裏切り②
「まさか、俺達、騎士団が騙されるとはな」
好美はつぶやいた。
「全くだ」
友也も同意する。
「俺達の組織にはそれだけの力を持つ仙人がいるからな」
律は当たり前のようにそう言った。
「騙していてすみませんでした」
平正は頭を下げた。
「別にいいよ、任務だったんだから」
好美は頭を上げるように言う。
「ありがとうございます」
平正はそう言った。
「改めて、俺は幼井好美だ」
好美は自己紹介をした。
「俺は騎士団所属、兵士長、奥野友也だ」
友也も自己紹介をした。
「私は桃源郷所属、仙人、福居平正です」
「同じく桃源郷所属、仙人、福居勝だ」
福居兄弟も自己紹介をした。
「自己紹介は終わったか?」
律が聞いてきた。
「ああ、終わったよ」
好美は答えた。
「そうか、じゃあ、これからのことを考えよう」
律はそう言った。
「ペドフィリアの大量発生のことだけど、厳密に言えば大量発生ではない」
律が言った言葉に好美と友也は驚いていた。
「それってどういう」
好美が質問しようとしたところ、律が手のひらを向けて好美を止めた。
「それは、大量発生事態はもうずいぶん前から始まっている」
律は語る。
「ペドフィリアは進化していっている」
律は語る。
「特に戦術に関してはもう俺達を越えているだろう」
律は語る。驚くべきペドフィリアの力を。
「これは俺の持論だが、ペドフィリアは欲望の集合体であり、意思の塊だ」
律は語る。自身が必死に考えて導きだした持論を。
「故に実態がない、俺達が倒しているのはそれが実体化したものである可能性が非常に高い」
律は語る。
「そうだとしたら、驚きの仮説が浮かびあがって来たんだ」
律は語る。
「ペドフィリアの総数は俺達が思っている以上に多いのではないかという仮説だ」
律は語る。
「この仮説が正しかったらペドフィリアは今日出てくる可能性が高い」
律は語る。
「今日は騎士団の強者がいつもより少ない、少なすぎる」
律は語る。
「だから、今日なんだ」
律は語り終わった。
「以上だ。何か質問はあるか?」
律は質問があるかと聞いた。
「そうか、ないか」
この場の誰もがこの仮説に納得していた。
「それで、好美に一つお願いがあるんだが」
律は好美に言った。
「何だ?」
好美は聞いた。
「取引を使ってくれないか」
それを聞いた好美は身構えた。
魂を使わされるとでも思ったのだろう。
「もちろん、魂は使わせないさ」
律がそう言ったことで好美は脱力した。
「そうか、何に使うんだ?」
好美は律に聞いた。
「今の仮説を確かめて欲しい」
律はそう言った。
「どうやって?」
好美は困惑していた。
「『全能』の魔眼を持ってたお前なら知っているだろうけど『情報』の魔眼ではペドフィリアのことは調べられない」
律は好美に言う。
「『情報』の魔眼を越える情報系の力をもらって使って欲しい」
律は好美にお願いした。
「いいよ」
好美は対して悩む様子もなく答えた。
「いいのか? そんな簡単に」
律もあまりにも早い答えに戸惑っているようだ。
「もちろん」
好美はニコッと笑って答えた、
しかし、律に反応はない。さすが『仙人(不能)』ってところか。
「じゃあ、始める」
好美はそう言って取引を始めた。
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