頭の中に響きました。


7日目(2021年〇月14日)

入所してから1週間目となる〇月14日。前日も寝ている間、いくつもの声が頭の中で響いていた感覚から、なんとなく寝不足感がとれず、何となくぼーっとした感覚が続いています。

テレビをつけるとPCR検査を受けた日の朝にテレビで見た医者が映っていた。この1週間で変異株の罹患者が大阪では爆発的に若者の間で増殖し、重症化が止まらず、重症病床がひっ迫してきていることを強調していました。インドでも新たな新種株が発見され、世界に目を向けると数十の変異株が発声している見込みで、この先、それら新種株の感染者を拡大させる可能性が高いこと、新型の変異株の中には、新種ウイルス同士の融合モデルの可能性もあり得ること、予想だにしない融合モデルがこの先出てくるであろうことと次々と起こりうる最悪の事態を淡々と語っていました。

ふと、根拠のない不安感に襲われ、無意識にタブレットを取り出し、スイッチを入れました。「!!!」昨日までと同じように昨日の午前中に見た「ゾンビ」の再生履歴が、昨晩の夜半に記録されていました。「ゾンビ」以外の映画の再生履歴はありません。

あわてて、パソコンのメールボックスをチェックすると配信会社からのメールが届いていました。震える手で、そのメールを開封クリックすると、

「当社の調べでは、貴殿のパソコンないしタブレットからログインされ、ホテルのワイファイを通じてのみ配信されたことに間違いありません。第3者によるアドレス乗っ取りの可能性も考えられません。しかし、契約時の見放題プラン以上の課金はございませんのでご安心ください。念のため、視聴時以外は電源を切っておかれることをお勧めします。」とありました。

(????昨晩は間違いなく電源を落とし、ベットから手の届かないところにタブレットを置いて寝たはず。それにもかかわらず、再び、一昨日までと同じ状況?しかも勝手に再生されたのは「ゾンビ」のみ、それ以外の2本の映画は再生無し・・・。どういうことだ?)と考え込んでた中、ピロピロピロと突然携帯電話が鳴った。

「!」電話をとると、オカルト仲間であり、ユーチューブチャンネルの登録者であるA氏からの電話で

「タロウさん、コロナの調子はどうですか?みんな心配してますよ!」

「あぁ、監禁生活は大変やけど、なんとか元気にやってるよ。で、何?」

「いやぁ、タロウさんの後、B氏、C氏もコロナで突然陽性になっちゃって、暇してるみたいなんで、午後1時から、タロウさん空いてたら、ズームしませんか?ってお誘いです。タロウさんのとこの登録者も何人か参加しますし、オンラインですが、久しぶりにたくさんでワイワイやりませんか?」

「そりゃ、楽しそうやね!誰がホスト?」

「俺ですから、都合が合うなら、招待メール送りますよ!マイクとカメラはあるんでしょ?」

「そりゃ、商売道具だから持ってきてるよ。じゃあ、待ってるわー。」

「あいよーっ。メール送りますんでー。では、昼1時に!」プツッ、プープープー。

(ありがたいねー。今日は、退屈せんで済みそうやな。)

久しぶりの仲間たちとの会話を楽しみに、軽めの朝食をとり、カバンから焼酎のボトルを取り出し冷蔵庫に入れ、製氷皿に水を入れ、冷蔵庫の調整ノブを最強に回しました。


午後1時を迎え、招待されたズームにログイン。よく知ったメンバーが8人。ノートパソコンの画面に現れた。B氏とC氏は冷えピタをオデコに貼っていました。みんなから、私へのお見舞いの言葉をもらい、入所生活(監禁生活)について話しました。B氏、C氏は「俺、酒持って入んの忘れたー!タロウさん、細かいわー!」、「〇〇ホテルにいるんで、退所したらこっそり差し入れて下さいよー!」と嘆いていました。

話は、11日から13日の私のユーチューブの話へとび、参加メンバーみんなで、貞子、着信アリ、ゾンビに関する裏ネタや公表されていない設定など、マニアックな話で盛り上がりました。

A氏は、極端なホラー映画マニアですべて何回も見てるので見るまでもないとのこと。ここ数日の私のチャンネルは全て見てくれていました。B氏、C氏は12日の私のユーチューブ見て、13日にネットで「着信アリ」を、D氏は「リング」シリーズ全編、「着信アリ」全編をDVDで、E氏は私と同様に、3日にわたり同じ内容で15時間かけてDVDで鑑賞、F氏はネットで「リング」、「着信アリ」、「ゾンビ」を見たとのことでした。

みんな、私のチャンネルを見て、どうにも見たくなってしまい、即見たとのことでした。そういった、反応は番組作成側としては非常にうれしいと素直にみんなに感謝の言葉を言葉を述べました。G氏はあわてて、

「今から私もネットで見ますから、来週もう一回集まりましょうよ。仲間外れは嫌ですよ!」と話に割って入ってきた。A氏が

「そうですね、B氏、C氏も退屈するでしょうから、また企画しますね。皆さんもその時は参加してくださいね!」と中締めに入ろうとすると、B氏が

「作り話やなしに聞いて欲しいんやけど、12日にタロウさんの番組見て、13日に「着信アリ」の1,2見たんやけど、見終わったときに偶然電話がかかってきて、なんと!着信番号が、俺なのよ!履歴日付は18日やし、リアル「着信アリ」?ってびびったわ。音はよう聞こえんかったな。無音に近かったから、無言電話かイタ電やと思ってきったんやけどな。で次の日コロナ陽性やん。このまま、18日に俺死んだら、タロウさん、ネタにしてな!」

「またまたまた〜。盛り上げようと思って!そんなことあるかいな。俺も「着信アリ」も「貞子」もDVD見たけど、俺んとこには電話なかったで。」とD氏。

「うちも全部DVD持ってたから、タロウさんと同じパターンで全部見たけど、何もないよ。」とE氏。するとC氏が

「あ、今、俺のスマホの着信見たら、昨日、俺の番号で着信入ってたわ。知らん番号やと思ってたから留守電も聞かんと消してしもうてたけど。あれ?着信日付17日や!?」

「俺、今スマホでログインしてるから、また後で見るわ。」とF氏。

「まあ、ホラー好きのメンバーですから、何があってもおかしくないですね。何か面白いネタがありましたら、みんなで共有しましょう!じゃあ、また次の予定決まったら連絡しますね!タロウさん、B氏、C氏お大事に〜!」とA氏が締めて、ズーム会合は終わりました。

久しぶりの楽しいひと時を仲間と過ごし、大きな声で笑いストレスも解消され、久しぶりに変な夢を見ることもなくゆっくりと眠ることができました。


8日目(2021年〇月15日)

入所生活も8日目。15日の朝を迎えました。気になっていた、タブレットの閲覧履歴を念のため確認しましたが、今日は何も無く、安心しました。

歯を磨きながら、昨日のズーム会合でみんなから聞いた映画の裏ネタを思い出し、その時のメモをチェックし、今日は「リング」、「らせん」と「着信アリ」の1作目と「ゾンビ」を改めてチェックしようと決めました。

マニア8人の知識が集まっての裏ネタをベースに見た作品は、それまでの見方と違い、別角度から見れて、今まで以上に楽しく鑑賞できました。

また、B氏からの宿題の、「オカやんのミッドナイトラジオジョッキー」の「君の名は」のプレゼントクイズの「月刊ムー」の4ヶ所の登場シーンもユーチューブ難組のコメントとSNSの情報から、高い確率で正解に近づいていました。明日、自分自身、「君の名は」を見て、確認しようと思っていました。

夜はA氏に昨日のお礼の電話を入れ、そのまま2人で電話を介して飲みながら楽しく盛り上がりました。

「ちなみに、昨日は、みんなタロウさんの元気そうな顔見て喜んでたで!みんな、結構心配してたんで。メンバーみんな、タロウさんと会ってから運気上昇!ってよく話するんよ!俺もタロウさんとあってから、売り上げ上昇!B氏は何の根拠もないけどタロウさんとゴルフ行ってからすごくスコア上がったって言ってたし。」

「いやあ、B氏に何をアドバイスしたとかじゃ全然ないですよ!」

「G氏なんかは、結婚して10年以上、子供出来へんかったんが、タロウさんが家に遊びに来て、嫁も含めてめちゃくちゃ盛り上がって、その日の晩に絶対子供出来たんや〜!って言うてたし。」

「それこそ、何もないですよ!下ネタで盛り上がっただけで、G氏と奥さんがその晩にやっちゃったてだけでしょ!」

「D氏も趣味のマラソン記録が伸びたって言ってたし、F氏はタロウさんと飲んだ日はいくら飲んでも二日酔いせえへんって!飲みたいだけの言い訳っぽいけどな!」

「そりゃ、それこそ全く関係ナッシングですよ!堪忍してください。」

「まあ、みんな何がしら、タロウさんと会っていいことあった。そして、みんなタロウさんのことが好きってことやな。」

「そんな、褒めてもなんも出ないですよ!照れくさいやないですか。」

そんな感じで、約2時間A氏と話をし、シャワーを浴びて、ベットに横になりました。久しぶりにぐっすりと眠ることができました。


9日目(2021年〇月16日)

16日、入所生活9日目。昨晩はゆっくり寝れたためか、入所以降最高の気分で目が覚めました。窓から入る光は優しく、良い天気のようです。昨日と同様に、朝一番にタブレットの閲覧履歴を確認しました。昨日、自分で見た4作品だけが記録されていて、不審な記録は無くほっとしました。

枕もとのスマホに目をやると、画面上部のインジケーターが点滅していました。(ラインかメールでも来てるのかな。)とスマホをチェックしました。電源スイッチを軽く押し、画面を指でなぞると、新着メール通知2件、ニュースレターバックアップ完了通知、着信通知1件、留守電通知1件、ライン通知4件・・・。

(音消してたから、寝てる間にいろいろ来てるな、まあ、ラインからチェックするか。)ラインは昨晩話したAさんからのおやすみスタンプとGさんからの「早速、「ゾンビ」と「リング」見ましたよ!皆さんと話した後だったので面白かったです!ありがとうございました。ちなみに、「着信アリ」は偶然、先月見たところだったのでまたの機会に見てみま〜す。あと5日頑張ってくださいね!」とのメッセージと「がんばれ」のスタンプ。もう一通は企業広告。メールはDMばかりでした。次に着信履歴をチェックしました。

最新の着信履歴は、(!!!!)〇月22日午後1時33分!今日は〇月16日です。先付け日付!着信元は、電話帳登録の名前ではなく、11桁の番号が表示されていました。なんとなく、見覚えのある番号・・・。(あっ、俺の携帯番号や!)

