フムベカラズ
「フム♪ フム♪ フムベカラズ~♪」
金色に輝く麦畑の間の一本道。
空は高く、小鳥が囀ずります。
バケツの兜に木の枝の剣。
晴れているのに揃って長靴。
村の子どもたち三人が行進しながら歌います。
「フム♪ フム♪ フムベカラズ~♪」
毛皮のベストを着たおじさんが通りかかりました。
「踏むべからず?何だい、そりゃあ?」
先頭の男の子が答えます。
「あの丘に咲いてる花だよ。踏んだらその日の内に死んじゃうんだって!」
「へえ、そんな花があるのかい!教えてくれてありがとよ」
おじさんはそう言って歩いていきました。
子どもたちは小川に沿って行進します。
「フム♪ フム♪ フムベカラズ~♪」
小川でおばさんが鍋を洗っていました。
「聞いたことのない歌だねえ。何の歌なのかい?」
三つ編みの女の子が答えます。
「あの丘に咲いてる花の歌だよー。踏んだらあっという間に死んじゃうんだってー!」
「まあ、怖い!おっかないねえ」
おばさんは鍋をじゃぶじゃぶ洗いながら言いました。
子どもたちは落ち葉の上を行進します。
「フム♪ フム♪ フムベカラズ~♪」
弓を持ったおじいさんが切り株に座っていました。
「何じゃ?その歌は。初めて聞くのう」
眼鏡の男の子が答えます。
「あの丘に咲いてる花のことさ!踏むとたちどころに死ぬんだって!」
「なんと!それは気をつけねばならんのう」
おじいさんはにっこり笑って言いました。
子どもたちは行進しながら花咲く丘を登ります。
「フム♪ フム♪ フムベカラズ~♪」
丘の頂上には小さな穴がありました。
穴の前に子どもたちは整列します。
「ようし、今日の任務、おわり!」
「おわり!」
「おわりっ!」
子どもたちは揃って敬礼したあと、くすくす笑い出しました。
「みんな、怖がってたね」
「ほんと、ほんと!」
「これでだあれも近づけないね!」
そして、三つの頭をくっつけて穴を覗きこみます。
「ちっこいなあ」
「うん、ちっちゃい」
「かわいいねえ」
それは野兎の巣穴でした。
穴のからお母さん兎と三羽の子兎が、不思議そうに子どもたちを見ています。
「ようし、明日も行進だ!」
「うん、がんばろー!」
「おー!」
そうして子どもたちは、フムベカラズの花畑を輪になって歌うのでした。
「フム♪ フム♪ フムベカラズ~♪」