43 オアシスと再会、しかし不良になっていた
要望のあったエレンの設定画を人物紹介のところにのせておきました。
またなにかご要望があれば相談お願いします。
鉱山で黒龍のギラの背に乗せてもらってから約3日、現在俺たちは教国の真上まできていた。
教国からあの小国まで歩けば約3ヶ月はかかるので、30倍速だ。
ギラは夜になれば寝るし森で獲物を狩って飯も食う、それ込みで3日と考えればちょっと異常な速度かもしれない。
「速すぎだろこのドラゴン……」
『腐っても王種だからな、さすがに飛行特化のドラゴンには負けるが、そこらへんのドラゴンと比べて負けることはない』
どうやらドラゴンの飛行というのは基本的に魔法で飛んでいるらしく、翼は補助なのだそうだ。
竜種が使える固有の魔法である飛行・ブレスなどは無詠唱ではあるが、あくまでもこのスキルに限っただけのことらしい。
「この速度で飛べば、1週間もしないうちにカーデリオン王国までたどり着きそうだね」
「確かにそのくらいの速度は出てるな。……それにしても、うーん。この魔法便利だなぁ、俺も覚えられないかな? ちょっとやってみよう」
「……えっ?」
「バッ、バカゼノン! そんなことしたら落ちるのがわかりませんの!? 飛行魔法は固有の種族だけがもつ特権でしてよ!」
すまんなヴァニエ、俺はチャレンジャーなのさ。
とりあえずギラから流れる魔力の流れを感じ取る。
どうやら魔法そのものの構造は単純みたいだ、だが確かにこれは無詠唱じゃないと魔力のコントロールが繊細すぎて真似できないレベルだな。
それじゃさっそく、ギラの背中に生えてるでかいトゲに捕まり実験だ。
「……おっ。おぉぉ? おおぉぉぉ! 飛んだ、飛べたぞエレン! 俺はいま風になっている……!!」
できちゃった。
なんだ、簡単じゃないか。
「手…うそだろ」
「……バカが限界を超えましたわ」
すべては挑戦から始まるのだよ。
その後、しばらくつかまり飛びをしていた俺だが、すでに飛行魔法を習得したのを悟り単独で飛んでみることにした。
おおっ、慣れると向かい風のコントロールもできるのか!
どおりでギラの背中には風が来ないわけだ。
さらにしばらくすると、今度は急旋回や急停止などの高等操作のコツがわかってきた。
こりゃあ奥が深いな飛行魔法。
とりあえずギラの目の前までいってみよう。
「おっす、飛行魔法って奥が深いんだな」
『……ん? お前飛べたのか? 人間には飛行魔法の固有スキルはないはずだが』
「いや、今覚えた」
『……は?』
ギラがまた変な生物を発見したような目でみてきた。
顔が怖すぎて悪い事をした気分になる、チビるから止めてくれ。
『ばかな、種族固有のスキルが存在しているのならともかく、覚えたとか意味がわからん……』
「まあ、たまにはこういう事もあるさ」
「いや、ないよ」
「あるわけないですわ」
「……キュ」
あぁっ、スラキューまで敵にっ!
もうおしめぇだぁ。
そしてその後は1週間弱ほど俺は飛行魔法の訓練をしつつ、もう既に召喚されているであろう勇者たちの件をどうするか考えていた。
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ギラと出会い、ゼノン達がクロスハート領へ向かい始めた頃、羽藤とロイル、フィッテはクロスハート家の屋敷前で訓練をしていた。
「ふむ、ハドウ君ももう一人前といえるレベルになっているな。君の勇者としての力を含めたら既にB級に差し掛かるかどうかといったところだ。そろそろ、自分の足で世界を回ってみるのもいいだろう」
「はぁ、はぁ……。はいっ! 今までありがとうございました師匠! フィッテさんとギールさんに負け越しているのは少し心残りですけどね」
「君はちょっとだけゼノンくんに似てて面白かった。他の勇者たちとは違うみたいだし、悪い気はしなかったよ。でも本物のゼノンくんにはまだまだ及ばないけどね?」
羽藤は半年間の間ロイルのしごきを受け続けていた。
最初は手も足も出なかった羽藤だが、レベルがあがりユニークスキルの運用方法に慣れ始めてからは、レベル・スキル・経験共に怒涛の追い上げを見せたのだ。
フィッテやギールとも何度か手合わせをし、ほんの僅かな確率ではあるが一本取ることもできるまでに成長している。
「はっはっは! 半年で一本取れたら勲章ものだよ、たとえそれが数十回のうちの1回だとしてもね。それとこれは私からの餞別だ、受け取り給え」
ロイルは羽藤に旅の餞別として、金貨数枚と一本の剣を手渡した。
「ありがとうございます。いずれゼノンさんにあった時は、フィッテさんやロイルさんたちの事を伝えておきます。それではっ!」
「おう! いってこい!」
召喚に巻き込まれた少年は成長し、大きな一歩を踏み出していった。
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1週間後、俺は勇者のことを考えクロスハート領の手前まで来ていた。
そう、勇者のことを考えていたのだ。
はい、一週間考えました。
結果、なにも浮かびませんでした。
……。
……ま、なんとかなると思う。
なんとかしよう!
「まあ大丈夫だ!」
「よくわからないけど、たぶん何も考えてないんだね」
「バカですわ」
すみません、次はちゃんと考えます。
そしていてもたっても居られなくなった俺は、ギラにのってパパンとママンの元へ直行していった。
あぁ、もう少しで俺のオアシスに会えるぞ!
もう空からハウアーユーしちゃおう!
「フィッテエエェエエエ! かえってきたぞぉおおおおお!!!」
ガシャンッ!
「~~~~っ!? ゼノンくんッ!? ……ッ!? ドラゴン!!?【ウィンドミキサー】!!」
フィッテが屋敷の窓をけ破り飛び出てきたと思ったら、いきなり精霊魔法をぶちかましてきた。
なんてこった、俺のオアシスが不良になっちまった。
そしてパパンとママン、メイド隊も屋敷から飛び出てくるやいなや全員が戦闘態勢に入っていく。
あっれー、おかしいな?
……あっ!
そうかドラゴンがでかすぎて俺たちみえてないのかっ!
そういうこともあります。