手がぶるぶると震え、冷や汗が背中を伝いました。(こ、これは・・・。B氏、C氏が言ってた・・・。すぐ、確認しよう。)

震える指で、スマホのアドレス帳を開きB氏に電話しました。8回のコールの後留守番電はに切り替わりました。

「朝早くにすいません。タロウです。お手すきの時にお電話ください。よろしくお願いします。」とメッセージを残しました。(早い時間だから、まだ寝てるかな。C氏にもかけておこう)とC氏にも電話しましたが、こちらも留守番電話でした。同様にメッセージを残し、念のため、ラインにも折り返し電話くださいという旨送っておきました。

不安感が止まりませんでした。身体は震え、心臓は今まで経験したことのないバクバク感が止まりません。恐る恐る、留守番電話にかけました。

「お預かりしているメッセージは1件です。再生する場合は「1」を。(1をプッシュ)お預かりしているメッセージ、1件目昨日の午後1時33分、(ピコーン、ピコーン継続するという電子音)・・・貴様の特殊体質を恨むんだな・・・貴様のおかげで日本は・・・(ガタガタガタと物が暴れる音)・・・最後に日本の為に礎となれ、貴様の・・・・無駄にはしないよ。じゃあな・・・・・・・・プツッ。メッセージは以上です。メッセージをもう一度聞くには「1」を、保存するには、、。

(何じゃこれは!?とりあえず、よく聞き取れなかったのでもう一度)と震える指で数字キーボード呼び出しボタンをタッチし、数字キーボードを呼び出しました。「1」をタッチするつもりが、うっかり「7」をタッチしてしまいました。(しまった!)

「メッセージを消去しました。メッセージは以上です。」留守番電話の無情な声にその場にへたり込んでしまいました。頭の中がぐるぐるまわり、全く考えがまとまりませんでした。不安感だけが私の中でどんどん膨張していきます。(留守電内容を思い出さなきゃ。)「なにやら電子音」、「特殊体質を恨む」、「貴様のおかげで日本は」、「がたがた音」、「礎となれ」、「無駄にしないよ」、「じゃあな」とメモ紙にぐちゃぐちゃの字で書きなぐりました。

ベットに仰向けになりメモを片手に、その後も何度も留守番電話サービスにかけましたが、「メッセージは0件です」のメッセージが繰り返されるだけでした。突然ドアがノックされました。ビクッと飛び起きると「昼食、ドアの前に置いてきます。」と昼食のデリバリー案内の声でした。何もできないまま昼を迎えていました。改めて、B氏、C氏に電話しましたが、繋がらないままです。ラインの既読も付きませんでした。(まあ、二人とも仕事があるし、オンライン作業中かも・・・。また、夜にかけてみるか・・・。)


夜になり、改めてB氏、C氏に電話しましたが繋がらないままでした。B氏からはラインで「熱が高く、しんどいので落ち着いたら電話します。すいません。」とメッセージが来ていました。「お大事に。落ち着いたら連絡ください。」とメッセージを送りましたが、既読が付くことはありませんでした。結局、何もできないまま不安な夜を迎え、いつも楽しみにしている「オカやんのミッドナイトラジオジョッキー」のクイズの回答メールも、ラジオの録音セットも、午前2時25分のアラームセットも忘れたまま、ベットに入り、明かりを落としました。


10日目(2021年〇月17日)

入所10日目、〇月17日の朝を迎えました。いつものルーチンでスマホとパソコンをチェックしましたが、特段の連絡事項はありませんでした。テレビをつけるとどのチャンネルもコロナのニュースばかりです。大阪の感染者、死亡者が曜日別の過去最高を更新し続けていることと、若年者の重傷者が増えている旨が繰り返し流され続けています。見ていると、憂鬱になるだけなのでテレビは切りました。

何もする気が起こらず、今日もベットの上で昨日のメモを片手にメモと天井だけを見てるだけで時間が過ぎていきました。

夜8時過ぎ、D氏より電話がありました。

「C氏、今日亡くなったで。療養先のホテルで。昨日から様態が急変したんやけど、病院の受け入れ先がなかなか見つからんかったみたいで。さっき、弟さんから連絡あったわ。このご時世やから、葬式はやれへんみたいやけど、日頃おつきあいあった人には、伝えて欲しいって言われたから・・・。」

「えっ、ほんまですか?3日前は、コロナ陽性言うても元気やったやないですか。そんな・・・。」

「それが、新型コロナってやつやろ。タロウさんの体調は落ち着いてんの?何か変調感じたら、すぐ119番するんやで。」

「あぁ、ありがとう。身体は問題ないねんけど・・。D氏、3日前ズームミーティングの最後にB氏とC氏、「着信アリ」みたいな先付けの着信あったって言うてたやん。C氏17日付けやったって言うてたやん。俺も昨日あったんや。変な声も聞こえて。」

「タロウさん、C氏死んだんや。そんなネタ不謹慎やで。映画やないねんから、呪いの電話なんかあるかいな。あの時は、C氏も、B氏が盛り上げるから、悪乗りしただけやろう。俺も、E氏も電話なんか無かったし、F氏もG氏もそんな話なかったがな。なんでもネタにすんのは、ユーチューバーの悪い癖やぞ。」

「・・・・」

「他にも連絡せなあかんとこあるから、じゃあな。」プツッ。プープープー。

(俺んとこの電話はネタなんかやない。とりあえずB氏に連絡や。)

B氏に電話しましたが、留守番電話に切り替わるだけで、繋がることがありませんでした。ノートパソコンを開き、「着信アリ リアル」、「呪いの電話」、「死亡 予告電話」等、検索しましたが、古い日付の、怪しい都市伝説や、映画の感想サイト等にしかつながりませんでした。不安を大きく抱えたまま、眠れぬ夜を過ごしました。


11日目(2021年〇月18日)

〇月18日、入所11日目。本来であれば、残り4日で幾分気も楽になっているであろう時期だったのでしょうが、昨夜のC氏が亡くなった連絡と、B氏と未だ連絡がつかないことが私を不安に突き落としていました。

(俺の着信は、22日午後1時33分やったな。今のまま行けば、ここを出た後や。C氏とB氏は、コロナ陽性で入所したのが13日やったはずやな。昨日でC氏は入所4日目やったから、ニュースでいう新種株の若者の重症化、死亡リスクの拡大傾向にあてはまる。俺の場合は、発熱も初日だけで、もう10日間は体調的には問題無いから、コロナに対する抗体はできつつあるはずや・・・。しかし・・・情報が少なすぎる。B氏、早く連絡くれ。)念のためB氏に電話しましたが、留守番電話に切り替わるだけでした。ラインも最後のメッセージに既読はついていないままです。

SNSには、「オカルトタロウさん、最近更新無いですが、コロナ大丈夫ですか?」とか「新番組、アップ無くてさみしいです。新作待ってますよ。」と言ったコメントがあがってきていましたが、どうもその気になりませんでした。昨日、D氏にC氏が亡くなったところなので不謹慎なことをするなといさめられたことも心に重くのしかかっていました。


午後の3時過ぎに携帯電話がなりました。びくっとして恐る恐るスマホを手に取ると、A氏からの電話でした。

「はい、もしもし。」

「タロウさんか?B氏、亡くなったぞ。」

「えっ!?C氏の話じゃなくて?」

「あぁ、C氏の話は昨日D氏から聞いてる。今日はB氏や。朝、ホテルが食事持って行っても受け取ってなくて、昼食も残って無かったんで、保健所が見に言ったらベットの中で亡くなっていたそうや。B氏のスマホ、最後に俺の着信があったからって警察から身元確認とB氏の家族の連絡先の問い合わせがあったんや。」

「・・・・。」

「おい、タロウさん、聞いてるか?」

「(震える声で)は、はい。A氏、今少し話せますか?」

「あぁ、かまわへんけど。どうしたんや、声ビビってんで。」

「15日にA氏と電話でようけ話したやないですか。あの後、俺にも電話あったんですよ・・・。」

「何の?」

「B氏、C氏が14日に言ってた、先付けの日付の着信電話が。A氏と話して、寝るのにバイブにしてたんで気づいたのは16日やったんですけど。留守電に怪しいメッセージ残ってて。」

