49 ワイバーンたちの異変①
空中遊泳でふよふよします。
ギラとシルヴの喧嘩はフィッテの魔力切れによって幕を閉じた。
いくら戦闘中じゃなく魔力消費が抑えられているといっても1時間だもんな、そりゃ無理がある。
そして現在、ギラの背中にのって空の旅を満喫しているところだ。
「フィッテは試練の迷宮でシルヴとであったっていってたけど、試練の迷宮ってなんなんだ? そんな迷宮ここらにあったか?」
「えへへ、まだ誰にも発見されてない迷宮なんだよっ! ボクが旅をしているときに精霊さんが野良迷宮のありかを教えてくれたんだ」
どうやらフィッテの話をまとめると、その試練の迷宮というのは野良迷宮で精霊に関する迷宮だったようだ。
精霊魔法が使えるフィッテはその迷宮に対する適正が物凄く良く、なんと一人でクリアしてしまったらしい。
運もあっただろうが、フィッテがそれほど本気だったということだろう、譲れない事だったんだと思う。
「それでね、迷宮の最後までいくと眠っているシルヴに出会ったんだ。ボクが近づくとシルヴがそろそろ勇者が召喚される頃ねって勝手に起きて、それからは精霊魔法が使えるっていうことを話すと契約を結んで世界の情報を集めてって話になって……、その代わり力を貸してあげるからって言われたわけなんだよ~」
「ぐぬぬ、ずるいですわよフィッテ! エクストラスキルの精霊魔法に大精霊なんて存在が味方についたら私が勝てないじゃないですのっ!」
「えっへっへ~、ボクはヴァエニちゃんより強いんだよ~? もう決着ついちゃったかな~」
「なんですって!?」
あいかわらずフィッテとヴァニエは喧嘩してるな、まるでシルヴとギラだ。
ちなみに俺だけはギラの背中にはのっていない、ギラの飛行技術を盗みながら飛行の訓練中だ。
『飛行魔法を覚えたといったときからもそうだったが、お前の元素魔法のスキルレベルはいくつなんだ、いくらなんでも熟達するのが早すぎるぞ。もう俺が本気で飛んでもお前といい勝負くらいなんじゃないか?』
「そうなのか?」
『そうだ』
そうらしい。
まあ元素魔法のスキルレベルはだいたいマスターしかけてるからな、伊達にあれから3年間修行していない。
おそらくドラゴンのギラも飛行魔法のレベルはそんな感じなんだろう。
俺が飛行魔法でしばらく遊泳していると、遠くの方に島が見えてきた。
いや、島じゃない、なんか巨大な島っぽいのが空に浮いてる?
いやいや、そんなバカな。
「なあギラ、なんか向こうのほうに島浮いてね?」
『……ん? おぉ珍しいな、あれは空島だな。普段は霧に隠れて見えないが、極まれに霧が晴れたときのみ出現する天空の陸地だ。あれでもけっこうな広さがあってな、空に浮かんで世界中をめぐってるんだ』
空島だとっ!?
なんだそのファンタジーな島はっ、行きてぇ、めっちゃいきてえ。
ちょっとだけ行って見ようかなぁ、なんて?
聞いて見よう。
「ギラ、空島いってみないか?というか行きたい」
『いや、あの島はああ見えてもまだかなりの距離がある。おそらくお前らのいう連合国にたどり着くのが先だろう。たどりつくまでに空島の霧がもう一度発生するのが先だな』
「なんでや! なんでそこで諦めるんだっ! ネヴァーギブアップの精神を忘れるなよっ」
『…ネ↓ヴァ↑?…よくわからんが、空島の移動速度はそんなでもない、もし行きたいなら目的地についてからでも遅くはないだろうな。急ぐことはないはずだ』
まじかっ!
それならいいんだギラさん、あせったぜ。
「なんだ、それならいいんだ」
やっぱ天空の城はロマンだよな、いずれ行ってみたい。
もしかして天空竜とかいるのかな、マスター○ラゴンみたいなやつだ。
「ところでギラは黒竜の頂点なんだろ? 他にはどんな竜がいるんだ? まさかあの空島にもドラゴンとかいたりするのか?」
『ああ、いるぞ。俺は闇系統を司るドラゴンの王種だが、その他にも各属性に応じてそれぞれの王種がいる。空島には今も生きているなら、光属性の王種がいるはずだ。まあ、あいつが死んでるなんて想像できないからたぶんいるだろうな。500年前の勇者も空島でブレイブソードの真の力を解放させていた、いまの担い手が定まっていないブレイブソードの比ではない強さだったぞ』
「まじでマスター○ラゴンがいるのか……」
どうやら空島には行くことが決定したな、エレンの強化になるからな。
そうしてしばらく俺は空中遊泳をしたあとみんなにこの話を伝えてその日は終了した。
ちなみにギラやその他ドラゴンの食事は属性によって異なるらしい。
火竜なら火山地帯でのマグマなんかが好みらしいし、土竜なら岩石なんかだ。
闇竜のギラは生物の命そのものが食事らしい、なので野生動物やモンスターなんかが主食となるわけだ。
属性さえ同じなら基本どのドラゴンの好みも大体同じで、階級の違いで食事の量が変わるってわけだな。
モンスターの生態ってのも結構面白い。
─翌日。
目覚めてからすぐに飛び立った俺たちは、しばらくして数多のワイバーンに囲まれていた。
「うそやん」
「……ゼノンくん」
フィッテが怯えているが、以前のように後ろに隠れることはなくなった。
成長したんだな。
『フム、ここらへんは風竜やハーピィたちの住処か。まあ俺がいる限り手を出すこと自体はないだろう、竜種にとって力とは正義だからな』
「オホホッ! ひさしぶりに腕が鳴りますわ! さぁ下級竜種のワイバーン共を殲滅しますわよっ!」
「だから手をだしてこないんだって」
「……あら?」
「……ははは」
ヴァニエがもうちょっと話を聞く子なら、きっと物凄く優秀な魔族になっていただろうに。
ベースはいいんだけどな、ベースは。
本を一度見たら忘れないからなこの子。
『おい風竜共聞こえるか、そこをどけ。手を出さなければ見逃してやる……』
「「「グルルゥウ」」」
風竜が引き下がっていった。
やるなギラ、さすがキング・オブ・ブラックドラゴンだ。
だが、なんかいやな感じがする。
もう少しで連合国だからそれまで何もなければいいんだがな。
おや?
なにやらワイバーンの様子が。




