真相とパーフェクト・エピローグ
「今回はまずまずだと思うよ」
友はそう言って、今まで読んでいた原稿から顔を上げた。
「相変わらず、上から目線だな」
「そんなことは今現在この場において関係ないからあえて無視するけれど、今回は本当に良いと思っているよ」
俺の言葉を無視しておいて、何をぬけぬけとそんなことを。
なんて、心の中で思ってみるものの、口には出さないでおく。
「矛盾点はなかった?」
俺は恐る恐る訊いた。
「まあ、なかったよ」
俺は小さくガッツポーズをした。
「でも、ちょっとお題からズレ過ぎてやしないかい?」
友は鞄から二枚のカードを取り出しそう言った。
ヒロイン・妹
エンディング・ハッピーエンド
「ヒロイン最後の空気だったけど──いや、そもそも途中までのバッドエンド感と最後のあっさりとしたハッピーエンドがまったく繋がらなかったんだけど」
俺の心にナイフが突き立てられていく。
何度も何度も刺されている。
死にそうだ。
その前にこの二枚のカードについて早々に説明をしなければならない。
このカードは見ての通り二種類のカードから構成されている。
『ヒロインカード』と『エンディングカード』だ。
文字通り、ヒロインの立場が書かれているカードと、物語の終わり方を決めるカードである。
このカードは、俺と友の娯楽用品の中でも最も重宝されているものだ。
もう気づいているかもしれないが──そう、このカードに書かれていることを元にして、俺と友は小説を書いている。
単なる遊びである。
これに遊び以上の何かを取り入れるつもりもまったくなく、俺は友とこんなに楽しい遊びができることに少々誇らしげに思う必要がありそうである。
どうも、小説の中以外では文が拙く──というか、上手く解説できないな。今度特訓してみるか……。
「次回は善処しよう」
口から出たのはそんな上っ面な回答だった。おそらくそれを感じとったのだろう友は、再び鞄からカードを──しかしながら、今回は束で──取り出したのだった。
「僕がお手本を見せてあげよう」
友はニヤリと笑った。
友の最近のブームなのだろう。俺が書いた小説の外でも友はよくそんな表情する。
「やってみろ」
俺も対抗してニヤリと笑ってみる。
お互いにニヤリと笑っているという傍から見たらすごく気持ち悪いだろう行為をしている俺たち。
痛い。片仮名では表現しないが痛い。
「さて、引くか」
友がそう言いながら、さっき取り出したカードの束をこちらに渡してくる。
いわゆるシャッフルしろということだ。友はその飄々とした態度とは裏腹に、不正は絶対許さないマンでもあるのだ。
意外すぎる。
そんな感想を関係者全員から言われていた。
まあ、俺は言われるままにカードをシャッフルし、二つの束を作った。無論、ヒロイン束エンディング束の二つだ。
そして出来上がった二つの束に友の両手がのびる。
俺は無意識にであろうが、息を飲んでいた。
そして、各束から一枚ずつ、合計にして二枚のカードがめくられた。
この瞬間、新たな世界が誕生した。
ヒロイン・ロリ
エンディング・シュガーエンド
今までありがとうございました。
いつかまた、会える日を願っております。