「どんな内容やったんや?」

「ちょっと待ってください。(留守電内容を記したメモを取り出して)なんかピコーンピコーンって電子音鳴ってて男の声で「特殊体質を恨む」、「貴様のおかげで日本は」って途切れ途切れに聞こえて、何かがたがた音して、また男の声で「礎となれ」、「無駄にしないよ」、「じゃあな」って。音声すごく悪くて・・・。着信日付は22日の午後1時33分やって・・・。後4日やないですか。B氏、C氏も先付け着信あったって言うてたし。俺、不安で不安で・・・。」

「うーん、何とも言いようない状況やなあ。メッセージもようわからんし。メッセージ残ってんねやったら、音声データ、送ってーなー。」

「いやぁ、それが、うっかり俺のミスで消しちゃって、着信履歴以外残ってないんすよ。」

「うーん、ますますどうしようもないなぁ。とりあえず、他のみんなにも情報集めてみるわ。とりあえず、B氏の家族、遠方やからすぐには来られへんから、俺が警察行かなあかんし。何かわかったらまた連絡入れるわ。ただの偶然かもしれんし、あんまりタロウさん考え込んだらあかんで!」じゃあ。」

「ありがとう、連絡待ってるわ。」

(いったいどないなってんねや。とりあえず状況をまとめていくか)と思い、自分も含めて8人の状況と時系列を紙にまとめていきました。結局、その日は、A氏からの連絡はありませんでした。


12日目(2021年〇月19日)

入所12日目の19日。朝一番にホテル部屋の固定電話が鳴りました。午前中に保健所の人が退所に向けたPCR検査と検温と問診に来るということでした。

ニュースをかけると、昨日の大阪のコロナ感染状況が伝えられていました。(一昨日の死亡者にはC氏、昨日の死亡者にはB氏が入っているかと思うと涙が溢れてきました。(俺も死んでしまうんやろうか・・・。)

くらくらした頭で、いつものルーチンをこなしていきました。タブレットは、昨日は使っていないので閲覧記録は無し、SNSは前日と同じように、チャンネル登録者や知り合いからのお見舞いと励ましのメッセージ。電話はB氏にかけたものと保健所からの定期連絡の着信とA氏からの着信だけでした。


10時前、携帯がなりました。画面を見るとA氏からでした。

「もしもし、タロウさん?」

「はい、お疲れ様です。何かわかりましたか?」

「えー、何から言ったらいいのかな。まずは、14日の参加者の状況やけど、B氏、C氏は残念ながら、知っての通り。D氏、E氏は全然元気。まあ、ここまでは良しとして・・・。」

「じゃあ、F氏とG氏は、何か・・・。」

「あぁ、落ち着いて聞いてや。F氏は13日中に例の着信と留守電が残ってたそうで、今、コロナ陽性で入院中。留守電は何やら騒がしい環境で「がんばれ!がんばれ!って複数の男女の声が入っていて、後は何やら専門用語っぽいものが入ってたってことやった。ズームミーティング中も熱っぽかったらしくて、終わったとたんに急にしんどくなって、立ってられへんくらいで嫁さんが119番して救急車で市民病院に運ばれたらしいわ。今も、しゃべられへんぐらいしんどいみたいでラインでのやり取りやから、これぐらいしかわからへんけどな。」

「えー、F氏もコロナなってしもてたんか。これで俺入れて4人目やなぁ。ところでG氏は?」

「G氏もコロナで15日からタロウさんと同じでホテル入所やて。ミーティングの後、先月に「着信アリ」は見てたから、「リング」と「ゾンビ」見て、15日に熱出て、朝一、保健所行ってそのまま、入所やて。声は元気そうやったけどな。例の電話は無かった言うてたで。何やったら、電話したったら?暇してはったから。」

「そう、ありがとう。結局、5人がコロナになったって偶然なんかな・・・。」

「そりゃ、偶然やろ。大阪はコロナの新型流行ってるみたいやからな。みんなで直接会って飲み会でもしたってなら、タロウさんからみんなにうつったとも考えられるけど、リモートやからなぁ。その線はないやろう。まあ、タロウさんも後2日やん。がんばって!じゃあ。」プツッ、プープープー。

(8人中5人がコロナ、4人が先付けの着信があって、2人死んで、1人重症、2人軽症・・・何か共通点があるのか、全くの偶然か・・・。まるで「リング」の1作目の謎解きみたいじゃないか。)F氏、G氏の状況を昨晩作った8人の時系列と状況表に書き加えてみたが、何も見えてきませんでした。


コンコンコン。突然のドアノックに(もう昼飯か?)と思うと、ドアの向こうから「大阪市保健所です。よろしいですか?」との声がかかった。(あぁ、そういや、退所に向けてのPCR検査が来るって聞いてたな。)

「はいー、すぐ開けます。」

鍵を開けると、ブルーの不織布のつなぎに、綿帽子、大きなマスクにフェイスシールドの大柄な男が大きな手提げかばんを持って立っていました。

「お邪魔しますね。」と部屋に入ってきました。ベット、机、テレビラックをぐるりと見渡し、「長い期間お疲れ様です。検温、問診とPCR検査させていただきます。」とカバンから、非接触の赤外放射体温計とバインダーを取り出し、職員は部屋の椅子に、私はベットに腰掛け検温、問診、PCR検査を受けました。

「明後日の朝一には、退所の可否がはっきりしますので、午前中には連絡させていただきます。」と事務的に話されました。続いて「何か質問はございますか?」と検査キットをカバンにしまいながら聞かれました。

「あのう、ニュースでもやってますが、大阪では、私くらいの年齢の患者、そんなに増えてるんですか?」

「えぇ、先週ぐらいから非常に増えています。感染経路もわからず、重傷者も多いので、病院にも入れない人が出てきて大変な状況です。何か、気になることでもおありですか?」

「ここ、6日の間に、知り合いが4人コロナにかかり、2人亡くなり、1人入院になったもので・・・。いくらコロナが爆発的に増えてるって言っても、14日に8人でズームミーティングした仲間で、私も含めると5人がコロナにかかるって、そんなことあるのかなって。」

「もう少し、詳しく聞かせていただけますか?」

「はい、コロナと直接関係ないこともありますが・・・。」と私の自己紹介から8日からの経過を話していきました。その中で、映画「着信アリ」のような先付け日付の本人番号からの着信があったこと、その通信内容、ネット配信で3日にわたり、覚えのない配信履歴があったこと、私以外の7人の状況まで話ました。

「うーん、確かに何やら謎めいたところがありますね。よろしかったら、ネット配信会社と申し込みID教えてもらえますか?あと、お友達の7人の名前とわかる範囲で連絡先や住所なども。」

(そこまで保健所が絡むことってあんのか?)

「保健所さんが何でそこまで?」

「実は、大きな声では言えませんが、あなたの周りで起こっていることに似たことが他でも・・・。」

「あるんですか!?」

「はい。保健所の業務からは外れますが、私の個人的な知り合いが、この件調べに入ってますので、何かわかれば、個人的にご連絡をすることもできます。ただし、保健所にはこの件は絶対に内緒にしてもらえるという約束が前提です。もちろん、あなたの仕事であるユーチューブへの公開もダメです。あなた個人として、留めていただけるのであれば、お互い情報は多いに越したことはないでしょうから、協力させていただきます。」

(・・・。ユーチューブのネタにできないのは痛いが、ここにいてもネット以外に情報はとれないし、とにかく、俺の電話にかかってきた22日付けの着信日までに時間がない・・・。この際、仕方ない。)

「わかりました。お互い協力しましょう。」

「では、しばらくお待ちください。(保健所の男は、自分のスマホでどこやらにメールかラインを送って、入口のドアから廊下を見渡し、鍵をかけ戻ってきた。)すいませんが、あなたの通信機器、デジタル機器の電源をいったん切らせていただきます。よろしいですね?」

「はい。(スマホ、ノートパソコン、タブレットを男の目の前で電源を落としていく)これで、いいですか?」

「はい、大丈夫です。では、これから話すことは、一切、他言無用でお願いします。状況によっては、あなただけでなく、お友達やたくさんの方に迷惑がかかる可能性がありますのでくれぐれもお願いします。」

男は、小さな声で、現在、全国で起こっている不思議な状況を話してくれました。

若い男性を中心に、同様の感染事例、死亡事例が公表以外で発生していること。

それは、11日以降で発生していること。

日に日に拡大していること。

それ以外にも何点か、テレビで語られることのないことを知ることになりました。

「あなたの思うこと、結論は出ていなくても結構です。あなたが考えていることも教えてください。」

「今の時点での、私の仲間8人の状況と時系列をまとめたものでいいですか?」

「はい、一度見せてもらえますか?(私から、まとめたメモや時系列表を真剣な面持ちで5分ほど読み込む男。)これ、写しもらってよろしいですか?あと、お友達の連絡先等も併せていただけますか?」

私が頷くと、携帯でメモ等の写真を撮り始めました。私は、私も含めた8人の知り得る情報をメモし、男に渡しました。男は、一通り目で追い4つ折りにしてカバンにしまいました。

「はい、では、何か新しい情報がありましたら、連絡しますので。私の個人携帯ですが今から一度あなたにコールしますので保存しておいてください。この番号は、お友達や家族であっても教えないようにしておいてください。私も公務員の一人なので、業務以外のことをやっているとなると問題ありますのでお願いします。」

私は、頷き、答えました。

「よろしく願いします。」

「ところで、最後につかぬことをお伺いしますが、あなた、今までに超能力テストなど受けたことはありますか?」

「ん?何ですか?いったい?」

「いや、関係ありません。忘れてください。では、失礼します。」

と男はお辞儀をして、部屋を出ていきました。

(何か、ヒントになるものに繋がればいいんやけど・・・)


