友の大考察
「じゃあ、説明させてもらおうかな。
「担当が生者とは何なのか?
「それは文字通りなのかもしれない。
「しかし、担当生者いるということは、逆に『担当死者』がいることの裏返しになる。
「もうわかってきだだろう?
「そう、まさに死者を天界へと導く、天使のようだ。
「じゃあ、その言葉の逆とは何かわかるかい?
「天使の逆だよ。
「そう、悪魔。
「生者の魂を食らう。
「まさに『担当生者』と言えるだろうね。
「しかし、今までの話を聞いている限り、悪魔さんは君に用があるみたいなんだよ。
「『眼』の持ち主に会いに来た。
「そして、去年君が見たという天使の羽。
「商品のことを言っているわけじゃない。
「翼と言い変えようかな。
「たしか君も『翼』と、そう形容していたからね。
「さて、ここからは僕の勝手な想像にしか過ぎないのだけれど、聞いてくれるかい?
「ありがとう。
「では。
「悪魔さんは自分を神の使徒と名乗った。
「僕にはその言葉が嘘だとは思えないけれど、しかし、一つだけ気になることがあった。
「神の使徒。
「それは普通、天使につけられるものだ。
「そこから発生した疑問をもとに、もう一回推測立て直してみたんだ。
「悪魔さんは、自分を人間が理解できる範囲にその意味を噛み砕いて教えてくれた。
「しかし、そもそもを考えるとわかりやすかった。
「天使。
「悪魔。
「それは『人間が考えた』架空の存在だということだよ。
「別にそれが架空の存在とは限らない。
「現に悪魔が目の前にいるからね。
「でも、その『悪魔』という名称は、人間が考えたものだ。
「だって、神とともに降り立った存在が人間を害する存在だなんて、誰も信じられない。
「だから人間は『名称』をつけた。
「死者を導く者を天使と。
「生者をかどわかす者を悪魔と。
「神が実在したかどうかはわからない。
「しかし、この地球に『神』と呼ばれるほどの上位存在が降り立ったことは確かなんだ。
「その正体なんて、僕たちの知るところじゃあないよ。
「でも、この場で一つだけ言えることそれは、
「天使と悪魔は、同質の存在。
「神に仕える、使徒だと、そういうことだよ。
「おいおい、信児。まだ、考察は半分も終わっていないんだけれど……。
「さて、気を取り直したところで、そろそろ本題に入ろう。
「君の『眼』。
「その眼がいわゆる『天使の翼』を知覚した時期を考えると、妹ちゃんが死ぬのは残り、五百日に至ったころだ。おそらく、その段階で妹ちゃんに何かを施したんだと思う。
「おそらく、印、『0』にするために必要手順だったんだよ。
「極秘だったはずだよ。
「天使が直々に、生者に干渉してるなんて、もし人間でも見られたら……。
「そういうことだと思う。
「君があの翼を見たから、悪魔さんはここに来たんじゃないかと思う。
「おそらく、その『眼』を奪うために。
「『0』が何を意味しているのか、僕には少ししか想像がつかないけれど、その少し……聞いてみるかい?
「そう、わかった。話すよ。
「おそらく、『0』が意味しているものは、不干渉の誓いだと思う。
「死者や、死の印をつけられた者を救わないためにつけられた安全装置。
「悪魔が接近したとき、近くにその該当者がいた場合に不用意に魂の回収を阻害しないためのものということだと思う。
「ん?
「ああ、どうして悪魔が接近したとき、そうしなければならないかって?
「簡単だよ。
「君も一度くらい聞いたことがあるはずだ。
「『悪魔』に関する最も有名な話なんだから。
「悪魔は魂と引き替えに三つの願いを叶える」
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