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52 悟った領主に追い打ちをかけるオアシス

謝礼として情報を得ることになった事で俺たちの考えは確信に近づいた。


「なるほど、やっぱりワイバーンと盗賊の不意打ちでああなったのか」

「ああ、そういうことになるな」


彼らの話しをまとめるとこうだ、領主の依頼を先に受けていた彼らCランクの冒険者パーティが道中の下見をしてくるという内容が先にあったらしい。

下見と言っても盗賊やワイバーンを狩ればちゃんと規定通りの報酬は受け取れるし、なにも最後まで下見を続けなくてもいい。

ようするに偵察任務みたいなやつだ。


それで警戒を怠らず偵察をしていると、やはりと言うべきか既に相手側は準備を整えていた。

気づいたときには数多のワイバーンと盗賊に囲まれていて、逃げるのが精一杯だったということだ。


「まさかあの盗賊達が、あんな組織だった戦い方をしてくるなんて思わなかったんだ。だって盗賊だぞ、あんなの冒険者崩れか食うのに困った農民くらいがなるようなものなのに」


まあ盗賊じゃないからな、恐らく。

これで俺たちの推測はほぼほぼ固まった、あいつらは盗賊ではなく傭兵か騎士、ワイバーンを手懐けているところをみると、小国の切り札のようなものが来ているのだろう。


だがテイムのスキルを所持しているかどうかは別問題だ、あれはモンスターが主として受け入れないと手に入らないからな。

モンスターとの利害関係の一致では、テイムにはならない。


……ちなみに、だからギラはテイムじゃない、あくまで友だ。


「まあ、事情はわかったよ。有益な情報を得られたしこれで貸し借りは無しだな、俺たちもその依頼を受けるつもりだからそんときゃよろしく頼むよ」

「ああ、君たちが居れば心強いよ。なにせあの高価なポーションを大盤振る舞いできるだけ稼げているってことだからな、実力も相当なものと見受けられる」


意外と頭がまわるなこの兄さん。


「ハハッ! そうだぜお前ら、冒険者なんてものはレベルやスキルだけが武器じゃねえ。強力な道具や装備を手に入れる過程まで含めて実力なんだ。あれだけのポーションを所持しているお前らを侮る冒険者なんざ、いねぇってことだ。もしいればそいつは冒険者じゃねぇ、ただのもぐりだ」


そういうことか、それが冒険者の常識ってやつだったらしい。

まあ冒険者なんてものは結果主義だからな、ランクも結果だし道具や装備も結果だ。

それを認めなければ始まらないってことか。


そうして領主の依頼を受け、一度領主と面会することになった。

でもって今はその領主の館の前まで来ている。


「失礼しまーす! 領主さんの依頼を受けた冒険者です」

「おお、新たな冒険者様ですかな? 私の主が館の中でお待ちです、どうぞ中へ」


迫力があった闘技場のオーナークロウとは違う、小奇麗な執事服をまとったお爺さんが案内してくれた。

執事服のお爺さんに案内されていると、館のひろびろとした客間みたいな所についたようだ。


「それでは、ただいま主のエドガー様を呼んでまいりますので少々お待ちを」


たぶん領主のエドガーさんはさっきの冒険者たちの報告を聞いているのだろう、俺が助けたあとすぐに飛び出していった人もいたからな。

ほうれんそうは大事だ。



そして15分ほどたったくらいで、領主と思われる人物が部屋へ入ってきた。

だが領主にしては結構若い、20代後半か、もしくは30くらいだ。

まあパパンも俺が生まれた時既に領主だったし、そのくらいがこの世界の普通なのかもしれない。


「待たせたね、私がこの国境付近の町、カイムを担当している領主のエドガーだ。話は既に聞いたよ、今回は私の雇った冒険者たちを助けてくれた事を深く感謝する」

「いや、俺たちが勝手にしたことだから気にしなくていいよ。それよりも依頼の相談と他に、この依頼の原因でもある<戦争>についての相談もしたいんだけど、俺たちの実力を買ってくれているなら話だけでもさせてくれないか?」