昼食を食べ、G氏に電話をかけて見ました。2回のコールで繋がり、思いのほか元気な声で

「おう、タロウさんかいな。どないや?そっちは。退屈なもんやな〜。まだ半分やけどって言うてたら、亡くなったB氏、C氏や入院してるF氏に申し訳ないけどなぁ。電話くれてうれしいわ〜。ちなみにA氏から聞いたけど、タロウさんとこへんな電話あったんやて?大事無いんか?A氏にも言ったけど、わしんとこには電話かかってけーへんかったからなぁ。」

と一気にまくしたてられた。

「元気そうで何よりで。今のところ大丈夫ですよ。今日、退所前のPCRやってもらったとこですわ。G氏のとこは、例の電話は無かったんですねぇ。」

「電話は全くナッシングや!タロウさんはあと2日で、お役御免で解放やもんねぇ。うらやましいこっちゃ。みんな元気に戻ったら、B氏、C氏の偲ぶ会みんなでやったろな!まずはコロコロの野郎が収まらなあかんけどな。いったいいつになるこっちゃらやけどな。」

「そうですね、楽しみにおいておきましょう。じゃあ、明日いっぱいは、私も監禁の身ですから、暇なら連絡ください。では、また。」

と電話を切りました。(G氏については、大丈夫そうやな。元気そうで安心したなぁ。)

その日は、早めに夕食と風呂を済まし、ベットに潜り込みました。


13日目(2021年〇月20日)

20日、入所13日目を迎えました。ようやく、明日退所できるであろうことの期待と、22日の着信の件が全く解決していないことに不安を覚えながら、朝のルーチンを済ませ、SNSに「うまくいけば、明日の退所になります。皆さんにご心配おかけしました。明日、吉報がお届けできるように!」と当たり障りのない事を書き込み、身の回りの片付けに入りました。9時ごろにG氏から「急に入院することになりました。体調が悪くなったわけではありませんので気にしないでください。落ち着いたら、連絡します。」との文書と「お願いします」のスタンプが来ました。急ぎ、何回か電話をしたのですが、「電源オフか圏外です」のコールが繰り返されるだけでした。

(病院にうまく空きができたのかな?C氏の件もあるから、病院のほうが安心かな。)いつものルーチンをこなし、ネットで、昨日保健所の男から聞いたことが何かアップされていないか調べましたが、これといった情報にヒットすることはありませんでした。


片付けも終わり、落ち着いたのでA氏にG氏からのラインの件を伝えておこうと思い、電話をかけました。

「もしもし、おはようございます。タロウです。」

「おお、おはようさん!体調はどない?明日出れそうでっか?」

「えぇ、体調は問題ないんで、昨日のPCRの結果待ちですわ。」

「そっかー、長かったなー。お疲れさん。あと一日頑張ってくださいな!」

「ところで、9時頃にG氏から、急に入院することになったってライン来たんですけど、その後、連絡がつかなくなって。昨日、G氏とは話して、その時は元気一杯やったんですけどねぇ。A氏の方にはなんか連絡ありました?」

「あー、うちもラインだけ。その後、ラインは既読になってへんなぁ。まあ、転院でバタバタしてんねやろ。それより、F氏が行方不明なんよ。昨日、市民病院に救急車で運ばれたはずなんやけど、奥さんが着替えとか持っていったら、救急車で運び込まれた記録がないって。そんな事ありえへんわなぁ。もし、F氏から連絡あったら、真っ先に奥さんに連絡入れるよう言っておいたってな。」

「はぁ、なんか腑に落ちない話やなぁ・・・。」

「ごめん、客来てもうた。またなんかあったら連絡するわ。じゃあ。」

と電話を切られ、昨日の保健所の男との会話を思い出した。

(「はい、大丈夫です。では、これから話すことは、一切、他言無用でお願いします。状況によっては、あなただけでなく、お友達やたくさんの方に迷惑がかかる可能性がありますのでくれぐれもお願いします。」って言うてたなぁ。特段、昨日のG氏との話で秘密をばらしたことはないし・・・。でも、友達やたくさんの人に迷惑がかかる可能性があるってどういう状況やのかなぁ。)


コンコンコン、ドアのノック音が聞こえた。(昨日の保健所の男のノックの仕方に似てる!?)と思ったが、違う声で、「昼食、ドアの前に置いておきますー。」とのことだった。(もう昼か)ドアを開け、弁当を取り入れ食べ始めると、急に強烈な眠気が襲ってきました。(なんや、これ・・・。昨晩は、まだ、しっかり寝れたほうやのに・・・・。)その日のその後の記憶は残っていません。


14日目(2021年〇月21日)

21日。入所から14日目。(頭が重い・・・。発熱系の重さではない・・・・。昨日何があった?思い出せない・・・。何があった?確かG氏からラインが来て・・。その後、今日の出所に備えて、片づけをして・・・。A氏と電話をして・・。F氏が行方不明と聞いて・・・。昼の弁当を食べて、急に睡魔に襲われて・・・。そのから、何やら人の気配と、ベットの周りでがやがやした感じが続いて・・・痛っ、頭が痛む・・・思い出せない。いったい何があったんだ・・・。)うっすらと目が開き、真っ暗だった視界に明るさが徐々に広がっていきました。この2週間過ごした、ホテルの一室。見慣れた景色・・・。いや、何かが違うと感じました。よれよれと冷蔵庫に行き、ミネラルウォーターのペットボトルを開け一気に飲み干しました。徐々に意識がはっきりとしてきました。ベットの横に旅行カバン。テレビ台の上にノートパソコンとタブレット。枕もとの充電器にスマホ。テーブルの横のごみ箱に弁当の空き箱。2週間、見慣れた光景だが、何かが違うと感じた違和感が続きました。

とりあえず、スマホのスイッチを入れると午前6時17分。テレビをつけ、いつものルーチンに入りました。ルーチンが進むにつれて、違和感は、益々大きくなっていきました。パソコンはいつもかけている曜日代わりのパスワードが更新されていませんでした。タブレットは、ホーム画面に戻っていない状態でスリープモードになっていました。スマホは、めったに画面を拭いたり、磨いたりせず、いつも手あかと汚れで曇っていたものが、今日は徹底的に磨いたようにぴかぴかでした。また、昨日の昼以降に入っていた留守番電話は、聞いた覚えがありませんでしたが、全て再生済みになっていました。いつも、必ず一言はメッセージを残す、着信履歴に残っていたA氏からの2回の電話はメッセージはありませんでした。カバン内の衣服はいつもは、がさつに向きなど考えずに放りこんで無理やり閉めているのが、今日は中身が整理されていて余裕がありました。

(いったい何があったんだ?何者かが、この部屋で何かをしていたのは間違い無さそうだが・・・。)

受け取った覚えはありませんが、テーブルの上の夕食と一緒に配られる朝食のサンドイッチと紙パックの野菜ジュースを開け、口にしました。

早い時間で申し訳ないと思いながら、A氏、G氏に電話をしましたが、どちらも留守番電話につながるだけでした。(まあ、まだ7時前やし、もうちょっとしたらかけてみるか。)今日で解放されるであろう状況から、冷蔵庫に残していた最後の缶ビールを開け、喉に流し込みました。はたと、夢だったのか現実だったのかわからない記憶で、3人のダークグレーのスーツにサングラスの男たちが部屋でいろいろと私の荷物を物色している光景が頭に浮かびました。(!!確か、スマホが鳴って目を覚ました時に、何か見たような気が・・・着メロはA氏からのもの・・・。首の後ろにチクッとするような鋭い痛みが・・・うーん、それ以上思い出せない・・・。)

重い頭でいろいろと考えたのですが、大事なことは何一つ思い出すことはできませんでした。


気が付くと8時50分でした。改めて、A氏、G氏に電話を掛けましたが、結果は同じでした。一応、留守番電話に、「聞いたら折り返しください。」とメッセージを残しておきました。そうこう、するうちに午前9時を迎え、部屋の電話がなりました。

「大阪保健所です。昨日のPCR検査の結果が陰性と出ましたので、本日退所になります。ホテル1階ロビーに到着していますので、今から、手続きに寄らせていただいてよろしいでしょうか?」

「ご苦労様です、いつでも結構です。よろしくお願いします。」

(陰性で良かった。ようやくこの監禁生活から解放だな。みんなに心配かけてきたし、早速知らせなきゃ。)とSNSのページを開きました。先に目に入ったのは、「昨晩から「ゾンビ」見れませ〜ん(泣)」、「どこのネット配信も「ゾンビ」開店休業です。」、「リングも見れなくなってます(泣)」、「「着信アリ」もアウトでーす!」との書き込みが目に入りました。(ん?何かトラブってんのかな・・・?いやいや、まずは、みんなに対処を伝える近況報告と応援へのお礼コメントだな。と入力を始めると)コンコンコンとノック音と同時に「大阪保健所です。」との声がかかりました。スマホをベットの上に置き、ドアを開けた時、目の前にいたのは、ダークグレーのスーツにサングラスの男3人組でした。

(なんだ、こいつら!昨日の夜に夢に出た3人組か?やばいぞ!)と思う間もなく、口をふさがれ、羽交い絞めにされて、部屋の奥のベットに押し倒されました。あまりの恐怖感に必死に暴れて、一人の男の顔に私のの左手が当たり、男のサングラスが吹き飛びました。そこに見えた顔は(保健所の男!)と思った瞬間、「とりあえず眠らせろ!」と別の男の声と昨日感じたと思う首筋にチクリとする感覚。薄れる意識の中、「スマホはどうだ!?」、「まだ、送信はしていないようです。」、「よし、削除しろ!」、「急げ、連れ出すぞ!」との3人の男の声が徐々に小さくなっていきました。


