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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

俺が勇者になったなら

作者: NO KNOWN

読んでくださった人がいましたら勝手に削除して本当にすみませんでした

「ハァ、」


欲しいものは失せ、不要なものが寄って来る。


他人を恨むつもりは無い。俺が望まなかったからだ。


自分が悪い。現実から目を背けたから。


正直生きてるだけで後ろめたい。


やる気が欲しい。欲望だけは健在である。醜いままに。


なのに、


ガンッ


魔物

『Gaaaaaaa!!!』バタッ


異世界で勇者なんてやらされている。




【俺が勇者になったなら】


01『俺が勇者になれるのか?』




「………ハァ、」


少女

「うわ凄いため息。幸せが逃げちゃいますよ?」


「幸せなんて常に掴み取るものだ。鬱陶しい羽虫を掴み取るようにな」


少女

「表現が酷すぎますよ」


そう。俺は朝目が覚めたら勇者にさせられていた。






数日前、


「「「………」」」」ガヤガヤ


「………ん? ここ、どこだ………?」


魔法使い

「………やった、やりましたぞ!」


村人

「やったー!」


村人

「まだこの時代にも適正を持つ者がいたんだー!」


「え、ちょっと待て! これってどう言う状況!?」


村長

「これは失礼。私はこの村で長をやっている者だ。適合者よ」


「適合者?」


村長

「急な話で悪いが、君には勇者となって魔王軍と戦ってほしい」


「………○ニタリングか何か?」


村長

「モニ? 何のことかわからないが、冗談や嘘ではない」


何でも、異世界から勇者の適正を持つ者を魔法で呼んだら俺が出てきたんだとか。


「馬鹿じゃねぇのかその魔法。俺みたいな社会のゴミに何ができるってんだよ?」


って言った。


すると、


ザクッ


「ッ!?」ビクッ


戦士

「それは君が向こうの生活では実力を発揮できなかったからだ。剣を取れ。その証拠を見せてやる」


「え、えぇ!?」


村一番の戦士と腕試しに戦わされた。


明らかに腕っぷしの強そうなその男は剣を構える。


そしてそんな俺は地面に刺さった剣を片手に、


「ギャーッ! こっち来んなー!」


戦士

「何をしている!? 早くかかってこんか!」


脇目も振らず逃げ出した。


「こっち来んなー!」


当たり前だ。喧嘩すらまともにしたことが無いのだから。


戦士

「逃げても無駄だー! 敵は逃してはくれないのだからなー!」


どんなに逃げても追い掛けてくる。体力が底を尽きそうになり、


ブチッ


俺の中で何かがキレた。


ザッ


戦士

「足を止めたな馬鹿め!」ブンッ


ガキンッ


戦士

「フフ、力勝負ならこっちが───」


スルッ


戦士

「な、」


持ってる剣で相手の攻撃を一瞬だけ防ぎ、剣を傾けて剣の軌道をずらす。


スパッ


「ふんっ! ふんっ! ふんっ! ふんっ!」


スパッ、スパッ、スパッ、スパッ


俺は無我夢中で剣を振り続けた。


戦士

(くっ、傷は1つ1つ浅いが、手を中心に!)


「オラァ!」


ガッ


戦士

「ぐおっ!」


バタッ


戦士

「ってて、ん?」


「………」ゴゴコゴ


足を掬われ倒れ込んだ戦士の上に乗り俺は、


戦士

「フフ、よくやった。これでわかっただろう? 自分の実力にィッ!?」メキョ


バシッバシッバシッバシッバシッ


ただ、ただただ戦士の顔に無数のビンタを食らわせた。


汚い。明らかに勇者らしい戦法では無いそう思った。


「ふぅ、わかっただろう。俺は勇者なんて輝かしい存在じゃ───」


村人

「「「おぉォォォォォォォォォッ!!!」」」


村人

「凄いぞあの人! 村一番の戦士をあんなに容赦なく倒した!」


村長

「あの戦いぶりこそ、私達が待ち望んでいたものだ!」


そしてその実力を讃えられて勇者となったのだった。






「いやふざけんなよコラ? 俺に頼ってる時点でこの世界はもう滅んだも当然だからな? もっといるだろ? 俺なんかよりも強い奴さぁ?」


少女

「もう、グチグチ言ってないで進みましょうよ」


そしてこの女。名前はクリスとか言ったか? 魔法使いで見習いらしい。


はいアウト。進める気しません!


