第2話 承諾
僕が首を横に振ったのを見ていたはずだが、龍は間髪入れずにもう1度僕に説いた
「サークル入らない?ミステリー興味ない?」
「僕がいつミステリー好きだと言った?それにすぐに断っただろ」
龍の質問をすべて否定した。しかし龍は僕の苦手な納豆のようだ。
「好きか嫌いかは聞いてないよ。興味があればいい。それに首振っただけじゃん」
なぜここまでしつこく誘ってくるのか。僕には多少の心当たりがあった。
僕たちが在籍している明彬大学は都内にキャンパスを置く大学の中でも大所帯の大学だ。
そのため生徒数も多く、多数のサークルや部活動が存在する。
しかし、全てのサークルが満足に活動できるとは限らない。
明彬大学ではサークルごとに定められた定員数を割ると活動停止になってしまうのだ。
「なぁカズ…ほんとに入ってくれないのか?うち定員割れで…」
僕の考えは当たっていた。
ミステリー研究会も定員割れで活動停止の危機に追い込まれているようだ。
「実は俺もミステリーに興味があるわけじゃないんだ。ただ知り合いに頼まれて…」
龍は苦笑いをしながら、白状した。
ミステリー研究会に加入したということは前に聞いていたが、理由は聞いていなかった。
しかし今、それが分かった。それと同等の形で僕は勧誘されている。
「わかった、わかったよ。1回見学にでも行くよ。」
僕は粘られるのが苦手だ。龍はそれを承知の上で頼んできたのだろう。
「カズならそう言ってくれると思ったぜ!早速今日行こう!」
早速過ぎるだろと思っているところに、
カレーを温め終えた泉がバタバタと戻ってきた。
「私抜きで何を盛り上がっているの?」
「泉いいところに帰ってきたな!これからカズとサークル行くんだけど泉も行かない?」
「あ、カズ君サークル入るの?けど私はパス。バスケがあるもの」
泉は誘いをあっさり断った。僕にはできない芸当だ。
「そうですか。じゃあ俺たち行くから!泉さんはカレーでも食べててください」
「言われなくても食べます!」
2人の会話をぼーっと聞いているうちに龍はもう出発の支度をしていた。
僕も急いで捲っていたカーディガンの袖を下ろし、重い腰を持ち上げた。
「カズ早く行くぞ。途中でどこか行くなよ?」
「急いだってどこにも逃げないよ」
「行ってらっしゃーい。」
泉を置いて足早に進む龍に僕はついていくしかなかった。
第2話です。
ゆっくり書いています。