(両手、両足を縛られる感覚・・・。さるぐつわをかまされる窮屈な感覚・・・、頭から大きな袋をかけられ視界が真っ暗になる感覚・・・、ガタガタと台車(?)のようなもので移動する感覚・・・、車で発進、停止、右左折を繰り返す感覚…うっすらとしかない、とぎれとぎれの意識、寝たり覚めたり、いや、覚めかけて、覚めきらないあやふやな・・・)再び深い闇の底に落ちていく感覚があり、私の意識は沼の奥底に沈んでいくような気がしました。


15日目(2021年〇月22日)

22日(?私の記憶に明確な日時の意識はありませんでしたので推測です)。極度の2日酔いのような頭痛、もうろうとする意識で目が覚めました。左腕内側に感じる鈍痛と内出血の跡が目に入りました。薄暗い部屋で視界に入るものは、私に背を向けてパソコンらしきものに入力を繰り返す白衣の男の背中とうっすらと漏れるモニターの明かり(?)とテレビモニターに映る固定画像のなか、カメラを背にする白衣とカメラに向かいぼそぼそと話すパイプ椅子に座りうつろな表情で話しているのは私自身のようです・・・。会話の内容は、音声が小さく良く聞き取ることはできません。どうやら私自身はベットに仰向けに寝ているようです。左を向くとパイプ椅子が一つありました。先ほど視界に入ったモニターで私らしき人物が座っていたであろう、普通のどこにでもあるパイプ椅子でした。

携帯電話のコール音のような電子音が部屋に響きました。私の寝ているベットに背を向けて座っていた男が電話をとりました。私は、身体がしびれて動けませんでした。


「はい、調書は取り終わりました。主任の言う仮説にほぼ近い証言を得ることができました。自白剤の影響でマルタイは眠っています。PSI検査のほうも主任の予想通り該当しているようです。やはり、「アンプリファイア体質」のようです。3回の実証実験では、全て「有効」の結果でした。はい、「アナログ」の「デジタル」もです。「デジタル」と「アナログ」の融合に有効だとは全く私は想像していませんでしたので驚きの結果です。・・・・自白の中ではマルタイ自身に「アンプリファイア」に認識は全くありませんので、今回の事態に対してはマルタイの意思は影響していないものと推測されます。全くの偶然が重なったかの現象ではないでしょうか?

主任のほうで動いていただいている対象A、D、Eの尋問はいかがでしたか?・・・・・はい、こちらの尋問結果と一致しますね。

昨日からの医療調査班の対象FとGはどんな状況ですか?・・・えっ、やはり、生体反応は出ませんでしたか。脳波もですか?でも、活動は続いているんですね。こちらでモニターできますか?・・・切り替えます。・・・なるほど、身体活動は有っても脳波は無し。RNAの組成変化が確認できますね。完全に本人の意思以外で活動が続いている状況ですね。脳波的には死人。身体的には常人ということですね。これも主任の推論が的中していると思います。後、サンプルB、CとF、Gの死期と再生については主任の見解はいかがですか?(しばらくの沈黙。電話相手の説明を受けている様。パソコンでの資料のやり取り等が繰り返されている様子)

なるほど、当該グループ以外のサンプルで20の実績があればその仮説で間違えないと思います。ネット配信の実績と発症者の関連が実証できるサンプル数だと思います。これは危機的状況ですね。緊急のワクチン開発と対象ソフトの配信停止処置が必要だともいます。これ以上、対象ソフトを増加させないためにもマルタイの処置は必要と私も考えます。・・・はい、AおよびC、Dが発症しないエビデンスになると思います。・・・・・・・はい、B、Cが短期発症、死亡に至るまでの経緯とF、Gの経緯の違いも立証できると考えます。7日というのが何か、気になっていたのですが、そういうことでしたか。と、なると、マルタイも今日の13時33分がデッドラインですね。・・・・・・・はい、それまでには、必要なサンプルは採取しておきます。最終的にマルタイはどう処分される予定ですか?・・・・・・・・・・はい、了解です。そうですね、ゾンビ化して組成変形してしまうとどうしようもないと思いますので、私も賛成です。では、13時までには主任のラボまで移送します。・・はい、間に合います。大丈夫です。・・・・・世界で日本が孤立しないためですから、やむを得ない犠牲だと思います。そこは、科学技術庁PSI調査班全員、一蓮托生です。もちろん私もです。・・・・はい、ありがとうございます。では、13時に。」

部屋にいた男の長い電話が終わりました。知った名前がいくつも、何回も出てきたので、私を含む14日のズームミーティングの参加者全員が何がしら、彼らの捜査(?)、いや、調査対象になっていることが推測できました。しかし、私の身体は、せいぜい首から上が動かせる程度で、何ら行動に移れる状況ではありませんでした。

わずかに動く視界と思考の中で懸命に状況を判断しました。


A氏、D氏、E氏は、何がしらこの組織の管理下にある。

B氏、C氏の死因についても彼らは把握している。

F氏、G氏は既に死亡していて、ゾンビ化(?)している(?)。

RNAの組成変化(?)

私自身は今日の13時33分までに何がしら処理されるために13時には主任と言われるもののもとに運ばれる。

私は自白剤を投与され、いろいろと情報を彼らに提供している。

かつ「アンプリファイア体質(?)」で今回の事件拡大に影響している。

デジタルとアナログの融合(?)

彼らは「科学技術庁PSI調査班(?)。

ネット配信が今回の事件に何がしら影響を与えている。

混乱する頭を精いっぱい使い、先ほどのこの部屋にいる白衣の男と主任とされるものとの電話の内容を思い出し、あやふやな記憶を整理しようとしました。しかいそれ以上、頭が回りません。手足は全く動く気配はありません。かすかに動く首から上で何ができるのか考えましたが、混乱するばかりで時は刻々と過ぎていくばかりでした。


「おい、昼食だ。食ったら、部屋を移動するぞ。急いで食え!」

とトレイにラーメンとグラスに入った水を持って、先ほどまで部屋にいた男が入ってきました。「さっさと食えよ。」と私の手枷を外しました。(今しかない!)男が、トレイをテーブルにおこうとした時、右手でトレイを白衣の男めがけてはねつけました。

「うわぁ、熱っちぃ!」

ラーメンを顔からかぶった白衣の男が尻もちをついたところ、渾身の力で男の股間を右足でけり上げました。

「うぐぅ!」と男は、腰をエビのように丸め、うずくまりました。男の腰からスパイラルチューブストラップに付いた鍵を奪い、廊下に飛び出し、部屋の鍵を慌てて掛けました。薄暗く、長い廊下が左右に広がっていました。(ん、どっちだ!?)と一瞬考えましたが、何やらうめき声がする左に走りました。

「う、う、う、う・・・・」といううめき声と何やらガシャガシャと金属音がする部屋がありました。その向かいの部屋からも同様の音がします。ドアの常備に刑務所の監房にあるようなのぞき窓を手前に上げ、中を覗くと(!!!G氏!?)、見慣れたムーTシャツを着たG氏がワンピースのインペルダウン編のエースのように両腕を壁から鎖でつながれて暴れています。鎖でつながれた両手首からは出血しています。「G氏!G氏ですか?俺です!タロウです!」と声をかけると、G氏は顔を上げ、私のほうを見ました。(!!!)完全に血の気の無い顔色、目の焦点は全くあっていません。まるで、映画のゾンビそのものでした。あわてて、覗き窓を閉め、(今のG氏で、間違い無いよな。あのムーT、俺がプレゼントしたもんやし!)と自問自答をして再度、覗くと間違いがないことを確認しました。(いったい何なんだ!)ガタガタガタ!今度は背後の部屋から大きな音がしまして。振り返り、反対側の部屋を同様にのぞくと(!こっちはF氏!)G氏と同様に鎖に繋がれ、暴れている白い入院用のガウンのようなものを着た、F氏が・・・。やはり、その表情はゾンビのようです。「F氏!タロウです!何があったんですか!?」と問いかけましたが、うなり声が帰ってくるだけです。

(何か、相当やばいぞ!これは!)と廊下を奥に走り出しました。しばらく行くと、鉄格子の部屋が廊下の左右に見えました。ダッシュで通りすがる瞬間横目で見ると、鉄格子越しにパイプ椅子に後ろ手に手錠をかけられ座っているD氏。

「D氏!大丈夫ですか?」

D氏はゆっくりと、顔を上げました。もうろうとする意識の中

「あぁ、タロウさんか?いったい何やらかしたんだ?俺だけで無く、向こうの部屋にA氏とE氏もいる。2人も相当、拷問されてるんで、口が利けるかわからんが・・・。」

がくっとD氏は、それだけ言うとうなだれてしまいました。

「D氏!D氏!」と声を掛けましたが、返事はありませんでした。仕方なく、廊下を奥へ進むと隣の部屋にF氏がいました。声を掛けましたが、微動だにしません。(くそっ!やつら何しやがったんだ!)次の部屋に行くとA氏が、パイプ椅子ごと横たわっていました。

「A氏!A氏!俺です!タロウです!大丈夫ですか?」

と声を掛けました。ゆっくりとA氏は、顔を私のほうに向け、

「おっ、タロウさん!無事やったか!昨晩突然、わけわからん奴らに拉致されて、ここに連れて来られたんや。D氏とF氏もおるはずや。」

「はい、隣の部屋にF氏、その奥にD氏がいましたが、話せる状況じゃありませんでした。」

「そうか・・・。タロウさん、やつら相当やばいぞ!俺もわけわからんことばっかり聞かれて、ボコボコに殴られて、挙句の果てにへんな薬打たれて、身体の自由がきけへん・・・。タロウさん、はよ逃げろ!」

「そうは言われても・・・(!!)ちょっと待ってください!」と先ほど奪った鍵の束でA氏の部屋の鉄格子に鍵を合わせていきました。慌てているのと恐怖感で手が震え、なかなかうまくカギが合いません。何本か目に、すっとカギが入り、ガチャっ。(やった!開いたぞ!)