なんで勇者御一行で見習いなの!? それにこの女以外に仲間は1人もいねえし! ブラック企業にも程があんだろ!


「そもそも何この十字架? よくここまで傷1つ付くこと無くやって行けたよね!?」


俺が背中に背負ってる身の丈ほどある黒く細長い十字架のようなものは、村で支給された装備の1つ。


未だにちゃんとした使い方は誰にもわからず、ただただ鈍器として殴って戦ってるいる。はずなのだが、傷の1つもつかない。


クリス

「何を仰っているのですか? それはウチの村に伝わる貴重な武器なんですよ。頑丈で当たり前です」


「ホントこれなんなの!? ハァ、さっさと金溜めて他の武器が欲しい、」


クリス

「贅沢言わないで下さい。私達のレベルじゃそんなものを買える程のお金を持つ魔物には勝てませんよ」


「ええいクソ! マジクソゲーだなおい! そもそもさぁ、」


クリス

「なんでしょう?」


「俺って勇者って感じのオーラも見た目でもねぇだろ?」


胴長短足、半端太り、全身毛深い。


最低な三種の神器揃ってるし。


クリス

「人は見た目でもありますけど、一番は中身です!」


「やる気無し、短気、怠け好き、性欲魔人、下ネタ好き、金使い荒い。何かいいところ言ってみろよ?」


クリス

「勇者さんは私を連れてきてくれました」


「………」


クリス

「文句を言いながらも魔物退治を手伝ってくれてます」


「………」


クリス

「謙虚で見栄を張りません。困ってる人を見ると目が悲しんでくれてます。魔王の考えに反対してくれています。こんなにいいところ、あるじゃないですか?」


「………聞いた俺が馬鹿だった。そもそも俺は自分を正義の味方とか思ってないし、悪行だってする。物事は全部途中で投げ出してばかりだぞ」


クリス

「でもあなたは責任感が強い。本当に人がいやがることをしませんし、本当に大切なことからは絶対に逃げません」


「俺はもしかしたら魔王の側に付くかもしれない」


クリス

「さっきも言いましたよ。あなたは本当に人がいやがることはしません。だから魔王の側についたりなんてしません」


「………ハァ、随分と信用してるんだな」


クリス

「当たり前ですよ、仲間ですから」


「そうかよ。じゃ、仲間として1つ提案だ」


クリス

「なんでしょう?」


「そろそろ、やる気だしていいか?」


クリス

「えぇ、構いませんよ。存分に奮って下さい」


「フフッ、期待に答えようなんて思わないさ。ただ邪魔な相手がいるなら打ち倒してやるよ」


クリス

「お供しますよ。その結果で見えるものを見る為に」


魔物

『Guaaaaaaaaaaa!!!』




「ハァ、ハァ、やっぱり本気出すのやめ! もう疲れた!」


クリス

「でも見て下さいよ! 一気にレベルが凄い上がりましたよ!?」バッ


彼女が出したのはパラメートパス。所謂、自身のステータスを測るカードなのだとか。


俺:Lv 12


クリス:Lv 7


「さっきまで5と2だったよな?」


クリス

「おめでとうございます! やっぱり勇者さんは凄いですよ!」


「………少し戻るけど、前の町で休むぞ」


クリス

「わかりました」




クリス

「おぉ、いいんですか!? こんなに食べていいんですか!?」


今日はいっぱい働かせた。だから収入も沢山ある。ある程度は贅沢をさせる必要があるだろう。


「さっさと食えよ」


クリス

「い、頂きまーす!」ガツガツ


「………」モグモグ


クリス

「ぷはぁ! 美味しいです! 初めてですよ! こんなに美味しいご飯!」


「………」ギュッ、ズキズキ


クリス

「? どうかしました? 胸なんて抑えて?」


「お前のこと、少し聞いていいか?」


クリス

「えぇ。私は元々天涯孤独の身だったんですけど、魔法使いのお師匠に拾われましてね。そして最近になって勇者さんと同行するまではお師匠の弟子として面倒をみてもらいました」


