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41 いや勇者の剣とか使わないし…エレンもっとけよ。

エレン強化回です。

執事服のおっさんに案内されながら何度か鑑定を試したが、ことごとく鑑定が弾かれた。

つまり、今の俺よりもおっさんの方がだいぶ強いということだ。

ユニークスキルを駆使すれば勝負は分からないだろうが、それは鑑定を弾いたおっさんにも言えることなので当てにはならない。


まぁ、敵意は感じないし逃げるだけならなんとかなるだろう。


しばらく歩いていると魔王城と思われる城の門へついたようだ。

魔王城は遠目からみたらまさに悪魔の城と思われるくらい暗い印象を受けるのだが、今近くで見てみるとパーツの一つ一つが落ち着いた高級感あふれる造りに見えた。

おそらく細かい装飾などは遠目からじゃ見えないため、暗い色と尖った屋根のイメージが強くでてしまうのだろう。


「……着きましたよ。そこのキミ、こちらの方々の新しいギルドカードを申請してきなさい。ランクは全員3以上です」

「……どういうことですの?」


ほんまにどういうこっちゃ。

ランク3以上と言えば人間大陸に進軍できるランクとなる、おっさんの考えが読めないな。

それにこのおっさん、ハンターギルドのカードの更新権まであるのかよ。

まあ闘技場のオーナーであり現魔王城の管理者なら普通じゃないとは思うが。


「はっはっは。なに、君たちを正当に評価したまでのことだよ。なんどか城で闘技場の戦いを見させてもらったが、今回の戦いも見事だった。城の者も含めて君たちを侮っているものなどいないということだ」

「はは、それはありがたいことだね。でも、僕らだけがルール外の優遇措置をとられる理由にはなっていないよね、そこらへんはどうなのさ」


エレンの言う通りだ、おそらくさっきの称号に関係しているとは思うが、それでもルールを無視してまで優遇させるには裏がある気がする。

ヴァニエに至ってはなぜか納得した顔でいるが。


「まぁまずは部屋で詳しい話をしようではないか」

「まあ、それで構わない」


部屋まで案内された俺たちだが、入ってみればいままでの落ち着いた大人の雰囲気とは違い豪華で明るい雰囲気になってた。

それに、妙に魔力を放つ剣が飾られている、ありゃなんだ?


「雰囲気が違うな」

「そうですわね、王城にこんな部屋があるなんて聞いたこともありませんわ。資料で見た限りではですが」

「ここは私の私室でね、数百年前に先代の魔王が討伐されたあとに作り替えたのだよ。私が管理者になった時のことだ。……まぁまずは掛けたまえ、話をしよう」


ということは、おっさんは少なくとも先代の魔王と知り合いであった可能性が高いな。

でなければ、討伐されてすぐに譲り受けることなどできないと思う、たぶん。


「ふむ、まずどこから話した方がいいものか。……そうだな、目的を話す前に、少し昔話をしようじゃないか。もう夜ではあるが、君たちなら問題ではないだろう」

「わかった。すぐに目的だけ話せといっても無理なんだろ? それで構わない」


まあ、夜とはいっても寝る時間まではまだだいぶあるしな、最悪ここに泊まったところでおっさんの言う通り問題はない。


「理解に感謝する。ではまずは、私が人間の大陸へ赴いた時の話しから始めよう。……あの時の私は傲慢でね、この世界のあらゆる物は自分の意のままにできると考えていたのだよ。たとえそれが魔王や勇者だろうと、私の前にはひれ伏すのだと。だが、人間の大陸で好き放題にやっていた私は出会ってしまったのだ。彼に、当代の勇者に。当然私は勇者に戦いを挑んだ、思いあがった者の行動など単純だ<あいつを倒して自分が最強である証明をする>ためだけに襲い掛かっのだ。たった一人相手に負けるわけがないとも考えていた」

「なるほど。で、負けたわけか?」


話の流れや表情からさっするに負けてそうな雰囲気だしな。

このおっさんも昔は若かったらしい。


「いや、結果は引き分けだった。まぁ自分から襲っておいて倒せないのでは負けたのと同じだがな。だが、力に溺れて現実を知らない私には認められなかった。自分より強いものがいることも、思い通りにならないことも全てな。そして私は魔大陸へ戻り、魔王に自分の力を売り込んで手を組んだ。もはや正気ではなかったのだろう、勇者を殺すことだけが頭の中をめぐり、気づいたときには魔王と共に勇者に戦いを挑んでいた。……そして、敗れたわけだ。力では上回るはずの二人が、たった一人の存在にな」

「「……」」

「くっ、勇者! 私がいずれ力を付けた時にはただじゃおきませんわ! あなたも気にやむ必要はありませんわ、私たちがなんとかしてみせますもの! それに私は人間の方々に協力を仰ぐつもりですの。ふふん」


