66 Aランクパーティ、スターダストホープ誕生
だらだらしてたらパーティの時間が迫ってきた。
「じゃあそろそろ行こうか」
空島から帰ってきて注文したパーティ用の服装にみんなで着替えて出発だ。
俺とエレンはただのスーツっぽい感じだけどね、俺は黒スーツでエレンが白スーツって感じかな。
フィッテは淡い緑のドレスでところどころ白が使われていて、形はキッチリとられている。
ヴァニエは以前魔大陸で着ていたドレスをもっとふわふわさせた感じだ。
さすがに多種族が共存しているアルトミー連合国だけあって注文できる幅が広く対応力があるな…
「魔大陸でパーティを開く時はほとんど私の家が開催する側でしたし、招かれる時も立場が上での参加でしたのでこういう平等な関係での参加は新鮮ですわ」
確かに魔公爵家の長女だもんな。
あ、というか俺も公爵家だけどパーティとか参加したことないわ。
ずっと修行で5歳には家飛び出してたもんな。
エレンも同じ感じっぽいけどどうなんだろう、俺と同じような印象を受けるが。
「ゼノンが想像しているとおりだよ、僕も3歳の時に参加したっきりさ」
先読みされた、エレンがエスパーになってもうた。
「じゃあヴァニエちゃんが一番の経験者なんだね。とうぜんボクも参加したことなんてないしねっ」
オアシスがドヤ顔で胸を張っている。
パーティに詳しいヴァニエがいれば心配無用という意思表示なのだろうか、たぶんそうだな。
それにしても今更になるが、あの分厚い魔法書をよく一晩で読破できたなヴァニエは。
「関係ないけど、よくあの本を短時間で読みきったな。朝起きたら外が焼け焦げてたし実践する時間も考えたら相当な速度だ」
「速読くらいできて当然でしてよ。それに私はずっと魔法が使えなかったんですもの…嬉しくてしょうがなかったのですわ。適正が雷なのは知っていましたが、いくら家庭教師に教えてもらっても魔法の構造なんて意味がわかりませんでしたわ。だからゼノンには感謝していましてよ」
ヴァニエがこんな弱みを見せるなんてめずらしいな。
きっと魔法が使えないことがコンプレックスだったんだろう。
あの本は意味がわからなくても読破さえすれば魔法がダウンロードされるからな、ヴァニエからすれば奇跡のアイテムだったのかもしれない。
「まあ、感謝もなにも全員で攻略した結果だ。当然の報酬ってやつだから気にするな」
「くふふ、そうですわねっ!」
おお、見事なスマイルだ。
いつものオホホスマイルとは一味違うな。
「あはは、報酬といえばワイバーンの解体料もとんでもないことになったね…まさか金貨30枚とは思わなかったよ」
「あれか。まあ全身素材の竜種があんだけ運び込まれればな、金額で見ると目が飛び出るけどある意味妥当だとは思う」
これで金額の合計は金貨80枚と銀貨50枚の報酬になるわけだが、これは全員で均等に分けた。
といっても俺たちのパーティ全体の資金として金貨40枚を残して一人金貨10枚、1000万円くらいだな。
パーティ資金は今回のようなパーティ服やポーション代なんかにあてたりする予定だ、こんなの一人ずつ出してもしょうがないからな。
ポーション代ケチって戦闘に集中できないなんて無いだろうが、たとえばそういうのが嫌だからってのも一つの理由だ。
みんなの装備なんかもパーティ資金からある程度だそうとは思ってる、パーティの活躍に必要なことならパーティ資金を当てにしていいって感じだ。
そんな感じでわいわい話しているうちに領主の館にたどりついた。
今回は門番とは別におじいさん執事の人も待機しているようだ…というか他の執事やメイドも門の前に並んでいる。
「すみません、今回のパーティに招待されている者ですが」
「おお、お待ちしておりましたぞ、英雄<希望の流星群>の皆様」
「「「お待ちしておりました、どうぞお通り下さいっ」」」
な、なんぞ。
なんかめっちゃ歓迎されてる、というか歓迎のされかたが凄まじい。
希望の流星群ってなんだ、いつ俺たちはそんな救世主みたいな二つ名を手に入れたんだ。
まさか勇者か、勇者の件なのか!?
