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エッセイ

さようならミカン

作者: 久賀 広一

小説のようなタイトルですが、申し訳ありません。いつものごとく雑記であります。


・・・先日、買い物に出る際に、庭で一つのミカンを発見しました。

ミカンというか、”はっさく”でした。


「はて、何でこんなところに?」

とは思ったものの、ウチの隣家は裏山に果樹畑を展開していて、そこから転がってきたとしか考えられません。


今までにも落葉樹には苦労させられ、柿などはいくらか落ちてきたことはあったのですが、さすがに丸々としたはっさくが転がってきたのは初めてです。


山を見上げて、その落ちてきたルートを想像するに、なかなか奇跡的なコースを通ってわが家の狭い庭に入ってきたようです。


「これも何かの縁だろう。頂いておこう(ご高齢の隣家で、以前「っている果実はご自由に食べていいですよ」と言われていたので)」

すすのようなものが付いていて、お世辞にも綺麗な外見とは言えませんが、僕はそれを拾ってみる気になりました。


何故なら、その長年の付き合いがある隣家の夫婦は、しばらく前に介護施設に入ってしまわれたのです。


とくに仲が良かったわけではありませんが、年に一度の自治会の総会では、よくご主人が隣の席にやってきて、「息子が結婚せんでのう・・・。どうじゃ、あんたもまだなのか?」などと飲みながら楽しい内輪うちわ話を聞かせてくれたものです。


・・・まあ実のところ、そのはっさくを拾う気になったのは、個人的な理由だったんですけどね。


(これ、拾って食べたら、エッセイ一本書けるんじゃね?)

というあまりにセコい考えが頭をよぎったのです。


どんだけネタが不足しているのかもう自分でも分からない状況ですが、とにかくそんなこんなで、買い物から帰ってそれを食べてみました。


・・・普通のはっさくです。

味は少し淡白ですが、店に置いていても問題のない出来でした。


というか、隣のおじいさんがその木を手入れしている所なんて、ほとんど見たことがない。

だから、まあ勝手にそこまでのクオリティに木がやってくれたんですね。


周囲の誰にも断らず、突然アルツハイマーの奥さんと施設に入ってしまわれたMさん・・・スペイン内戦に突撃し、人民戦線に加わった行動派作家『ヘミングウェイ』にはとても及びませんが、僕はあなたが落としたミカンを食べて、エッセイが一本書けました。


「あの木には、何が生ってるんだろう?」


20年近く考えさせられて、その答えがはっさくだったこと、今日知ることができました。

ありがとう。















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― 新着の感想 ―
[一言] 小さなことだとしても、20年越しの疑問氷解は気持ち良さそうですね笑 ネタ不足と言ってますけど、エッセイをほとんど書かない身からすれば、身近なところからあれだけネタを引っ張ってこれるのはすご…
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