2・命奏‐メイソウ‐
《携帯の着信音》
あぁ・・・・・朝か。
最近よく夢を見る。あの日の夢だ。
父さんと母さんは優しかった。ケーキを買いに行ってくれた。
俺と奏のために・・・・・
でも何故だろう。人の頭は都合のいいようにできている。
記憶がない。そう。俺と奏はあの日の事や
それ以前の記憶がほとんど存在しない。
忘れてはだめな事なのに。全て自分のせいなのに。
でも
思い出すことがそれ以上に怖いんだ・・・・・
《ドンッ》凄まじい勢いで扉が開く。
奏「兄貴ぃ~~!いつまで寝てんの!学校どうするつもりでしょうか?馬鹿なのでしょうか?」
キレ気味の奏がいつも以上に怖かった・・・・・
命「ごめんごめん!!って・・・・・」
「うわあああああああああああ」
ダメだ・・・・・完全に遅刻だ・・・・・
なんでこんな日に限って寝坊すんだよ俺は!!
最悪だ・・・・・きっとクラスで俺は今頃
やべぇよ。こいつぜってぇやべぇよ。ってなってる。
とりあえずダッシュだ!!
奏「いってら~~~」
はあ。命はこれだからダメなんだよ。
中学の時からそうだ。
自分から人に心を開こうともしなければ、危機感がなさすぎる。
それだからいつも不良みたいな扱いをされ、顔はいいのに
やばい奴扱い。もったいないんだか、そう見られたいのだか、わけわかんない奴だ。
奏「はぁ・・・・・」
でも小学生以前の記憶はない。私が知ってるのは中学生からの命だ。
記憶障害か・・・・・思い出したいのに・・・・・怖い
《ドドドド》 《ガラガラ》 《バンッ》
命「す、す、すいません。 はぁはぁ。お、お、遅、遅れ、ました。」
ダメだ呼吸困難になりそうだ。そして何よりこの目線だよ。糞がっ。
明らかに哀れみをきせるようなこの目線だよ。はぁ・・・・・
先生「おい。初日から大遅刻はダメだぞ。」
「もう一通りクラスメートの自己紹介が終わったところだ。お前もここでしておけ!」
命「あ、はい。は、花澤 命・・・・・です。よろしく。」
静かな空気が流れてるわ。まっ入り方がこれだから仕方ねーか。
別にどうでもいいわ。
先生「うむ。よろしく。じゃぁ、自分の席に着きなさい。」
それからしばらく先生の説明が始まり。一通りの説明が終わり、
無事本日の登校内容が終わった。
さぁ、夕方からバイトだ。職員室でバイトの許可を早速とるか。
お金もなるべく今のお金に手を付けたくはない。奏の学費。
進学費用。その他もろもろお金は必要だからな。
あいつにだけはこれ以上辛い思いをさすわけにわいかないからな。
?「あ、、あの・・・・・落としましたよ・・・・・これ・・・・・」
命「え」
あー俺の大事な彫刻刀じゃん~~~って
oh!! だめじゃん。終わりじゃん。彫刻刀持ってきてる高校生
どこにいんだよ!!な、な、なんて言い訳すんだよ。
これさぁ~すっげぇ切れ味いいんだよね♪
もう桃とかすげぇ切りやすくてぁ。サクッとヌルっとまぢ最高♪みたいな!?!?
てか俺今顔どんな感じ!?真っ白ですか?真っ赤ですか!?汗出てませんか?!
?「これわ、恐喝に使う道具なんですか・・・・・?」
だよねぇ~ そうなるよねぇ~ 俺ぇ~ 知ってたんだぁ~ そうなるの~~。
命「ん、んなわけねぇだろ?これわ、か、形見だよ!!!」
あっ。叫んじまった。なんでだよ。なんでこうなるんだよ。
てか威圧的過ぎんだろ俺・・・・・。終わった。
?「でわ、よかったです。気づいて本当に良かったです。私は哀歌。相原哀歌って言います。
相手の相に野原の原、哀しいの哀に歌の歌って書いて、相原哀歌です。」
哀歌「よろしくね!えと、花澤 命君だよねっ。」
なんだよ。その顔は。気持ちのこもった笑顔って・・・・・こういう事を言うんだな。
こんな顔で笑える人になりたいもんだ。
命「えっああ。てか、なんも思わねぇんだな。彫刻刀持ち歩いてる高校生なんていねぇだろ。」
哀歌「うん。いないね。見たこともない。でもそんな大きな声を出して形見って言える人も初めて見
たかもね。」
クラスメート「哀歌っ。いくよー。」
哀歌「じゃね。花澤君!またねっ!」
相原哀歌・・・・・か。
哀しい歌で哀歌か・・・・・
何故親は、哀を愛にしなかったんだろう。
あの子は。名前気に入ってんのかな。
人の事言えねぇよな。命って・・・・・
命「っと こんなことしてる場合じゃねーな。」
バイトだ。
《着信音》
おっ奏か。どうしたんだろう。
命「おう、奏か。今バイト終わったところだ。どうした?」
奏「ちょっと、頭痛くて・・・・・帰り頭痛薬買ってきてくんないかな?」
って言われてももう薬局が開いてる時間じゃねーな。
命「大丈夫か?バイト先でもらって帰るよ。平気か?」
うっ。痛い。痛い。
奏「う、うん。兄貴も気をつけて帰ってきてね。そ、それじゃあね!」
なんかあいつ変だったよな。急ごう。
なんなのこの痛み・・・・・
兄貴・・・・・
兄貴・・・・・
これちょっとおかしいよ。
《バンッ》
命「奏~~。薬もらって。か、か、奏?」
意識がない。嘘だ。嘘だ。どうしよう。
救急車。救急車だ。心臓が痛い。体が震える。
早く早く早く早く早く早く。
消防士「はい。こちら。」
命「早く来てくれ!妹が倒れてる意識がない!合津新町3-4 104号室だ!」
消防士「お、落ち着いてください」
命「落ち着けるわけねぇだろ。早くしろ!」
消防士「わかりました!!」
なんだろう。
私だ。小さい頃の私。
これわ・・・・・命
仲良しだったんだ。こんな小さな兄貴。初めて見た。
泥だらけで遊んでる。かわいい。。
命「なぁなぁ俺命って言うんだ。」
奏「私は奏って言うの。」
何で自己紹介してるの・・・・・?
命「命って名前嫌いなんだよな。なんか変な名前だよ。」
奏「私は嫌いじゃないけど 一文字だけだと 寂しい・・・・・あっ。くっつけちゃえばいいじゃん!!」
「 命 奏 」
これなんて読むんだろ
いのちをかなでる
メイソウ。