幼女の可愛さ
「ふぅー疲れた」
好児は、今日の仕事、福居兄弟の試験だけなのだが、よほど疲れたようにそう言った。
「人相手にするのに、常に力おさえるの面倒だな」
力を抑えるのも意外と大変らしい。
自分の家に向かっていた好児は適当に辺りを巡回してから帰ることにしたようだ。
「異常なし」
ペドフィリアは物陰に身を潜めていることが多い。だから、好児は路地裏などをチェックしていた。
丁度五つ目のポイントをチェックし終わった時、好児は周りをキョロキョロしている幼女に出会った。
その幼女は、外見から六歳半ばと判断できる。きらびやかな黒髪に、吸い込まれるような黒い瞳を持ち、その露出している手足は透き通るように白く美しい。
その幼女はその体にとても似合う白いワンピースを着ていた。
この幼女はたった一言で表せる、「可愛い」という一言で。この可愛いにはたくさんの意味が込められている。
「たりない」
好児はそうつぶやき動き出した。
幼女に近づく上でまず最初に注意しなければならないことは、精神を落ち着かせ身体中から、人畜無害さをかもし出すことだ。
次に、視線だ。幼女を見るために必須なものだが、幼女と接する上では特に気にしなければいけない点でもある。見方によっては幼女を怯えさせてしまうからだ。
そうした注意事項を確認し、好児は幼女に近づいた。
「お嬢さん、大丈夫ですか?」
幼女に対して、紳士的な態度を取らなければならないのは、基本中の基本だ。
好児は再び優しく紳士的に声をかける。
「失礼、先ほどから困っていた様子なので、つい声をかけてしまいました」
そして少しずつ緊張をほどく。
「よろしければ、お名前を教えていただけませんか?」
幼女は少し戸惑い、少し迷ったように口を開いた。
「天使愛、です。あなたは?」
そう言われて好児は自分がまだ名乗っていないことに気づいたようだ。
「私は幼井好児です」
好児は幼女、愛から名前を引き出した。
「幼井さん」
好児は愛から名前を呼ばれた。
好児は言った。
「何かお困りですか?」
愛は少し言いづらそうにしながらも、言葉を紡いだ。
「えっと、その迷子になってしまいまして、もう七歳にもなってはずかしいかぎりです」
愛は恥ずかしそうにそう言った。好児はやはりそうかと思った。
「両親を探す手伝いましょうか?」
「えっ、いいんですか?」
愛は戸惑ったようにそう言った。
「はい、困っている美少女を助けるのは、紳士の務めなので」
「美っ、いいんですか? 幼井さん」
愛は好児を頼もしそうな目で見つめた。まだ少し緊張しているようだが。
「では、探すためにいくつか質問してもいいですか?」
好児は早速、探そうと愛に質問しようとした。
「はい、どうぞ」
「では、まず、愛さんは何時から一人なのですか?」
愛は少し思い出すようにして答えた。
「1時間くらい前です」
それを聞くと好児はしばらく黙りこんだ。
「ご両親の今日の服装を教えていただけませんか?」
好児は愛に両親の名前や服装を聞いた。
「今日のふくそうはーーー」
好児は愛から両親の情報を聞き出すとある行動を実行した。
「では、早く行きましょう」
好児は極めて自然に愛に左手を差し出した。
「分かりました」
好児の手を愛は握った。
「あの方達ですか?」
好児は周りをキョロキョロしている若い二人組を指さしてそう言った。
「はい! お父さんとお母さんです!」
愛は今にも飛び出しそうな勢いでそう言った。
「ご両親は愛さんの捜索願を出しに来ていたのでしょう」
両親を見つけた場所は交番の近くだった。
好児は愛に早く行くように言った。
「その、ありがとうございます」
世界が赤く染まった。
夕日が射し込む時間になったようだ。
「どういたしまして」
「あの、名前で呼んでもいいですか? もちろん私のことも呼び捨てでいいですし」
愛は好児に心を開いた。
「じゃあ、愛」
「なに?」
会話がくだけた感じとなった。
「元気でね」
「はい!」
愛は、満面の笑みでそう言った。
騎士団の信念にこういうものがある。「幼女の笑顔に勝る報酬なし」と。
読んで頂きありがとうございました。
評価等よろしくお願いします。