暗闇と君と一言と
暗闇
は、別に好きではないです。
でも、隣に人がいると、その人と世界で2人だけの気分になる。変でしょうか。
でも、きっと誰かもそう思っているのではないかと、ふと考えるのです。
好きな人がいます。
僕の、隣にいる人です。
暗がりの中、学園祭の音響係の僕と司会の彼女は、閉会式中だけ二人きりです。
でも、後ろには先生がいて、机を挟んだ前には全校生徒がいます。
それでも、閉会宣言のVTRを笑いながら見る彼女と、時々彼女を見ながら同じく笑う僕は、今だけ2人だけの世界にいるはずです。
僕は、彼女がとても綺麗に見えています。
僕は、彼女が好きです。
隣にいられるだけで、年に一度くらい話せるだけで、僕は幸せになれます。
彼女は僕のことを、ただの一昨年同じクラスだった人としか認識していないでしょう。
だからその認識を変えたい。
でも、高校まで先延ばすこにしました。
しかし、僕の成績は、中のどちらかと言うと上。
彼女の成績は、上の上。
果たして同じ高校に行けるのでしょうか。
でも頑張りたい。
何があっても、なるべく近くで彼女を想いたい。
結局、これは先伸ばすための言い訳ですが。
「大斗くん、そろそろ」
「あ、はいっ?」
小声で、彼女が僕を呼びました。
いつの間にか閉会式は終わり、周りは明るくなっていました。
「あ、ごめんありがとう」
「うん」
最後の学園祭の準備期間に入ってから、僕と彼女は話を良くするようになりました。
この夢みたいな日々を、僕は一生忘れないでしょう。
司会台の前に、彼女が立ちます。
『これから、15分間の休憩時間となります。閉祭式の準備に関わる生徒は舞台の方に集まり、他の人はなるべく近づかないようお願い致します。それでは、休憩に入ってください。』
言い終わった彼女がこちらを見て、僕はテーマソングを流し始めます。
……これで、終わり。
もうしばらくは、彼女と話す機会はないでしょう。
僕は、ふう、と息を吹きました。
悲しく重い息は、どこかへ飛んでいき、僕はそれ追いかけるように席を立ちました。
「おつかれっ」
「………え?」
振り向くと、彼女が嬉しそうに、戸惑ったように僕を真っ直ぐ見ていました。
少女マンガのような胸の高鳴りがこだまして、僕は何も言えませんでした。
すると、少し残念そうな苦笑を浮かべ、彼女は通り過ぎて行きました。
………………あっ
「おっ、おつかれ、風華!」
頑張って出した声は、
通行人にしか聞こえなかったようでした。