ヴァニエ、おそらくそういう話じゃないぞ。

あと勇者は人間だ。

それにしても魔王とこの執事のおっさんが戦っても倒せない勇者か、S級ってやつの壁は想像以上に高いものらしい。


「はっはっは、ヴァニエ嬢の気遣い感謝する。だが、そうでは無いのだ。そのとき私は悟ったのだよ、勇者が勇者たりえるその強さの意味を。なぜ魔王では勝てなかったのか、なぜ私では勝てなかったのかをね。その意味を、君は知っているはずだ、ゼノン君」

「……」


どうしよう。

ここで「僕勇者じゃないんだよねっ! てへっ」って言った方がいいのかな。

いや、やめておこうかな、きっと怒られる。


「今は答える必要はない。話を戻すが、私は見逃されたのだよ。そしてあろうことか勇者は自分の武器を置いていったのだ、君がさっきから気にしているそこの剣、勇者の剣<ブレイブソード>をな。勇者は言っていたよ、いずれ魔族と人間の架け橋となる人物が現れると。その剣をその者に託してくれとね」


いやいやいや!

仕方ない、俺が勇者ではないことを明かしておこう。

ちょっと気が引けるけどな。


「……はぁ、だがあいにく俺は勇者ではないぞ。そんな剣を託されても困るんだが」

「そうですわっ! ゼノンは我が家臣っ私に愛と平和を教えてくれた、優しき心をもつ者でしてよ!」

「そんな事はどうでもいいのだ、勇者の本来の価値は肩書などではない。勇者とは<優しき力を振るう者>のことなのだからな。君のその頭にいるスライムに、ヴァニエ嬢、私は確信したのだよ、ついに現れたとね」

「俺はそんなたいそうなヤツじゃないがなぁ」


やはり人間だととっくにバレていたか。

しかし困ったな、この流れはどう考えても受け取るパターンだ。


まさかここに勇者の剣があるとは思わなかったが、まあ本人が置いていったなら納得だな。

あとなんかヴァニエが混乱しているみたいだが、今はほっとこう。


「それに最近、プラスエネルギーとマイナスエネルギーのバランスがおかしいように思える。おそらく何者かが召喚されるのだろう。それが何者であるにしろ、私はこの剣を資格を持つものに渡さなければならない。……それが、奴との約束だからな。そしてだからこそ君は、力をつけ人間の大陸に渡るために闘技場に入り浸っていたのだろう? だから私は協力することにしたのだよ、私の権限と力を持ってね」

「ゼノン、ここは乗った方がいいと思う」


確かにこちらのやりたいことを見透かした上で協力するというのであれば、こんな強力な味方は他にいない。

話に嘘は感じられないし、受け入れるべきだろう。

だが、その剣は俺にはふさわしくない。

というかスラキューがいる。


「……わかった、あんたの申し出を受けよう。ただし条件がある」

「条件とはなんだね?」

「……そうだな。それじゃあ、その<ブレイブソード>はエレンに持ってもらう事にする。俺にはスラキューがいるし、剣は本領じゃないんでな。あんたの目的は俺自身を含めた俺たちがその剣を管理すればいいということだろ?なら問題ないはずだ」


エレンが「えっ、お前なにいってんの」みたいな目で見てくるが気にしない。

だって俺剣とかあんまり使わないし。


「ふむ、わかった。エレン君にも十分素質を感じる以上はその条件で構わない。だが、その代わりこちらからも条件を付けさせてもらおう。ギルドカードが更新され次第、早急に人間の大陸へ向かってもらう。今は私が公爵家やその他勢力への牽制を行っているから君たちは安全だが、このままいつまでも持つわけではないのだ。君はヴェルゼ家と名乗っているが、それで全てが騙せるわけではない、私のようにな。なに、無理を言っている自覚はある、人間大陸へ向かうまでの間なら私自身が稽古をつけよう。力が必要なのだろう?」


………あちゃー。

執事のおっさんにばれた時にもしかしたらって思ったけど、やっぱり分かる人には分かるのね。

もう少しここで力を溜めておきたかったが、レベルも上がりポイントもそこそこ貯まったし、あとは帰りながら修行しますか。


そうして揃ってランク3のギルドカードを受け取り、闘技場のオーナークロウの指名依頼で人間大陸へ向かうことになった。

俺とエレンのポイントは全てポーション類と装備類に回し、装備はアイテムポーチと交換し、大量のポーションを通常の空間より広く作られたポーチの中にしまっておく事にする。


外見の大きさはそんなでもないが、日本でいう家庭用の冷蔵庫ぐらいの広さはあるらしい。

ちなみに、ヴァニエのポイントは全てドーピング類に回されていた。

たのむからマッチョはやめてくれ。


そして3日後、俺たちは王都ゲイムを旅立った。



ちなみに魔王は魔王で意味があります。

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