第1話 サークル勧誘
「おーい、カズこっちに席あるぞー!」
ガヤガヤと多くの雑音が混じり合う食堂の奥から元気な声が僕の耳に届いた。
僕は人混みを避けるため、回り道をしながら声の主のもとへ向かった。
「お前は本当に人混み嫌いだよな」
と、好物の目玉焼きハンバーグを頬張りながら僕の友人、龍は言う。
「食べるのか、話すのかどっちかにしなよ」
少しため息をつき龍に忠告をした。
「食べたいし、話したいからいいんです」
勝手というか、能天気というか。これは彼の性格なので仕方ないと思い僕は席に腰掛けた。
龍は僕の数少ない友人の1人だ。
いつも明るく、能天気。ほかに友達は多いはずだが僕と行動を共にすることがほとんどだ。
龍の髪の毛を見て、また色が明るくなったな。と考えていると龍は再び口を開いた
「はやく飯食えよ。冷めるぞ?」
今度は僕が龍に忠告されてしまった。
僕は、食堂のおばちゃんが揚げてくれる好物のから揚げを口に運び、みそ汁をひと口飲んだ。
普段から口数の多い方ではない僕だが、龍との会話は弾む。
「カズ、お前彼女とか作らないの?」
龍がにやにやしながらお決まりの話題を振ってきた。
「いると思うか?というか昨日もこの話しただろう」
「やっぱり気になるだろ?昨日いなくても今日できたかもしれないし」
他愛もない会話をだらだらとしているうちに龍より元気な声が2人のもとにやってきた。
「おぉー男子諸君、またくだらない会議でもしているのかな?」
「くだらないとはなんだ!健全な男子の会話だろ」
元気な女子のちょっかいに龍が食いつく。
「泉の方こそ、彼氏いないだろ!」
「なんですって?私は別にいいんです!」
2人はふざけながら言い合いをしている。
ちょっかいを出しに来た女子。泉は僕が唯一心を許している女子である。
女子にしては少し背が高く、男勝りな性格であり僕が好きそうな会話を振ってくれて
話しやすいと感じだからであろう。
けれど、初めて話しかけたのは僕である
普段、僕から女子に話しかける事などほとんどないが
彼女が身に付けている赤く輝く石のついた髪留めになぜか心惹かれたのだ。
「おいおいおい、俺だって彼女いたことはあるぜ?」
「そうですかそうですか。」
あぁまだ、話は続いている。
こうなると会話に巻き込まれないようにから揚げを頬張りながら僕は会話を聞き流す。
しばらくすると、
「もう!カレーが冷めちゃったじゃん。バカ!」
「おい!話振ってきたのはどっちだよ。電子レンジあるからさっさと温めて来いよ。」
話はやっと終わったみたいだ。
彼女がカレーを温めに行ったのを見計らって龍が僕に話しかけてきた。
「なぁカズ、お前サークルとか興味ない?ミステリー研究会って所なんだけど」
僕は最後のから揚げを飲み込むと同時に首を横に振った。
第1話です。
これから気長に投稿していきます。
よろしくお願いします。