「さあ、A氏!逃げよう!」

「あっ、タロウさん!後ろっ!」とA氏が叫び、私は振り返りました。振り返った先に、先日ホテルに来た保健所の男が立っていました。無表情な顔で

「面倒かけんじゃねえよ。」

と言い、私の首筋に何やら黒い四角い物体を押し付けました。バリバリバリ!っと激しい痛みを首筋に受けました。(スタンガン!?)「タロウさん!タロウさん!」と叫ぶA氏の声が遠く頭の中に沈んでいきました。


「おい、起きろ!起きろ!」と言う声と、頬にぴしゃりとたたかれる痛みで意識が徐々に戻ってきました。(!!!)身体の自由がきかず、天井を見上げるような体制で真っ白な天井とよくドラマで出てくる手術台の上の照明のようなものが目に入ってきました。

「よぉ、お目覚めかい?」と保健所の男の顔が視界の右方向から割って入ってきました。首を上げ、自分の身体の方向に視界を向けると白いベットに何本かのベルトでしばりつけられていました。

「何するんや!お前ら何もんや!A氏達に何しやがった!F氏とG氏は何や!保健所がこんなことしてええと思ってんのか!」と男に向かって叫びました。男はゆっくりとした口調で、

「そんなに一度に聞かれてもなぁ・・・。まあ、お前が何を聞こうともうどうしようもないけどな・・・。」

「どういうことや!?」

「今、22日。12時40分。お前の意識もあと53分・・・。せっかくなので、最後に土産話をしてやろうか?」

「何言うてんねん!今すぐ開放せい!俺の仲間もや!(あと53分?今12時40分?ちゅう事は…22日午後1時33分!例の電話の着信時間や!)いったいなんやねん!あの電話が絡んでんのかい!」

「ちょっとうるさすぎるんで、おとなしくなってもらおうか。」

くいっと男が顎をしゃくると、別の男が私の左腕のシャツをめくり、何やら注射をしました。徐々に身体の力が入らなくなり、声が出なくなりました。視覚と聴覚ははっきりしていますので男の姿と声は、はっきりとわかります。

「あんた、なかなかいい感じだったぜ。あんたの調べと仮説、あといくつかのパーツがはまれば完成だった。ただ、そこには、達することはできなかったと思うぜ。どうせ後、1時間足らずの時間だ。あんたの冥土への土産話に聞かせてやろう。

まず、俺は大阪保健所のものじゃない。科学技術庁PSI調査室の宜保だ。オカルト好きのあんたなら、1980年代に霊能者としてよくテレビに出ていた女は俺の遠縁の叔母だ。すげえだろ!そんな血統の俺は、子供のころから、いくつかの特殊な能力を持っていた。あんたの好きな霊能力や超能力ってやつだ。まあ、普通の人より、ちょっとばかし強いって程度で、ものを動かしたり、空飛んだりはできねえがな。

そんなこともあり、俺は、科学技術庁PSI調査室の調査員になった。PSI調査室っていうのは、表立っては出てこない内密の機関で超能力や霊的現象など、非日常の力や、科学で証明しきれない事象を研究分析する専門機関だ。

今回の、コロナの新種株の特殊変遷で、科学で解明しきれないことを極秘に調査していたところ、12日から、若年者のコロナ感染と突然死が大量に発生した。原因を追究するには苦労したぜ。本当に、非日常の現象がその中核にあったからなぁ。あんたの残り時間も少ないんで、簡単に説明してやろう。」

(何言ってやがんだ、こいつは・・・。)

「今回、あんたが新型コロナに感染しなけりゃ、このような結末は無かったんだぜ。あんたの仲間もな!全ては、あんたがコロナをもらっちまったっていう偶然のスタートと、後はあんたの持つ能力による必然だった。」

(いったい、何が必然やったってんだ・・・。俺の能力ってなんや?)

「あんた、自分では全く自覚無かったんだろうが、ある超能力の強烈な持ち主だったんだぜ。あまり、映画や漫画の中では出てこないタイプの超能力なんだが、「アンプリファイア」って超能力知ってるか?本人の周りにいるものの能力を引き上げる力だ。あんたの仲間で、あんたと知り合ってから、運気があがったり、運動能力なんかがあがったやつがいるって聞いたときにピピッときたね。。昨日、あんたをホテルから、このラボに連れてきて、あんたのゲノム解析をして、徹底してDNA、RNAを分析した。すると出たよ。100万人に一人という、「アンプリファイア」の遺伝子がな。」

(なんだそれ、聞いたことないぞ・・・。なんで、俺がそんなもんに・・・。)

「ところで、あんた、ウイルスの進化に詳しいかい?まあ、一般に漏れ伝わる話じゃないから、一から説明してやろう。解明されていない、人類の進化のジャンプ要件ってわかるか?ダーウィンのいう進化論で初期の猿人であるドリオピテクスから、オレピクテスヘさらにラマピテクス、ネアンデルタール人、クロマニョン人そしてホモサピアンスへ。

人類の進化過程で、その進化途中の中間層の形態の化石等の証拠が見つからない、ミッシングリングってやつだ。まあ、一部ダーウィンの時代には、わからなかったが2008年に南アフリカで見つかった200万年前の初期の人類の化石。アウストラルピテクス・セディバ、つまりセディバ原人とホモ・サピエンス、つまり人の原型との間を証明する物も見つかりつつあるが、未だにほとんどの生物が海洋生物から陸上生物への進化の流れすらわかっていない。

まあ、ローマなんかは、聖書の手前、人間は最初から人間でないと困る奴らもいるがな。像や馬のように、各進化過程の化石が発見されて証明されているほうがまれだな。キリンの首が伸びた理由なんていうのもよくあるお題の一つだな。

クジラや蝙蝠に至っては中間が全く見つかっていないものもある。」

(いったい、何の話してんだこいつ・・・。)

「進化っていうのは、何がしらのウイルスによる、DNA、RNAのアミノ酸、タンパク質の突然変異に由来する突然変異した個体が、既存細胞に打ち勝ち、優性遺伝子として残っていったものと考えられるのさ。

最近の研究であった「光合成する動物」ってあんた知ってるかい?海の中で「ウミウシ」が昆布などのウイルスに感染し、昆布など海藻類のウイルスが感染したウミウシの体内でアミノ酸基変性し、海中で養分を取り入れるに有利な光合成をするようゲノムを書き換えたってわけだ。」

(ウミウシの光合成の何が関係ある?ますます、わからんようになってきた・・・。)

「ところで、コロナに話を戻すが、コロナの由来が自然物なのか、人工物なのかっていうことは置いておいて、急激に環境に適応した変性をしていく能力があるっていうのは、あんたも知っているだろう。初期のウイルスから、若年層にも強い作用をするタイプ、ワクチンが効きにくいタイプと変性を進めてきた。そこに、あんたのせいで、更に強く、生き残る方法をウイルスが学び、知ってしまったってことさ。」

(いったい、俺が何をしたっていうんや。)

「さっき言ったように、あんたは100万人に一人のアンプリファイア体質だ。あんた、コロナにかかった後、ホテルでオンラインでホラー映画見まくっただろう!?」

(それが、何だって言うんだよ。ただ、映画見ただけじゃねえか。)

「あんた、ここに連れてきて、退行催眠かけたんだよ。その中で、あんた自身は覚えてねえんだろうが、あんたの深層心理、そりゃあんたの中のウイルスの意思かもしれねえがな。

あんたが11日に「リング」を見てウイルスたちは、ネットを通じて感染し、7日後に対象を心臓まひで突然に死亡させる手法を学んだんだ。あんたの頭の中では「これは使えるな・・・」っていう深層意識かウイルスに支配され始めていたあんたの脳皮下脂質に刻まれたイメージからだな。

ただ、ウイルスは、7日後にぽっくり行かすよりも、次の日の「着信アリ」で7日を待たずにいつでも自らの携帯からの予告電話を使い対象に恐怖感と苦痛を与える方法を知った。その時のあんたの催眠下での言葉は「これも使えるな・・・」だったな。しかし、ここでウイルスは、いくら感染を拡大させても、最終的に対象が死んでしまえば、ウイルスも同時に死んでしまう。そこで永遠に生きられるベストな方法にたどり着いたんだ。

それが、あんたが13日に見た「ゾンビ」だよ。対象が、つまり感染した人間が死んでも蘇り、ウイルスの巣として肉体が存在し続け、噛みつくことで感染を拡大することも可能。そこには、ワクチンもロックダウンも人類の考えうる対抗策を凌駕させるものをウイルスは感じたんだろうな。催眠中のあんたの言葉を借りると「「これだ!」このやり方なら何の心配もない!」だ。あーあ、いいようにウイルスにやられちまってよう・・・。あんたが、映画でウイルスに知恵をつけた翌日から、ネット映像を見てコロナに感染する奴が、爆発的に増えた。巣ごもり事情やあんたのユーチューブやSNSがその拡大に災いしちまってたな。」

(なんだ、その理由は!?だいたい、ウイルスと配信サーバーって関係ないやろ!)

