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閑話 魔王誕生

魔大陸へ飛ばされたハドウの閑話の続きです。

羽藤がファニエの転移魔法陣の罠にかかり飛ばされた直後、かつてゼノンたちが飛ばされたあの牢屋の中に転移していた。



「ふぅー、私の魔力とハドウさんの魔力を使って転移しましたが…やはり転移魔法陣は疲れますね、もうへとへとですよ」

「……」

「あれ? だんまりですかハドウさん。あっ、もう魔王様って呼んだほうがいいですかね? 怒らないでくださいよー」

「……いや、怒ってないよ。ただその魔王様っていうのはちょっと似合わないかな、俺ってそんなタイプじゃないし」


(……とりあえず体は無事のようだけどこれ外にでかい反応がいくつかあるな。魔力の気配を感知できるわけじゃないけど、さすがにロイルさんクラスの気配が何人もあつまってたら違和感ありすぎだ…落ち着いて行動しなきゃな)


魔公爵側は人形の公爵魔族を除いたすべてが揃っていた。

ファニエが羽藤に接触したときから連絡を受け取り待機していたのだ。


「いや~それにしてもあの人形、じゃなかったマモン家の方には感謝しなきゃですね~。ハドウさんの居場所も魔公爵様との連絡も一人で受け持ってくれたんですから。さて、そろそろここから出ましょうかっ」

「……」


(まずい、この場で取るべき行動がわからない。ファニエさん個人への対応はなんとでもなるが、まだ顔も見ていない強大な魔族の相手も計算に入れると下手なことができない。俺は他人の目を気にしてだいたいの思惑を察知するのは自信があるが、頭がいいわけじゃないんだ。こんなのハードモードどころじゃないぞ……)


そして羽藤がヴェルゼブブ家の広間までたどり着くと、そこには筋肉の魔族・子供姿の魔族・ぶよぶよに太った魔族・黒い翼をもった天使のような魔族と、それに連なるだろう数多の魔族がいた。


「フム、あなたが召喚されし魔王殿か。確かに潜在的な魂から凄まじいプレッシャーを感じる、成長を遂げれば最強の魔王以外のなにものでもないな」

「ファニエ、よくやったじゃん。さすがあたしの娘じゃん」

「お母様っ! 私やりましたよっ、さすがにハドウさんは一筋縄ではいきませんでしたけどね?」


魔族たちの当主はハドウの奪還に大いに喜んでいた。

だがそれは当主に限ったことであり、魔公爵家の長男の一人にそのことを良く思わない者もいた。


「確かにこの魔王の魂からは異常なプレッシャーを感じるし、成長すればこの僕ですら一瞬で消し炭になりかねないのは分かるんだけどねぇ。でも所詮はまだひよっこ魔王みだいしさぁ? なんでそんな畏まる必要があるの分からないねぇ。人間大陸にいる父さんからは優秀って聞いていたけど、とてもそうは思えないなぁ~」


動く人形を傍に侍らせている魔族、マモン家の者だった。


「ぐふぉふぉ、……考えが若いなマモン家の跡取り。確かにレベルはまだ低いが問題なのはその存在の質だと思わんか?それにあの魔力量を察知してみろ、既にレヴィアタン家の当主と互角の域まで達している…ぐふ…」

「フム、それならこういうのはどうだ? ここまで連れてきた実績のあるファニエ孃とマモン家の跡取りで魔王殿と行動を共にするというのは。それで納得いかなければ決闘でもなんでもすればよい、しょせん魔族は結果がすべてだ」

「うぅ~ん? まぁ、それでもいいやぁ」

「……」


(なんだなんだ!? 俺抜きで勝手に話しが進んでいるけど、あんたらそもそも誰だよ。魔公爵家っていうからには、魔王のワンランク下なんじゃないかってくらいは把握できるけど、目的が見えてこない。仕方ないし、こちらからアクションを起こすか。ていうかあの人形を侍らせている奴の顔、絶対納得してないな。準備しておいてよかった)


