寿命と愛
8日の更新忘れていました。
お詫びに、次の話も投稿いたしました。
01・00・03・04・58・37。
それが、俺の妹の寿命である。
幼井恋の寿命である。
幼井恋の寿命は残りわずかなのである。一年その短い時間を生き抜いたとき恋は──妹は死ぬ。
普遍的な摂理だ。世界が、人間が繰り返してきた単純なサイクルだ。誰にも止められはしない。
そう、救えないのだ。こんな能力を、『眼』を持っていたところでなんの役にも立たない。誰も──妹すらも救えないのだ。
友がいくらこの『眼』褒めてもそれは変わらない。変わることがない。変わるはずがないのだ。
もう、何回も何回も試した医師に提案したり、妹自身に語りかけもした。妹に語りかけるのは本当に特に何もない無意味なものだったけれど、医師への提案それすらも意味をなさなかったことに俺は絶望した。ただただ絶望した。この世界に希望がないことを知ったのだ。
そんなこんなで、回想終了。
ところで。
『ところで』という言葉使うだけで世界は反転する。逆転する。
『しかし』とは違うのはもう前の話が完全に途切れてしまうところにあると思っている。
思っているではない。そうなのだ。実際にそうなのだ。
くだらない子どもの言葉として丁重に、懇切丁寧に無視してくれてかまわない。しかしながら、乱暴に無視するのはやめてほしい。静かに無視するのもやめてほしい。
…………すまない。脱線が過ぎたようだ。
では、『ところで』から始めよう。
始まっていなかった物語を始め、そして、進めよう。
ところで、意外かもしれないが、俺と恋の関係は極めて良好である。
噛み砕いた言いかたをすれば、俺と恋は仲が良い。
仲が良いとは言っても、傍から見れば、『妹離れできない兄』と『兄離れできない妹』というだけの話なのだ。
それ以上でもそれ以下でもないのだ。俺が変化を望んだところで何も変わらない。何も変えられない。
──君は妹ちゃんとの関係を変えたいと思っているのかい?
たしかこの話をしたとき、友に言われた言葉だった。
その言葉に俺は自分の意思で首肯した。するしかなかった。つまり、俺の心がそれを望んでいたのだ。
なんとも馬鹿な話である。自分でもわかっているくせに、変化を求めずにはいられない。
…………結論から言おう。そのほうがいい。俺がみっともないことを口に出す前に、俺の心を言葉にしよう。
俺は──、
俺は恋が好きなのだ。
妹としてじゃあない。家族としてじゃあない。立派な異性として、これ以上なく、好きで好きで──愛している。
おっと、そんなことをしている間に病院に到着してしまったようだ。いや、『ようだ』はおかしいな、自分の行動なんだから。
それはともかくとして、俺は今、病院に着いた。そして………………恋の病室にたどり着いた。
「お兄ちゃん!」
ひどく可愛らしい声だった。
脳が蕩けてしまいそうである。そんな表現をするから、友にきもいと言われるのかもしれないな。
──かもしれない?
──なんの冗談を言っているんだい?
──君はキモイ。
──そう、キモイのさ。
普段はほとんど使わない片仮名発音で俺を嘲笑う友の姿がありありと眼に浮かぶ。
それでも俺は突き進む。
「ごめん、遅くなった」
心からの懺悔だ。
いつも言う形ばかりのものとは量も質も段違いの逸品だ。
「ううん、ぜんぜんおそくないよ」
ううん、という言葉通りに恋は首を振って答えた。
か、可愛い!
思わず感嘆符をつけてしまうくらい可愛かった。
恋の容姿についての描写に入るので、嫌なら、読み飛ばしてくれても構わない。具体的に言うならば、第四節まで飛ばしてくれて構わない。
だって──、
だって、第三節は全部、恋の容姿について語るのだから。
読んで頂きありがとうございました。
評価等よろしくお願いします。




