1・命に嫌われている
これは単純な物語です。きっと俺達が思っているよりもずっと・・・・・
春の季節。俺は高校一年生入学式を無事に終え、明日からは学校生活が始まる。
嫌だ。単刀直入に言えば、俺は学校も人も心底好きになれない。
綺麗に美化されて放映されるテレビ番組のシナリオのように進む人生なんて
絶対ありえないのだから。
俺の名前は 花澤 命 。そして何よりこの名前が
命「・・・・・一番・・・・・嫌い・・・・・」
「これは俺の名前じゃない。」
「これは俺のモノじゃない。」
「・・・・・っとこうしてる場合じゃない。ご飯の支度しないと。」
人は誰しも小学生になり、中学生になり、高校生しかり、大学生しかり、そして
大人になっていく。その過程を楽しむよう生きている。一部の人間はね。
命「ただいま。」
奏「おかえりお兄ちゃん。」
笑顔がとても癒される。俺の妹そして唯一俺の家族・・・・・花澤 奏
そう。僕達には父、母はもうこの世に存在しない。
あの時俺・・・・・
奏「兄貴??」
命「な、なんだ??」
奏「何考えてるの・・・・・?」
下を向き、暗い表情、まるで心の中身をまるごと見た後の人間が発言するような
表情で問いかけてきた、その顔は何故なんだろう。痛かった。
命「あ、あぁ 明日から学校だからな。行きたくねぇなって思ってさ。」
奏「ダメ!ダメだよ!!私もちゃんと勉強して兄貴と同じ学校行くからね!」
自慢気そうに笑みを浮かべる妹に、少し気持ちを落ち着かせてもらっている自分がいる。
奏「兄貴は友達作るのも下手くそだから心配してんだぞー。」
悪かったな・・・下手くそで。お前もたいしてうまくねぇだろ。
命「お、おう。 まぁ飯作るから、風呂だけすましとけよ。」
「俺明日からバイト始めるから。少し遅くなるけど、飯も作り置きしておくから。」
なんだろう。なんなんだろう。優しく接すれば接するほど、悲しい顔をする妹。
何故だろう。でもその後に吐く言葉は・・・・・
奏「兄貴。ありがとうね。お風呂行ってくるね。」
いつも満面の笑みのありがとうなんだよな。まぁいっか。
今日食べれて明日も美味しく食べれる食べ物。
ハンバーグ・・・・・肉じゃが・・・・・コロッケ。
よしっ!いっちょやるか。
私は中学三年生。生まれつきの天才肌。スポーツ万能。容姿端麗。頭脳明晰。
学校へ行けば沢山の友達に憧れの眼差しを向けられる。それが私だ。ただ・・・・・
私は・・・・・水が嫌いだ・・・・・
私の父と母が亡くなったあの日の事を思い出すから。
あの日も雨だった。あんなに小さかったのに何故だろう。
頭の中にデジカメでも入ってるわけ?モニターでもついてるわけ?
あの事故だって・・・・・
《ドーンッ》
「ひっ」
真っ暗だ。何も見えない。
そうか。何も見えない何も聞こえない。無ってこうゆうことなのかな。
《ドドドドド》
命「奏っ!!」
顔をあげるとライトをもった兄貴がこっちを照らして立っていた・・・・
奏「バ、バババ、馬鹿なの?馬鹿なんですか?ライトっ!」
考えられない。いくら停電だからってなんの声もかけずに扉空けますか?
声はかけたか。いや、、掛けると同時に入ってるからやっぱり犯罪だよ。
命「あ、あわわ、す、すいません。」
やべーキレられる。殺される。怒らした時のあいつはまぢで止められないからなぁ・・・・・
奏「兄貴」
命「は、はい・・・・・。」
奏「ありがとね。」
きっと兄貴は私が水が嫌いなことも全て知ってるんだよね。
扉を開けた兄貴の顔は焦りより、少し泣きそうな顔をしていた。
何がこの暗い気持ちを引き出させるんだろう。
命「泣いてなくて、よかったよ。ブ、ブレーカーみてくるな!」
そうか。
思い出してたんだね。
きっと兄貴も一緒なんだよね。
そうだよね。だって
私達は・・・・・俺達は・・・・・
命に嫌われているから。