70 ヴァニエ無双だったらしい…
審判の人は試合で悲惨なことにならないように監視する約目があります。
試合結果は教師全員で話し合うので、緊急で試合を止める場合だけ権限が行使できます。
現在校長と審判の教師、残りの二人の教師で話し合いが行われている。
まあ負けてないんだから合格だろうけど、一応内容をまとめているところなんだろう。
それにしても校長のあの属性の数はびっくりした。
光の幻影魔法に関しては装備の効果なのが鑑定できたが、残りの十字架による5属性は装備によるものではない。
おそらく校長が自分で所持している元素魔法なんだろう…A級上位はチートばっかだ。
「まあでも、みんな無事に決着をつけられたみたいでよかった。あとはヴァニエだな」
「ボクも自信がついたよ、これならもっと頑張れるっ」
「フィッテと同じ意見さ、自分の力を確かめられたいい機会になったよ」
校長が俺を見学に回したのは2人の邪魔をさせるには惜しいと思ったのかもな…
ここで俺が参加したらバランスが崩れてせっかくの拮抗した勝負も台無しになる。
試合をしながらそこまで状況判断できてるとなると…やっぱりまだなんか奥の手とかもってそうだな。
「それでこの学校の入学金はどうするの?パーティ資金から充分だせると思うけど」
「ああ、パーティの時にエドガーさんが出してくれることになったからそれは大丈夫。こっちも余裕があるから要らないって伝えたんだけど、強引に押し切られたよ。いい人すぎるなあの領主さんは」
十分くらい料理を堪能しているときに押し切られました。
まあいいんだけどね、あの領主さんとの繋がりはこっちも望んでいることだから。
それから即興の会議が終了したのか、教師陣がとりあえずの結果報告をしてきた。
「…結果からいうとあなたたちは全員合格ね。この試験はクラス分けをする意味でも必要な試験だったのだけれど、正直あなたたちのレベルだと最上級クラス以外に入れるところがないわ。推薦のおかげで選択しなかった教科は最高点で報告されることになっているのよ」
まじかよ、ヴァニエの点数が凄いことになりそうだな。
「うむ、特にそならたの戦いに対する経験値・装備・機転には目を見張るものがあった。ゼノンくんは儂が担当したから知っておるが、もはや戦いの化身ともいえる判断力と実力じゃわい。A級パーティの名は伊達ではないのぉ!ホーッホッホッ」
「その通りですね」
どうやら審判の人も同意見のようだ。
試合が行き過ぎないように管理するセーフティの役目を担っていたようだが、それぞれの教師が引き際を理解していたために出番がなかったらしい。
「それじゃあもう一人の仲間の方へ向かっててもいいですか? 外で待機してたいんですけど」
「構わぬよ。本当に将来有望な若者たちじゃったわい、こりゃあ新しい時代が来ているのかものぉ…」
校長が遠くを見つめて黄昏てる。
まあ確かにギル兄さんや勇者も含め、最近は実力や潜在能力の高い若い者が頭角を現してきているように思える。
「じゃが、本気で戦ってまだ負ける気はないのでな。そこはうぬぼれるでないぞ?」
「分かってるよ、どうせまだ奥の手があると思うし」
お互いにね。
そこで一旦教師陣は解散し、校長がヴァニエの所まで案内してくれることになった。
なんでも合格なのは間違いないようなので、一応全員揃って祝いの言葉をかけるらしい…
まあ飛び入り編入だし予定がいろいろ立て込んでいるんだろう、迷惑かけて申し訳ない。
そして案内された場所で待機すること15分ほど、ヴァニエが試験会場から出てきた。
「お、終わったか?こっちは全員合格もらったけど感触はどうだった?」
「一応すべての問題には答えましたわ。不安な回答は一つもありませんし自信はありますわね」
やっぱりヴァニエはベースが神がかってるな…本の丸暗記とかなにそれずるい。
「ゼノンの想像していることが分かるようになってきましたわ。本の丸暗記はできても、ずっと忘れないのはいくらなんでも不可能です。私をなんだと思ってますの?」
ヴァニエまでエスパーになってしまった。
「でも評価されるのは良い事さ」
そうだそうだ。
「でもずるいって思ってますわよね?ずるいのはゼノンの隠し玉のほうですわ」
ぐうの音もでません。
「それじゃ儂は結果を聞いてくるかの。なに、一人分の答え合わせだけじゃしすぐ終わるわい」
ちょうどここに校長がいるし最終チェックでもするんだろうか。
そして数分ほどでもどってきた。
校長の顔がすこぶるご機嫌だな…いい結果が出たのかもしれない。
「ドキドキしますわっ」
「まあ心配することはないと思うよ?校長先生の顔もにこやかだしっ」
「ふむ、では発表するぞい。結果は学術系統の試験科目すべてパーフェクトじゃ。素晴らしい結果になったのぉ、これで全員合格となったわけじゃな」
やっぱり無敵だったようだ。
まあ魔術系統の試験だけで一般教養は含まれないっていうヴァニエ無双の下地ができてたからな…
そりゃこうなるか。
「オホホホッ! やはりテストなど私の相手になりませんわっ」
「まあ、俺は全然心配してなかったけどね。あの分厚い本を一晩で読破するくらいだし筆記は余裕だろ」
「むぅーボクにも同じ能力がほしぃ……」
フィッテも優秀だから気にしなくていいって。
そしてその後、全員に向けて校長が祝いの言葉を述べて終了となった。
学生服は1週間後くらいを目安に揃えようかな。
なにはともあれ明日からアカデミアだっ!
これで全員合格が決まりました。
次回はハドウの閑話となります。




