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青年と幼女

「今日はいい仕事したなぁ」

 好児は家に入るとそうつぶやいた。

「たりなかった幼女の笑顔も見れたし最高だな」

 好児は満足そうにそうつぶやく。

「でも、疲れた」

 少しだるそうに、ベットに身体を投げ出した。

 好児の家は高級感にあふれている。隅から隅まで、騎士王という名に恥じないものを使っているからのようだ。

 好児の感想は「いつ見ても息がつまる家」だそうだ。

 好児はいつも通り夕飯を作り、就寝支度をしてベッドに倒れこんだ。

 好児は今日友也に言われたことを思い返し、こうつぶやいた。

「はぁ~あ、何の責任もなく、ただ幼女の側にいられて、護れて、愛でられるそんな存在になりたいな」

 愚痴と微かな願いを込めたつぶやきだった。

 それはただの疲れた騎士王のつぶやき、叶わない夢物語。それで終わる──────────はずだった。

 好児は、意識を失った。




「ねぇねぇ、今日、一人のお兄ちゃんにたすけてもらったんだよ」

 愛は両親に向かってそう言った。

「へぇ、どんな人なんだい?」

 父は愛に訪ねた。

「幼井好児って言う名前で、すごくやさしいんだよ」

「それは良かったわねぇ」

 母は愛に言った。

 それに対し、父は

「その人って、綺麗な白髪に金色の目をした人だったか」

 と、愛に質問した。

「そうだけど、お父さんしってるの?」

「ああ、その人は騎士団の王、騎士王、幼井好児だよ」

 愛は聞いた。

「騎士団ってなに?」

 父は言いよどんだ。

 騎士団という組織を幼女は知らない。これは小学校でも習うことはなく、中学校になりようやく教えられるのだ。だが、その前に親は幼女に騎士団は子供を護ってくれるということを教えなければならない。

 いかに頼もしい組織として印象付けるかが、父親の腕の見せ所だ。

「騎士団ってのは、子供を悪い奴らから護ってくれる人達なんだ」

「悪い奴ら?」

 愛は父に聞いた。

「子供に危害を加えたり、怖い思いをさせたりする奴のことだよ」

 好久は、分かりやすく教えた。

「そうなんだ」

 愛は理解したようだ。

「じゃあ、幼井さんは強いの?」

「ああ、相当強い。確か・・・」

 父は愛に騎士王の凄さについて話した。

「すごいんだね」

 愛は感心したようにそう言った。

「失礼はなかったか」

「敬語でちゃんと話したよ、幼井さんも敬語だったし」

「そうか、それならいいんだ」

 父は安心したようにそう言った。

「どうしたの?」

 愛は先ほどから少し緊張しているようだった父に聞いた。

「それがな、愛。彼はお父さんの会社では少し嫌われているんだ」

「どうして?」

 愛は訳がわからないという風に聞いた。

「彼の強さは二〇〇年前から今までの力あるロリコンの中で、狂っているほどに強い。そのせいだよ」

 父の仕事は、新聞社の社員だ。そのため良い噂や、良くない噂もどんどん入ってくる。その中で、ある噂が浮上した。幼井好児は違法な方法で騎士王たる強さを手に入れたのではないかという噂だ。それは幼井好児についての情報が一〇歳以前のものが一切ないからだ。それはもう不自然ほどに。

 そう言うことを愛に伝えると

「そんな人じゃなかったよ!」

 という風に怒っていた。

「だよな、お父さんもそう思うよ」

 そう言うと、愛は少し冷静になった。

「そんなに、怒ったりして、騎士王のことでも好きになったか?」

「そっ、そんなわけないよ」

 愛は顔を赤らめて慌てたようにそう言った。




《取引を開始します》

 無機質な女性の声が響いた。

 好児はこの声を聞いたことがある。

《責任が存在せず、ただ幼女を側で護り愛でられる状態を提供します》

 好児はこの現象を知っている。『取引』であるからには、何かを要求することも。

《対価を要求します。提示してください》

 好児は考えを巡らせる。

 やがて、決まったのか声に出した。

 ちなみに、今、好児は意識を失っている。なのに何故声を出せるのかと言うと、夢の中でしゃべっている感覚と同じでしゃべれる。

「可能性でいいか?」

 好児は対価を提示した。

《対価を受け取りました》

 好児の出した対価は合格だった。

《取引を実行します》

 取引が開始された。

《異常発生、改善します》

 異常事態のようだが好児はほくそ笑んでいた。




 ここで少し昔話をしよう。

 一〇年前の話だ。もう、賢い人なら意味が分かっただろう。

 その少年(ショタだが、ロリコンだ)は人一倍弱かった。そのせいで周りの子供からいじめられていた。殴られ、蹴られ、そんな日々だった。いじめとしては簡易な方かも、しれないが、その痛みはとてもつらかったようだ。

 ある日、その少年はいつも通りいじめられた後、ふとつぶやいた。「強くなりたい」と。心を込めた、必死の決意だった。

 その時、起こったことがある。取引だ。

《取引を開始します》

《強さを提供します》

《対価を要求します。提供してください》

 その少年は、提供できるものがなかった。

《自動で対価を選択します》

《決定、五感の内、味覚、嗅覚を対価とし、ペドフィリア九九九九体の討伐を命じます》

 少年の合意もなく、取引が実行された。

《取引を実行します》

《取引完了》

 その少年は強くなった。

 他のロリコンより、圧倒的に強い力、治癒力を手に入れた。

 失ったのは味覚と嗅覚だ。何も匂わない、何の味もしない。

 その少年、幼井好児はのちにもう一つ失っているものに気づいた。それは情報だ、好児がいじめられていたことや、弱かったことまで、消失していた。

 つまり、孤独になった。友也が現れるまでは。




《改善完了》

 可能性を差し出すということはこれから開花するかもしれない力を捨てることだ。

 前回の取引よって可能性が開花した場合相当な力が与えられることは確約されている。

 つまり、今の状態で相当強い。

 しかし、可能性を差し出せば強さが減ってしまう。弱くなってしまう。

 弱くなれば最初の取引に違反してしまう。取引の効果は絶対だ。「強くなる」という取引が成立している以上別の方法で処置が取られるのは誰でも想定できることだ。

《再び取引を実行します》

《取引完了》

 無機質な女性の声のでその言葉を聞いた。




 光が目元に当たる。それで、好児は目を覚ました。

「うっ、眩しい」

「それよりも、何が変わった?」

 好児はすぐ、変化したものについて調べることにした。

 好児はベッドから降りた。

「天井、高いな」

 天井がいつもより高い、たったそれだけのことで好児は気づいた。

「まさか」

 好児は走り出す。

 洗面所へと、その場所にある鏡を目指して。

 洗面所の鏡を見た好児は絶句した。

 そこに映ったのは、綺麗な白髪に金色の瞳。女性用の寝間着を着た、六歳くらいの可愛い幼女だった。

「ナニコレ?」

 その声は虚しく響くだけだった。

読んで頂きありがとうございました。

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