主治医の考察
昨日投稿するのを忘れていました。
すみません。
「まったく今回の結果にも驚いたよ。
「身体のどこにも異常はない。
「むしろ健康的と言ってもいいはずなのに、刻一刻とその身体は何かに蝕まれ、その身を焼いていく。
「もちろん、焼いていくという表現は比喩だよ。けどね、決して苦しんでいないわけじゃあない。
「痛がっていないわけじゃあない。
「恋さんは苦しみ、痛みに悶え続けているんだよ。現在進行形でね。
「そこで考えたんだ。
「なぜ?
「なぜ、彼女の病気はどの検査にも引っかからない?
「なぜ、彼女だけがこんなことになっている?
「なぜなぜなぜ……。
「一つだけ思い当たる節があった。
「その可能性も真っ先に考えられたはずなのに、心の中では常に否定し続けていた。それが事実だったならば、これまでの医学は前提から否定される。
「意味をなくす。
「どんなことをしても無駄になる。
「本当に、ただ新しいだけの普通に解決する病気だったらよかったのに。
「そういうことを医者に思わせたんだよ。
「この科学が発達し、なんでも治る時代になった世界に生きる、最新鋭の技術を使いこなす医者にだよ。
「自画自賛じゃない。ただの事実だ。君も病院に来たなら、来たことがあるならわかるだろう。この時代に原因不明の病気が存在していることの、危険性が……。
「ん? どういうことだって?
「……確かにそうだね。私もまだ、説明しきれていなかったね。
「つまり、だ。彼女の病気は病気ではないのではないか、という疑問を私は持っているわけだよ。
「もちろん、症状は現れている。それこそ現にね。
「現代の科学は進歩しすぎていて大抵の病気は治るようになっているんだけど、その技術ですら、君の妹──恋さんの症状を解明することができなかった。
「それはつまり、『私たちの使う理論とはまったく違う理論』に基づいているのではないかという疑問を、疑念を持たせるには十分なことだったということと同義である。
「古臭い喋り方でまどろっこしいのはわかるがそんな顔で聞かないでほしいな。傷ついてしまうではないか。
「私が傷ついたところで問題ないって感じがする眼だね。
「ああ、そうだ。まだ、私がその結論に至った理由を説明してはいなかった。
「私がその結論に至った理由、それは──」
君の眼だよ。
そう言った主治医の瞳は俺の『眼』の奥底を見据えているようだった。
読んで頂きありがとうございました。
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