「普段は何を食ってたんだ?」


クリス

「そりゃあ普通にパンですよ。あぁ、あとたまにお師匠がご飯を残したりしてたんでその残飯がご馳走でしたね」


「………」ズキズキ


クリス

「ど、どうしました勇者さん!? 病気か何かですか?」


「気にするな。醜いまでの偏見で心を痛めつけているだけだ」


クリス

「?」


こいつ、自分のことになると鈍感で助かった。


「とりあえず、俺は宿屋にでも行って部屋借りてくる」


クリス

「あ、行ってらっしゃい!」


「………へへへ、」




宿屋

「二部屋一晩、ならこの価格だね」


「少し高いな」ゴソゴソ


ジャラッ


宿屋

「毎度、」


「ふぅ、───ッ!」


『───ッ!』


『───ッ!』


「鍵持ってくぞ!」バッ




クリス

「やめて下さい! 離して下さい!」


「いいだろ別に! ただウチに行くだけなんだから!」


クリス

「ご馳走を目の前で逃すなんて絶対いやです!」


「どんだけ飯に執着してんだよ!」


「おい、早くしねぇとあの男戻ってくるぞ!」


「わかってる! ほら、早く来い!」


ガシッ


「!」


クリス

「勇者さん!」


「ウチの連れが何かしたか?」


「え、いや違う違う。こっちに用があるだけ!」ブンッ


ガシッ


「そっか。なら最初に言っておく。俺に慈悲を求めても無駄だからな」


「あ、あぁ、」




クリス

「あ、あの、勇者さん、そこまでする必要ないのに、」


「言っただろ? 悪行だってする」


「ゆ、許して、」


「助けて、くれ、」


「お前ら次はブタ箱行きで済むと思うなよ?」パキッ


「う、うわァァァァァッ!!!」


タッタッタッタッ


「ふぅ、ホントに強くなってるな。ついでにまたレベルも上がったし」


一気に2倍以上にまで力が膨れ上がったのだ。身体能力や魔力、色んなものが強くなってて当然か。


そしてさっきも言った通り、レベルが上がったことで使えるスキルができた。


そしてあるものを試す必要もあるようだ。


クリス

「勇者さん、」


「………帰って寝る。これお前の部屋の鍵」ポイッ


クリス

「あっ、勇者さん!」




「じゃ、おやすみ」


クリス

「あの!」


「何? あと声大きい」


クリス

「あの、さっきはありがとうございました!」


「………」


ガチャ


クリス

「あっ、」




「………」


お礼は言っちゃいたが、内心で彼女は俺を失望してくれただろうか。そんなことを考えていた。


また嫌われるのか、また嫌な顔をされるのか、怖がられたのだろうか。


やめろ。望んでやったことだ。


ここでもまた、あんな目で呆れられるのだろうか。


「やめろ!」ガバッ


………


「ハァ、ハァ、」


改めて自分が馬鹿だと罵る。耳にタコができる程に。


また怠けて、頑張るべき時に何もしないで、自分の好き勝手にして、また、


ガタガタッ


「ッ!」


クリスの部屋が騒がしい。しかも何人か気配がある。




バンッ


もぬけの殻。ただ荒らされた跡が残っている。


きっとさっきの男達だろう。


当然だ。俺みたいな奴に何言われたところでやめる筈がないだろう。


足音がまだ聞こえる。


どうやら身体能力が全体的に上がって夜目も耳も効くようになったらしい。






クリス

「ん〜! ん〜!」


「へへへ、あの野郎には世話になったからなぁ。今度はさっきよりも強引にいかせてもらうぜ」


クリス

(ごめんなさい勇者さん、いきなり足引っ張っちゃったみたいで、でもあの人は助けないって言ってたもんね。期待しちゃ、ダメだよね)


ビリッ


クリス

「んんっ!」


「ハハハハハハハッ! いい様だぜお嬢ちゃん!」


クリス

(ダメなのに、期待しちゃダメなのに、助けて、勇者さん………!)


