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第一場 - 広場にて

「なぁ道明寺……」

「ンだよ?」

「隣のクラスのC組にさぁ……ロミオとジュリエットって転校生、来たじゃん」

「ンあ……そういや、来たな」


「二人とも彫り深くて、目力あってさぁ……滅茶苦茶カッケーしカワイイじゃん……」

「ンだよ二階堂? まさかお前、ジュリエットちゃんに惚れたのか!?」

「そ、そんなんじゃ無えよ! そんなんじゃねェけどさぁ」

「ンじゃ、何だよ??」


「そもそも付け入る隙なんてねーし! だってホラ二人とも、転校してきた時から付き合ってっしさぁ……美男美女同士で、メッチャお似合いじゃね?」

「ンぁ……確かに、そうだな」

「だから俺は思ったワケよ……『こいつら、漫画みたいだな』って」

「はぁ?」


「『こいつら、恋愛小説に出てくる登場人物みたいだな』って。『この世界がラブコメだったら、この二人確実に主人公だな』って」

「何言ってんだお前」

「だってよ、名前がまずロミオとジュリエットだぜ? それで二人とも相思相愛で付き合ってるって。そんなんフツーありえなくね?」

「確かに、すごい偶然だな」

「だろ? 明らかに現実離れしてんのよ。こいつらだけ、少女漫画の世界に生きてんのよ」

「いるんだなぁ、現実にそんな奴」



「だから俺思ったワケよ……『この二人を見てれば、もしかしたらラブコメっぽいこと起こるんじゃねえかな』って」

「ラブコメっぽいこと?」

「ああ……例えば『風呂場で偶然出くわす』とか、『着替え中に偶然出くわす』とか」

「確かにアニメとか、良くそんなシーンありそうだけど」


「あと『遅刻しそうになって慌てて食パン咥えて走ってたら、街角であのと偶然出くわす』とか、『野良猫を追っかけてたらいつの間にか見知らぬ神社に辿り着いて、そこで気になるあのと偶然出くわす』とかさぁ……」

「お前の中に、『偶然出くわす』以外のバリエーション無えの?」

「とにかく、俺は二人をこっそり尾行マークしてたワケよ。もしこいつらが本当にラブコメの登場人物だったら、何らかの形で偶然出くわすハズだ、って思ってな」

「オマ……それ、犯罪じゃねえか!」


「だけどよ道明寺、見てくれよこの写真……」

「写真撮ったの!? マジで!?」

「いや、ダメだった……。本当なら、街角で食パン咥えてるジュリエットちゃんが、バッチリ撮れてるハズなんだけどよぉ……」

「全然写ってねえじゃん。誰だこの男?」


「分かんねえ。他にも、ホラ……」

「何か全部、転校生の間にこの男が入ってて、上手い事写ってねえな」

「そうなんだよ! コッチはベストポジションで撮影してるハズなのに……どういうワケか、二人の間に謎の男が入り込んじゃってるんだよ!」

「ホントだ。もはや軽いホラーだな……」


「だから俺も思ったワケよ。『もしかしたらこいつ、幽霊なんじゃねえかな』って」

「はぁ?」

「ホラ、ドラマとか小説で良くあるじゃん。『生きてる人間だと思ってたら、実は死んでました』みたいな。『これもしかして、心霊写真なんじゃねえかな』って」

「何言ってんだお前」

「だってフツー有り得ないじゃん。この男、どんな時にも二人の間に割って入ってんのよ? こうして見ると、完全にホラー写真だよ」

「確かに、偶然にしちゃ出来過ぎだな」


「だから俺、この写真持って近所の寺にお祓いに行ってきたのよ。『もしかしたらこれ、仲睦まじいカップルの間に憑いた、悪霊なんじゃないですか?』って」

「”間”に憑く悪霊って、よう考えたらメッチャレアやな」

「で。写真を見せた瞬間、寺の和尚が震え出してさ……」

「え!? じゃあまさか、本当に……!?」


「いや、結論から言うと、この男は悪霊ではなかった」

「なかったんかい」

「フツーに生きてる男子高校生だった。何ならロミオとジュリエットと一緒にC組に転校してきた奴だった」

「じゃあ何で和尚は震えてたんだよ」


「考えても見ろよ……悪霊でもないのに、カップルの間に挟まれてんだぜ?」

「まぁ、フツーに考えたらどんな状況だよって感じだな」

「田中って名前の男なんだけど……この田中って奴が異常なのさ。和尚も言ってたよ。『むしろ悪霊であってくれ』って。『生身の人間で、こんな状況に耐えられる人間がいるなんて』って」

「確かに……これだけ二人の間を確保キープできるって、只者じゃねえな」


「だから恐ろしい男なんだよ……この田中って男は……」

「ンあ……名前からして、俺たちの方が断然主人公っぽいんだけどな……」

「あぁ。二階堂に道明寺……何でこの名字で、俺たちモテないんだろうな。これでモテなかったら、もう絶望じゃん。もうモテ要素ないじゃん!」

「落ち着け、そう卑下すんなよ。俺がラブコメの作者だったらさ、二階堂に道明寺なんて名字の奴、ゼッテー脇役にしておかないから。どう考えてもこれからぐいぐい、メイン・ストーリーに絡んでくる名字だから」

「マジで?」

「マジ、マジ」

「じゃあ、俺たちこれからカノジョできるかな!?」

「できる、できる。だから、もう泣くなよ」

「これから……これから放課後友達と駄弁ってたら、教科書を忘れて取りに来た女の子と、偶然出くわしたりするのかな!?」

「ンあ……お前の中に、『偶然出くわす』以外のバリエーション無えの?」


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