「何だ、その顔?まだ、理解しきれてないって顔だな?もう少し詳しく説明してやろう。今の配信ネットワークは、AIをベースに運用されているってしってるよな?ユーチューブでも1本見ると、「あなたにお勧め」って出てくるよな。ネットショップでも同じだな。あれは、運営側が、本来人間がマーケティングすることによって、購買意欲効用につながるであろう提案の最大公約数と利益を計算し、コンピューターが自動的に、つまりコンピューターの意思でおすすめを提案するわけだ。

今のコンピュータは、ハッキングやウイルス等の恐怖に常に自らをさらした環境にサーバーを置くことにより、コンピューターそのものの人格があるとするならば「ウイルス」という言葉に対し、コンピュータ自身がトラウマを持つようになった。ん?「コンピューターウイルスとコロナウイルスは別物で感染なんかしないだろう」って顔してやがんな?」

(そりゃそうだ、そんな荒唐無稽なこと信じられっかよ!)

「そこで、あんただよ!お前のアンプリファイア体質が、知識を持ったコロナウイルスがコンピューターウイルスと結合する能力、この場合は環境というべきかな?さっき話した、昆布とウミウシ、つまり、本来交わるはずのない別環境、別種族のものがウイルスを通じて実態変遷をおこすことがこの場で起きたってことだ。もともと意思を持ちつつあった現代AIとお前が進化させちまったコロナウイルス。考えられないことが起こるのが、あんたの好きなオカルトの世界だろ!現実でも科学で証明できないことはいくらでもあるんだよ!」

(・・・・・・・・。)

「説明ついでに、なぜオンライン配信の映画を見たものだけにウイルスが感染するのか教えてやろうか?」

(・・・・・・・・。)

「まあ、ここまで話したついでだ。まず、DVDやビデオやHDレコーダーで見たやつ、つまりあんたの仲間で言えば、DとEは何故感染せず、BとC、FとGとあんたが感染した理由だな!その違いは何だと思うよ?

いじわるせずに、結論から行こう!オンライン配信はソフトが全てデータとしてサーバーの中に入っている。DVDやビデオやHDドライブは基本オフラインの記録媒体だ。」

(!!AIの意思!!)

「ん?何かわかったようだな。オンライン配信のデータには、AIは、細工できるってことだ。昔、アメリカで問題になった映画館やテレビ放送でのサブリミナルって知ってるだろう?例えば当時の映画で行くと35ミリフィルムで1秒間24コマ。その中に1コマ「よく冷えたコーラ」の画像を取り込んだんだな。客には0.05秒のことだ。残像すら残らない。しかし、2時間の映画だとすると、客は無意識の間に7200回の「よく冷えた、コーラの画像」を見せつけけられてた訳だ。映画が終わると、売店のコーラに行列ができたって話、聞いた事があるだろ?

あんたの趣味で行くと、なんて映画だったかは忘れたが、恐怖心をあおるために、同じく24コマに1コマ髑髏の画像をはめ込んだッてな話も合ったよな。」

(確かに、人間の無意識の中の視覚反射速度を活かしてのイメージのすり込みっていうものは聞いた事がある。今言っていることは、そのことだろう。)

「ふふふ、わかってきたっていう顔してるな。

サブリミナルは、資格からだけでなく聴覚からもコントロールできる。今回の「リング」、「着信アリ」、「ゾンビ」のオンライン配信を分析したところ、人間の可聴域を超えた低周波でしっかりとメッセージが流され続けてたぜ。AIってすげえなぁ。全く以って感心だ。」

(そうだったのか、しかし、視覚や聴覚だけでウイルスが感染するものなのか?)

「おっと、また疑問が出たって顔してやがんな。なんだ、まだ納得いかねえか?それともサブリミナルで感染する理由か?」

私は、興味に負け、思わずうなずいてしまいました。

「そうか、お勉強会続けようか。サブリミナルで得た情報は人間、脳で判断し、それに応じた対応が体中に信号として送られるのは想像できるだろ。

例えば、催眠術をかけられたものが、「刃物で切られ大量出血した」と判断すると、実際には傷はなくとも血液中の血小板や白血球が増加する。更に、生命の危機を感じる量、「人間基本的に基礎体重の8%が血液と言われている。その3分の1が流出すると人は死に至る」とあらかじめ知らされていたものは、3分の1近く血液が流出してると催眠術下で意識が支配すると通常時の3倍以上の保持機能が働き、血小板、血漿等を体内製造するそうだ。火事場の何とかってやつだな。人間、死に直面するととんでもない力が出る。

そこまで、緊急性がなくても、南の温かい島育ちの?せたやつでも、極寒のアラスカやシベリヤまたはネパールの山岳高地でぎりぎりの生活を続けると、DNA、RNAの配列を脳が生き残るために変えてゲノム設計図を変更するという考えとしても、その土地に適合した土着ウイルスに合わせて変遷すると考えても同じことだ。なんせ、人間は2%のDNAしか活用されてないちゅうことだからな。あとの98%は手付かず!不思議の塊だ!」

(確かに、理にかなった説明だ・・・。)

「火事場の何とかってやつで、超能力につながる潜在力も増長すると考えられる。もしあんたが、X-MENのようにサイコキネシスの能力を持ってりゃ、こんなベルト引きちぎって、俺たちをなぎ倒せただろうし、テレポーテーションの能力を持ってりゃ、こんな所からさっさとおさらばできたのになぁ。残念ながら、あんたはアンプリファイアだ。どんなに脳が緊急信号出しても残念ながら脱出につながる能力にはならないな。残念!」

(・・・・・・)

「さて、ラストにつながるフィナーレだ。12日以降、爆発的に拡大するコロナ感染者、本来健康体の若者が次々と死んでいく現状。死因は「心臓麻痺」と「極端に苦しんでいく死に方」に2極化した事例を俺たちは分析した。結果、同じ映画を見ても感染するのは「ネット回線」での閲覧だけで、「DVD等のオフラインメディアでは、感染がおこらないことが推測された。あんたのグループでいうDとFが発症しなかったのもそれが根拠だろう。ましてや、ウイルスが「リング」、「着信アリ」、「ゾンビ」を見る前の11日以前にはその事例は全くない。研究、分析を続けていくにあたり、ウイルスのゲノム解析を進めると、ウイルスに先に書き込まれた「リングウイルス変性」がその翌日に書き込まれた「着信アリウイルス変性」に優先することも分かった。

だから、あんたは15日に「リング」、「着信アリ」、「ゾンビ」の順で見たんで、痛み苦しみを感じることなく、7日後、つまり、今日の13時33分に心臓麻痺で死ぬことになるんだ。わかったかい。」

(この男が言っていることが本当なら、もうあと数分で本当に俺は死ぬのか・・・)

「あんたの仲間のB,Cは「着信アリ」を先に見ちまったから、かわいそうに早くに死んじまったな。Cが着信で聞いた「がんばれ」ってのはきっと入院先の病院で最期をみとった、医師や看護師の声だろうな。Bは何にも入ってなかったってのは、ホテルで夜中に一人で死んだからだな。」あんたの場合はなんだったけな、ちょっと待てよ、レポート見てみっから。(とベットを離れ、デスクからファイルを持ってきて、はたと時計に目をやる。)やべえ、もう20分じゃねえか、あと13分しかねえよ。あんたも最後まで聞いてあの世に行かねえと、悔いが残って地縛霊になられちゃ困るからな。最後まで大急ぎで話してやろうな。

あんたが最後にやらかしちまった問題が「ゾンビ」だよ。ウイルス感染者が、生き返っちまう事例がいくつも報告されてきた。俺たちもびっくりしたよ。なんといっても生き返っちまうんだもんな。かまれた医者も看護師も坊主も感染してゾンビウイルスに感染することが分かった。あんたのグループのFとGだな。Gはゾンビ化するのがわかっていたから確保できたが、Fは大変だったんだぜ。責任感じてくれよな。

こいつの拡大を防止するために、即日、ネット配信会社に配信差し止めをかけたんだが間に合わなかった奴がマックスあと6日分いやがるから、この施設ですべて確保できるかぎりぎりだな。また、ネットで見た後、どっか行っちまってて、確保できない奴も数十人いやがる。全力で探しちゃいるが、このことを公表できない以上、どうなることやら。

とりあえず、あんたは安心してていいぜ。FとGでゲノム解析ができたおかげで、突貫工事ものだが、対ゾンビ化防止のワクチンは少量だが出来上がった。あんたにも打ってるから、あんたはゾンビになることはない。安心したかい?」

さあ、あと5分だ。あんたは心臓麻痺で死ぬ予定だから、モニターの心電図つけさせてもらうな。」

2人のスタッフが私の胸を開け、心電図をセットしていった。ピコーン、ピコーンと音が鳴り始めました。

「うーん、今からすぐに止まっちまう心臓とは思えねえな。あと3分あるが、元気なもんだ。何か最後に言っておきたい事あるか?」

「・・・・・(声が出ない)・・・・」

「何もないなら、いいや。あんた、いや、最後くらいは敬意を払って、「貴様」と呼ばせてもらおう。今回の大事件、貴様に非がある訳じゃなかったのは俺たちもよくわかってる。貴様に対して、また、仲間に対しての非礼をこの場で、小生、宜保が日本国を代表して詫びさせてもらおう。すまなかった。(私に対して一礼する。ピコーン、ピコーンという心電図の電子音がじょじょに弱くなってきている。)もう一度言う、お前の行動に非は無かった。恨むなら、アンプリファイアとして生まれた、貴様の特殊体質を恨むんだな・・・。貴様のおかげで日本は外国から攻撃されうる危機を含み、大変な危機に陥っている。」