ドゴーンッ


全員

「ッ!?」


カツッ、カツッ、カツッ


「………」


「お、お前は、」


「なぁ、俺言ったよなぁ? 次何かしたらブタ箱行きで済むと思うなってさぁ?」


「………ハッ! あの時は2人だったがなぁ、今回は10倍! 20人だ!」


クリス

「んんっ! んんっ!」


クリス

(なんで、なんで助けに来たのあの人は!?)


「いい趣味してるじゃんか。俺にもやらせろよ。獲物はお前らだけど………!」ボォ


「な、なんだよ、あの十字架………?」


「レベルが上がってさぁ、『物資鑑定』ってスキルが付属されて見えるようになったんだよね。だからやっと、使い方がわかったよ。コイツの使い方」スッ


ゴォォォォォォッ


「コイツの名前は『魔槍・アスモデウス』。悪魔の名を模して作られた槍だ。槍と言っても、コイツは所有者の意思に従ってその性質を変化させる。例えるなら、」


ボォ


「ゼァッ!」


ドゴーンッ


「ぐぁぁぁぁぁッ!!!」


「こうやって大槌にしたり、」ボォ


ザンッ、ザシュッ


「斧や鎌、ましてや、」ボォ


「どっかの黒い聖剣にだってできるッ!」


ズォォォォォォォォォォォッ


「ギャァァァァァァァァァッ!!!!!」


「………」ブンッ


「ま、待て! こっちには人質がいるんだぞ! コイツが死んでもいいのか!?」


「でも逆に言えばさぁ、そいつがいなくなったらお前は終わりだよね?」


「お、おい、仲間を見捨てるなんて真似、」


「好きな方を選びなよ。ブタ箱行きと、私の仲間と心中するの。どっちがいい?」スチャ




「治安の悪い町だことで。戦争中は色々と溜まるらしいな」


クリス

「あの、勇者さん、」


「ん?」


クリス

「その、助けてくれて、ありがとうございました!」


「………」ジーッ


クリス

「えっ! ちょっ、何ですか!?」


「いや、ギリギリのところ間に合ったらしいな」


クリス

「〜〜〜ッ!」


「まぁ、間に合ってよかったよ」


クリス

「………何ですかそれ、結局助けに来ちゃったじゃないですか、」


「余裕があっただけだ。本当なら見捨ててたよ」


クリス

「………やっぱり、勇者さんは勇者です」


「………帰って寝る」


クリス

「あ、」


「あと用心の為に部屋は1つ返すから、今夜は俺の部屋で寝ろ」


クリス

「はい! って、えぇ!?」


クリス

(ちょっと待って! 俺の部屋でってやっぱりそう言うこと!? 師匠にはいろいろと教えてもらったけど、心の準備が!)


クリス

「あ、あの! 勇者さん!」


「うした?」


クリス

「その、優しくして下さいね?」


「あ? んん、まぁ、いろいろ疲れただろうしな。わかった」


クリス

(でも、やっと心を開いてくれたんですね。勇者さん)


このあと、クリスをある程度介護した後に寝付くのを待ってぐっすり寝た。


勿論クリスにベッドを貸したから床で寝た。


寝る前にクリスが何かブツブツ言っていたが、敢えて聞き取らなかった。


クリス

「うん、大体予想はしてた」シュンッ






今回の収穫、


『俺』 Lv 12(+7)


・武器の使い方


・スキル「物資鑑定」


・スキル「魔力感知」


・ステータス向上


・フラグ建築?


『クリス』 Lv 7(+5)


・ステータス向上


・火属性


・満腹感


・やるせなさ

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[良い点] 文章が読みやすくて、読んでいて、とても楽しかったです。生真面目で素直なヒロイン。素直になれない勇者。いい短編でした。
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