07 母にバレました
本当の意味でバレたのは魔法スキルだけです。
俺は借りてきた猫のように大人しくなり、さらに首根っこをつかまれるが如く服の襟をつかまれ屋敷まで輸送された。
「さて、それではゼノンにお話しがあります。まず一つ目の理由はわかりますね?」
ママンの眼は据わっていた。
「ぁぃ……」
「あい?」
ビクッ!
「はいッ!」
「宜しい、まず一つ目は森に入ったことです。私は森に近づいてはいけないと言いましたね? これはあなたが一人で森入り、対処のできない事態に遭遇した場合に、私やロイルが助けに入ることができないからです。あなたの魔法は最初からこの眼で見させてもらいましたが、確かに自信をもつだけのことはありました。しかし、3歳であるあなたにモンスターと戦わせようとする親などいません。私の言っていることがあなたなら分かりますね?」
「はい……」
「ふぅ。わかれば宜しい。ゼノンは昔から頭の良い子だと思っていましたが、まさかあんな魔法まで使うようになっていたとは思いませんでした。いったい誰に教えてもらったのですか? メイド長ですか?」
どうやらママンはとりあえず森の件は許してくれたようだ。
しかしどう答えた物か、書斎に描いてあった本を自分で覚えたっていって信じてもらえるかなぁ。
あとなんでメイド長の話が出てくるんだ?
「メイド長のことは分かりませんが、僕にはなぜか生まれた時から魔法言語が理解できていました。魔法言語を理解し、読み解くことを繰り返しているうちに魔法が鍛えられたんだと思います……」
ウソではないが、ホントでもない言い訳だな……。
正直転生やユニークスキルのことは話さない方がいい、これはダメなやつだ。
少なくてもここではダメだ。
だが、それを語るとママンは固まった。
「……ッ!! それは、まさか、……勇者の。いえ、でも勇者はすべての魔法文字を最初から理解していたと言われているし……(ブツブツブツ)」
「…………」
……ん?
ま、まてまてまてまて!
違うよ!
僕、勇者じゃないよ!?
思わぬところからまた勇者が出てきたぞ。
そこで、俺はある可能性に思い至った。
言語理解=魔法言語理解。
勇者=日本人=言葉分からない=召喚=言語理解Lv.10の加護。
あ、ありえるうぅうううううううううう……。
思わぬところでまた勇者とつながり、ある意味勇者の力を使っていたことに気づいた俺は、言い訳もできずに固まっていた。
どうすればいいんだってばよ。
「と、とにかく今はじっとしていなさい。ロイルを呼んできますからここで待っているのですよ?」
ママンは猛ダッシュで騎士団へ向かって行った。
森へ入った3歳児を残していくとは、相当に焦っているな……。
などど、あまりの暇さに自分を棚に上げてみたりしていた。
そして昼過ぎ、屋敷のメイドが部屋に運んできた昼食を食べながら待っていると、ママンとパパンが猛スピードで帰ってきた。
「ゼノン!居るか!?」
パパンだ。
「母さんの部屋にいるよ~」
バンッ!
パパンが部屋の扉を荒々しく開けて息を切らしていた。
「よし、お前を今週中に王都の大教会へ連れていくとになった。とりあえず今日は領内の教会へ連れていく、支度をしなさい。」
これあれだわ、勇者関連のやつだな……。
まぁ別に勇者関連はプラス要素だからいいんだけどさ、ずいぶんと急だなぁ。
さきに隠ぺいを習得しといてよかった、Lv.6くらいあれば鑑定機くらいはごまかせるとは思う。
まあなんにせよ俺が勇者ってのは無いんだけどね。
こっちに来る前に神の爺さんに聞いた限りでは、勇者ってのはこの世界の神が勇者専用の加護を授けて、初めて誕生する存在だからね。
俺は神の爺さんの加護でステータスを把握できてるけど、そんな称号はついていない。
ようするに勇者ではないのだ。
俺だけは結果が分かっているとはいえ、どうしたものか。
下手に教会を刺激するのもアレだし、そもそもまだ魔王が活発になっていない状況で勇者なんて生まれてるわけがないんだよね。
爺さんから色々聞いた限りでは。
せいぜい政治利用されないようにしますかね……。
──そして数日後、王都の大教会に行く準備をしていた。
兄さんたちがいるからママンはこれないけど、パパンとメイド数名を引き連れ、領内から馬車の旅を往復でこれまた1週間だ。
あ、領内の教会?
行った行った、鑑定機で測定されたけど隠ぺいをつかうまでもなく。
俺の魔力量に耐え切れず壊れました。
南無……。
王都の鑑定機はドラゴンのステータスでも測定できるとかいう優れものらしいが、やはり俺の加護と違い数値として細かい値までは計測できないらしい。
せいぜい段階式で E・D・C・B・A・S の6段階まで図れるとのこと。
どこまで隠ぺいするかがカギだと思うんだよね。
──そしてパパンたちと馬車へ乗り込み、1週間の旅へ出かけるのであった。