(心臓麻痺が始まり、身体が痙攣し、ベットと装備された医療機器がガタガタガタと暴れてゆれる)

「貴様の使命として、最後に日本の為に礎となれ、貴様の身体は冷凍療法により脳波を止め、脳死状態にする。人工心肺を常時使用し、貴様の身体を今後のウイルス研究の検体として活用させてもらう。貴様の死を無駄にはしないよ。じゃあな・・・・・」

(薄れゆく、意識の中、徐々に男の声もとぎれとぎれに・・・・・。あの時・・聞いた・・留守・・電・といっ・・・・しょ・やっ・・・・・た・・な・・・・・・)

ピーと信号音が連続して鳴りました。。

「心臓停止しました。人工心肺に切り替えます。身体5℃に冷却開始します。脳波計チェック。停止を確認しました。保存療法に切り替えます。よろしいですか、主任?」

「ああ、後は任せたよ。」

と言って、宜保は部屋を出ていきました。


エピローグ

日本全体だけでなく世界の大半にワクチンが行きわたり、コロナウイルスがひとまずの終息を迎えた1年後、社会は3年前の平隠を取り戻しつつありました。

街中ではマスクをし続け、自粛生活を延長する人が半数ほど、マスクをしないで過去のようにワイワイと騒ぎ元通りの生活に戻った人が半数ほどになり、町は賑わいを取り戻してきていました。

そんなにぎやかさを取り戻した横浜の繁華街に、ぼさぼさに無計画に伸びた長髪と髭、虚ろな目で徘徊する男が保護されました。本人は記憶喪失なのか、全く自分のこともわからなければ、昨日の記憶もない状態だったそうです。

数日の間に、福岡、仙台、名古屋でも同様の記憶喪失の男が保護されました。

進捗のない捜査に業を煮やした警察は、横浜で保護された男に、退行催眠をかけ、記憶のかけらを拾い、身元確認につなげる方法を実行することをことを決めました。


薄暗い、部屋で記憶喪失の男は、白衣の精神科医の前で丸い椅子に座り、精神科医の言葉を聞いています。男の横、正面から状況録画用のカメラが回っています。

退行催眠が進み、1時間前、前日、先週、と記憶を遡っていきます。順調に遡っていった記憶が、保護された当日でぷっつりと切れてしまいました。カメラを回していた、警察の捜査担当の刑事はがっかりしました。白衣の精神科医が

「もうこれで終わりにしますか?」

「先生、可能性があるなら、さらに過去に遡ることは可能でしょうか。ダメでもともとで、お願いします。」と刑事はお願いして、頭を下げた。

「期待せんで下さいよ。」と記憶喪失の男に向き直り、10日前、1か月前、3か月前と遡っていった。男の記憶は全くの闇の中でした。退行催眠が1年半遡ったとき、わずかな変化が見られました。

ぼそ、ぼそと体験したことを話し出したのです。証言が進み、刑事の一人が

「なんてこった。これが本当ならすごいことになるぞ・・・」とつぶやきました。


深層意識が具体的な記憶として証言されるようになった時点から、詳細に日時を遡り、約15日分、約300時間に及ぶ証言が映像と音声で記録されました。退行催眠による聴取は2ヶ月に及びました。毎日5時間の催眠聴取の後、その録画映像を記憶喪失の男に見せ記憶を呼び覚ましていくという毎日が休みなく続けられました。その中で、福岡、仙台、名古屋で見つかった記憶喪失者との関係性や、行方不明の捜索願を全国で洗い出すと、今回の4人の記憶喪失者は、およそ1年半前の同じ日に大阪で失踪した4名であることと、聴取の中で死亡されたという2名が今も不明者で届けが出ている4人と同時に病院から行方不明になったものであろう事が判明しました。


2ヶ月を超える聴取と脳内リハビリのおかげで、私は、「オカルトタロウ」というユーチューバーであった記憶が戻りました。福岡、仙台、名古屋で保護された3名も一緒に治療を受ける中、A氏、D氏、E氏であることがわかりました。私も含め、あのおそらく2021年〇月22日と思われる日、4人が捉えられていたあの場所であったこと以前の記憶は、一部はっきりとしないものの、ほぼ戻ったような気がしました。しかし、F氏、G氏は今も行方不明のままです。


医師が言うには、何がしらの薬物か強い催眠で記憶を消されている可能性が高いことを伝えられました。この件で、調査に当たっていた刑事とはその後コンタクトはありません。まったく事件としては公表されていません。科学技術庁PSI調査班なる組織、部署の存在は確認できませんでした。もちろん、科学技術庁に「宜保」という名の男性職員の存在も確認されませんでした。医師より、「これ以上、深入りしないほうがいい。」と言われ、4人とも了解しました。聴取ときの録画のコピーを求めましたが、それは却下されました。保護されてから、約3ヶ月たち、4人は大阪で解放されました。


私は、自分のマンションに戻りましたが、長期の家賃滞納を理由に解約され、全くの他人が済んでいました。携帯電話とサーバー契約は、幸い口座が生きていて、それまでの預金で料金は引き落としされていましたので再発行でことなくを得ました。

私が行方不明になってから、しばらくの間、みんなが心配してくれていたことが、残されていたメッセージから読み取れました。

とりあえず、数日間、A氏の家でお世話になり、マンションを探し、引っ越しました。なかなか夢の中から抜け出せない感覚で何もしない日が続きました。A氏、D氏、E氏は仕事に復帰しています。週に何回かは連絡を取り合っています。3人は、すっかり元の生活に戻ったようです。

ある晩、私は、金縛りに遭いました。枕元には、F氏とG氏が何も言わず、ニコニコと微笑みかけてくれています。(心の中で、私のせいで、事件に巻き込んですいませんでした・・・。と謝り続けました。)私の目から耳にかけて、すーっと涙が流れると同時に2人は振り返り、遠くへ歩いていき、金縛りが解けました。2人が消える直前に2人の声で「タロウさん、頑張ってや!」と聞こえた気がしました。


翌日、私は「退行催眠 大阪」でネット検索して、何件かのヒプノセラピーや退行催眠を行っている医療機関をピックアップしました。あえて、催眠術師を外したのは守秘義務の有無の点からです。医師であれば、患者に対する守秘義務が発生するので、情報が漏れ、面白おかしく取り扱われるリスクが低いであろうと考えたからです。退行催眠時のビデオ撮影の許可と約300時間かかった旨を伝え、本来の診療時間外も含めて長時間付き合ってもらえる医師を探しました。

ほとんどの医師が、私のことを「精神異常者」と思ったと感じました。しかし、何件も当たるうちに、私の希望にかなったヒプノセラピーを見つけることができました。事前にA氏、D氏、E氏にも話をしたところ、快く応援してくれることになりました。翌日に、ヒプノセラピーを訪れました。ホームページはすべて外注で、本院は、SNSは全くやっていないという点と、丁寧で真剣な対応に安心感を持ち、お願いすることにしました。来週から、閉院後の3時間、休診日の6時間、事件のすべてをカバーする15日間を記録するまで、通院を続けることと当方からの「秘密保持契約書」に医師に記名、捺印してもらうことで同意しました。

そこから、約3ヶ月かかり、全ての潜在した記憶が記録として残され、私の記憶として上書きされました。


こうして、今まで書いてきたことがその全てです。きっと、私が公表することで、「オカルト好きのユーチューバーがバカなことを言ってる。」くらいの反応が当たり前で、ほとんどの人に信じてもらえるとは思いませんが、わかっていただける人に伝えたいと思います。

この先の世の中が、平隠な日々が続きますように・・・・・・。

(終)


はじめまして。赤井翼と申します。永らく、ゴーストライターとして執筆していましたが、今回、周りの方々の強い勧めもあり、アマチュア作家として今後活動していく最初の作品として、デビューさせていただくこととなりました。

本編は、筆者の別作品、「ミッドナイトラジオジョッキーオカやん」というオカルト大好きDJのオカやんが毎週リスナーの投稿を深夜放送で紹介するシリーズの中の一つのエピソードとして発表されたものを、一部抜粋したエピソードによりホラー性、オカルト性を持たすために、大幅に加筆、修正されたスピンオフ作品になります。

「ミッドナイトラジオジョッキーオカやん」はどちらかというと、「笑い」を中心に「オカルト現象や、超常現象、霊的現象、UFO,UMA等」を「リスナーの経験談」の形で紹介する生放送番組風短編小説集でした。今回の「コロナウイルス謎の変性~新型ウイルスの逆襲~」も最後にギャグで落とす!という、当作品からは考えられないオチで終わる作品でした(笑)。

一部の方から、「笑い」で終わらせたことに、大変お叱りを受け、書き直したものになります。

近日、「ミッドナイトラジオジョッキーオカやん」シリーズも当サイトにアップする予定ですので、ご興味を持っていただいた方は、そちらも軽ーく読んでいただければと思います。

ご意見等ございましたら、

akai_tsubasa@yahoo.co.jp

までよろしくお願いします。

では、随時、新作をアップしていきますので、今後とも、よろしくお願いします。

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