「つまり俺はあんたらの上司ってわけだな、まだ未熟だから認められるには時間がかかるって話だと把握しているが、とりあえず俺はなにをすればいい?」

「……えぇ~っとねぇ~? それはこの僕、アーゼイン・マモンと、戦ってから決めるよッ!!」

「ヌ!? おいアーゼイン!! やめろ!」


そのとき、アーゼインが針のように爪を伸ばして襲い掛かってきた。


(やっぱり仕掛けてきたか、まぁ知ってたけどね。だから話が始まった段階ですでに全力で身体強化をはじめていたんだ、魔力はもう残り7割ほどまで減った。あとはアンチスキルでさらに魔力の低下を狙う)


「【アンチスキル】」

「ぐぁ!?」

「……からの、【紅蓮剣・豪】」


……ドゴォン。


「ぐっ、ククク、痛いねぇ? その未熟さには釣り合わない攻撃力だ、……いいよ少しの間だけ見極めてあげる」

「……そりゃどうも」


(……こいつ、まだやる気だ。もうあからさまな不意打ちはないだろうけど、油断したらまたなんかやってきそうな雰囲気だ。それにあの背後にいる人形も魔族と連動して動いていた…あいつのスキルがだいたいわかってきたな)


羽藤はアーゼインの攻撃を完全に看破していた。

いや、アーゼインというよりは魔族たちを見渡した瞬間に自分に対して悪意を持っている者を肌で感じ取っていたのだ。


それゆえに、身体強化すらしていないアーゼインの攻撃はハドウには届かなかった。


「フム、見事だ魔王どの。それでは儀式に入るとしようか」


(何をすればいいって聞いたけど儀式ってなんだ? そんな魔法知らないけど、おそらくマイナスエネルギーのチャージか何かによる強化だろう。それで性格が変わるとかそういうこと期待してるなら無駄だ。ロイルさんのステータスを見せてもらって分かったけど、原住民に比べて召喚者は全員精神値が高いんだ。アンチスキルの耐性と合わせればそんな儀式でガードを貫通するのは不可能のはず、まあ相手は精神値のことを知らないだろうから騙されたフリくらいはしとくかな)



魔公爵家当主の者達が羽藤を取り囲むと周囲に大きな魔法陣が浮かび、大量のマイナスエネルギーが羽藤の体内に流し込まれていった。


……そして数十分後。


「……完成だ。あなた様の名は魔王サタン、いずれ私共の主、いえ、この世界の全てを作り替えるお方です」

「……」


(やっぱなんともない……、ヒヤっとしたけど俺の思考はクリア、問題なし。ちょっとだけ頭がグラっとするけど、いずれ治ると思う。治ってくれ。……で、この頭下げている人たちどうしよう、こういうときのセリフもラノベで読んだけど忘れた)


「言葉はいらず、か。その威厳あふれる態度、感服いたします。ここでの鑑定が済みましたら2人を連れてしばらくレベル上げをするのがよろしいかと」

「……」


そしてハドウが無言のまま鑑定を受けると、【アンチスキル】が変貌を遂げていた。


(ユニーク)

【アンチスキル(邪神の加護)】

└ディストーション:虚弱・呪いにおける空間の歪みを作り上げ相手のステータスを半分以下にし、スタミナと魔力を常時消耗させ続ける。また、自身もスキルを使う限り魔力を常時消費する。

└ドミネーション:魔物の支配が高確率で可能。ただしテイム状態の魔物、自分よりレベルが高い魔物は必ず失敗する。



(なんかさらに強くなってるな、魔物の支配とかは俺が強くなったわけじゃないけど呪いの追加はありがたい。魔力の低下は長期戦に不向きだったし相手にもそれを強いることができるのはかなりのメリットだ)


「それでは2人を連れてレベル上げに向かわれますか?」

「……あぁ」


(いつまでもここにいたらボロが出る、早急に脱走しないとな)


羽藤の脱走計画が始まった。



既にお気づきだとは思いますが、名前の詳細を載せておきます。


筋肉魔族=ヴェルゼブブ家

子供魔族=レヴィアタン家

肥満体の魔族=ベルフェゴール家

黒天使の魔族=ルシファー家

人形の魔族=マモン家

蝙蝠魔族=アスモデウス家(当主死亡)


ハドウ=魔王サタン


となっております。


ロイルが【32 剣聖失格】【38 兄の理解】でも勇者の覚醒について語っていましたが、儀式は魔王バージョンの覚醒というやつです。

覚醒はユニークスキルのくくりではなく、加護持ちだけが可能です。

もちろんゼノンも可能です。

対応する覚醒条件は地球の神なので不明です。

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