「……、やはり気づかれていたようだね。まあ、手練れの者達をいつまでもごまかせるなどと思っていたわけではない、当然といえば当然か」


どうやら領主の方もそこまで隠す気はなかったようだ。

まああんな依頼内容だし、そりゃそうか。


「まあ、依頼の話しでも戦争の話しでもどちらからでもいいけど、そこは領主さんの判断にまかせるよ」

「ふむ、だがもう君たちに隠すこともない。核心である戦争の話からしようじゃないか」

「はは、腹芸はなしかい、ずいぶんと信頼されたものだね」

「当然だ、話を聞く限りでは君たちはこちらの切り札といえる存在なのだ。そんな者達を騙してあとで裏切られたのでは、たまったものでは無いのだよ」


エレンが追求するが、あっさりと事実を受け入れた。

まあ確かにな、ごもっともだ。


そしてしばらく、間を取ってから戦争の内容を話してくれたエドガーさん曰く、ことの経緯はだいたいこういうことらしい。


この国の特徴ともいえる他種族が共存する環境、特定の魔族・獣人族・エルフ・ドワーフ・人族・etc……。

などが入り乱れて存在する戦力の価値に気づいた隣国が居たそうだ。

そりゃあ他国からみれば宝の山だろうな、各種族の特徴をまとめて国として一致団結すれば一気に人間大陸最強なんだからな。


そしてその価値に気づいた隣国は平和的な団結ではなく、まとまっていないことを良い事に武力での侵略から一致団結させようと目論んだというのがだいたいの顛末だ。

ワイバーンとの利害の一致は、将来的に彼らの住処の提供~食事の提供、なんかが妥当だろう。

なにせ連合にはその環境が整っているからね。


「私はなんども連合への加入を勧めたのだ、連合国の王の何人かからも既に許可は出ている。あとは向こうが承認して加盟すればそれで全て済む話なのだ」

「なるほど、それでエドガーさんは他国の領主と何度も面会をしようとしていたわけか。……うーん」


となると、今回の場合はあちら側がこちら側を舐めていることがすべての原因だな。

一度でも力を見せつければ大人しくなる可能性が高い。


「それはさておき、依頼のほうはどうするの? もしよければワイバーンと盗賊のほうはこちらが完全に鎮圧しておいてもいいけど」

「なッ!? 君たちの力はそこまでだというのか? いや、だが君たちはほぼCランクの冒険者、そこのハーフエルフの少女はBランクだが、赤髪の少女に関してはギルドには未登録だ。俄かには信じがたいな、いくら君たちに実績があるといってもだ」


それもごもっともで。


「まあ別に信じなくてもいいけどさ、試してみるだけ試すくらいならエドガーさんにとって有益なんじゃない? だって失敗しても被害を受けるのは俺たちだけなんだからさ。そしてうまく行けば万々歳、エドガーさんに損失はない」

「む、むぅ。確かに言われれば、その通りだが、むぅ」


もうひと押しだな。

エドガーさんは頭では冒険者とは分かっていても、俺たちがまだ11歳ほどであることからそこまでの危険を承知できないんだろう。


甘いのか優しいのかわからん人だな。


「じゃあ、こういうのはどうかな」

「なんだね?」

「俺がカーデリオン王国の<勇者>だってことだよ」


嘘だけど。

でも実質女神の加護はないがあの国の肩書では勇者だ、それを利用させてもらおう。


「……ッ!? ま、まさか、そんなバカなっ! あの国で召喚された勇者はみな15~6歳ほどだったはず。いやまて、聞いたことがあるぞ、確か勇者が召喚される3年前に行方不明になった少年の話しを。まさか、君が? それならあの実力にもつじつまが、いやだが……」

「ああ、そうだ。俺が3年前に魔族の転移魔法で魔大陸に飛ばされ行方不明になった<勇者>、ゼノン・クロスハートだ」

「……」


ふう、どうやらハッタリがきまったようだな。

まあハッタリもなにもないけど。


「……わかった、君の話しを信じよう。しかしこんなピンチの時に勇者の登場か、……ははは、やはり本物の英雄とはそういうものなのだな」


エドガーさんが何かを悟った目をしている、遠くを見ちゃってるよ。

どうしよう、本当はうそなんですっていったらどうなるんだろう。


「えへへっ、これでわかったかい領主さんっ!」

「……あぁ」


おいやめろフィッテ、これ以上追い打ちをかけるのはよそう。



冒険者の人はかなり結果主義であり実力主義なんです。

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