「あ、うん。通ります」
ガチガチに緊張してもうた。
「そんなに緊張されずとも宜しいですよ、この称号は連合国からの感謝の印みたいなものです。エドガー様が連合国の王の何人かに今回の件を報告したところ、ワイバーンと騎士を一網打尽にした実績と、勇者であるクロスハート殿がB級パーティを一人で押さえ込んだ実績を買われたのです。戦争を事前に止めていただいた報酬として、今回の一件でこの称号を大々的に発信し皆様をA級パーティの1つとして見るとのことです。個人のランクが変わることはないのが申し訳ないですが」
どうやらかなり評価されたみたいだな、それでこの二つ名ってわけか。
パーティでA級ってことは、個人ではC級~B級なのは変わらない、これならヴァニエの身分もいちいち隠さなくていいしありがたいことではあるな。
まあ連合国ならバレてもここまでの実績があるしもう問題なさそうだけどね、念のためだ。
そしておじいさん執事の人に案内されて館の外にある庭まで来た。
さすがに領主だけあって庭の広さはかなりのもだ。
「やあ、待っていたよ英雄殿。戦争を止めることが出来た事に対するパーティだが、君たちも聞いての通り連合からはあの評価だ。もはやスターダストホープが主役といっても過言ではない。存分に楽しんでいってくれっ、ハッハッハッハッ!」
既に大勢の人が集まっていて、エドガーさんも多少酔いがまわっているようだ。
それにしてもこの人数はなんなんだ?予想していたよりかなり多いな。
「ああ、この人数が気になるかい?これは君たちと繋がりを持とうとする貴族たちと、推薦の件で世話になる方々だよ。最初はこんなに集まるとは思ってなかったのだがね…まあそれだけ君たちが注目されているということさ」
そいうことか。
まあ評価されるのは悪いことじゃないからいいけどな。
すると横からこれぞ魔法使いみたいなおじいさんが声をかけて来た。
風貌から察するに貴族ではないし、魔法学校の関係者かな?
「おお、ちょうどよかった。この方が連合国の魔法学校校長であるエレゲン・シュタイノーム殿だ。ここからはそう遠く離れてないのでね、お呼びしておいたんだよ」
「ふむ、君たちがエドガー殿の推薦にあった子達じゃの?国から認められる実績もあり推薦も存在する以上はほぼ入学確実といったところなのだが、先に面会くらいはしておこうと思ってな。このような席で申し訳ないが、少し話をしてもよいかな?」
関係者もなにも校長だった。
まあ貴族と話しても俺たちにそこまで関係があることではなさそうだし、校長と話す方が優先順位は高いだろう。
「俺は問題ないですね」
周りを見たがみんなも特に問題なさそうだ。
「そうじゃなぁ、まあ話といってもそなたらに特に質問することはそんなに無いんじゃが。……魔法学校に入るからには魔法を学ぶことになる以上、今回はその意欲があるかの確認と現時点での魔法の習得度の確認じゃな。まあ意欲の方は見た感じ問題なさそうじゃがの…そちらの赤い髪の少女なぞ目に炎が宿っておるわい」
ヴァニエの価値観的には物理的な強さが一番求められるんだろうけど、それでも魔族として魔法があまり使えないのが克服できるとあってやる気は人一倍のようだ。
それにしても習得度ってなんだ?鑑定でもするのかな。
「うーん、その習得度っていうのは何をするんですか?」
フィッテも気になるようだ。
「それは簡単じゃ、わしと戦ってもらうだけじゃの。いや~楽しみじゃわい、ホッホッホッ」
「「「……」」」
なんでや。
じいさんの目がめちゃめちゃキラキラしてた。
Aランクパーティは人間大陸でも最高峰のパーティになります。




