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40 オーナーの招待

長めです。

宿に戻った俺はエレンとヴァニエと合流した、すでに2人とも準備していたようだ。

太陽が沈みかけてるし当然といえば当然か。


「おそかったねゼノン。で、あたまにある金属みたいなのはなんだい?」


エレンが問いかけてくるが、スライムとは分からなかったらしい。

そしてこいつは断じて金属ではない!

スラキューだ!


スライムの質感とはかけ離れてるけど。


「あら? それはスライムですわね? 確か、珍しい種族であるチタンスライムと呼ばれるモンスターのはず。チタンスライムには魔法が効かない個体も存在しましてよ。まさか、テイムしましたの?」

「えっ!? スライムなの!?」


おぉ、さすが魔大陸在住だけあって、ヴァニエは知っていたようだ。

外に出たことがなかったはずだが、はて。

あとテイムってなんだ、そんなスキル持ってないぞ。


スキル欄にあるなら見た事あるはずだが、高ポイントスキルなのか?


「ヴァニエは知ってたんだな。俺にはテイムなんてスキルはないけどなぜか懐いてきたんだ、おそらくこいつをマグレで助けたのが原因だと思う。名前はスラキューってつけた」

「当然でしてよ、モンスターの説明は家庭教師がくれた本に書いてありましたわ! 世界を知るのは公爵家として当然のことですっ」


((え、あなた村や人間しらなかったじゃん))

どうやらお嬢様の知識は偏っているようだ。


「あはは、それでもモンスターと仲良くなるなんてすごい事さ。どこかの国にそういうのが得意な人達が居るって聞いたけど、実際に目にするまでは半信半疑だったよ」

「へー、まぁとりあえずこのスライムは今日から仲間だ。テイムなんてスキルがあるなら闘技場にペット枠で出れるかもしれないし、聞いてみるか」

「キュッ!」


どうやらスラキューもやる気のようだ。

すべすべボディーを振動させて鳴いている。


「しゃべった!?」

「しゃべりましたわ!?」

「キュ?」


この謎に頭がいいスライムに全員驚愕しているが、ヴァニエが驚くということはスラキューは少し特殊なのかもしれない。

まぁとにかく今は闘技場だ、時間ももう迫ってきている。


パーティと戦うのは初めてだし面白くなりそうだな。



そんなわけで、闘技場へ赴きスラキューの出場に関して聞いてみたわけだが、どうやら個人の武器として扱われるらしい。

テイムスキルを使用する人にとってはモンスターが武器だしな、そうなるよな。

まぁ俺はテイムスキルなんて持ってないんだが。


許可も出たので、俺はスラキューを頭の上にのせてフィールドに降り立った。

エレンと俺はお面もつけているので、絵面がヤバイ。


「おい、ヴェルゼブブ家の従者がまたなんか変な装備つけてるぞ」

「いやあれスライムだろ? なんのスライムかは分からないが」

「え、知らねーよそんなこと、本なんて高価なもの持ってねえ。それに従者の力の源はあのお面らしいじゃねぇか、きっとあれもスライムじゃねえって」


どうやら俺たちの噂が独り歩きしているようだ。

ていうか、そんなお面ねーよっ!

いや、あるかもしれないけどさ……。


公爵家長女であるヴァニエはともかく、ただの分家である俺たちが子供であるのにもかかわらず、ヴァニエを超える強さで勝ち進んできたのが不自然に思われいるようだ。

子供姿の魔族もいるかもしれないが、種族がヴェルゼブブ家だしな、その可能性が除外されているのかもしれない。

まあ確かに、大陸闘技大会でも子供の出場枠じゃトップクラスだし、一般的な物差しでは常軌を逸しているかもな。


「お二人とも、そろそろ相手方のパーティがお見えのようですわよ。心の準備はよろしくて?」


どうやら考えている間に相手のパーティも登場したらしい。

見る限りでは人族とそこまで形に差がないな。


あるとすれば、皮膚が緑っぽいのとツノが生えているくらいだ。

ゴブリンのレア魔族か?

全員が筋肉質で、それぞれ大剣・大槍・大盾の重装備をしている。


「レディースエーンジェントルメェーン! 我らが闘技場へようこそだぁ! 今夜の決闘はスリーオンスリーによるチームマッチとなっている! さっそく出場選手を紹介するぜぇ!」

「「ウオォオオオオ!!」」


なんか今日は人が多いな、やはりパーティ戦は称号がかかった重要なバトルらしい。

称号をもらえれば闘技場での対戦相手もポイントが高い相手になるだろうし、ここで行った決闘の結果が考慮されるギルドランクにも変動があるかもしれないな、もしかしたらだけど。


「まずは期待のルーキーからの紹介だァ! 1ヶ月前に突如としてあらわれ全戦全勝、ほぼ全ての試合を無傷で乗り切った流星群! チームヴェルゼブブだァ!」

「「「ウオオオオォーッ!」」」


「ふふん! いずれはお父様においつき、魔王級にだってなってみせますわ!」

「ははは、そんな大したものじゃないんだけどね」

「そもそも魔王級の実力がわからないしな」


ちなみに勇者級もしらない。

あったことないからな。


「さて次は今決闘の本命! 全体の平均がギルドランク5の猛者であり、全員が重戦士のオール前衛パーティだァ! 今日も圧倒的なパワーをみせてくれるかァ!? チームゴブリンハートに期待してくれェ! それでは、両者準備はいいかァ? ……レディー、ファイッ!!」

「「「オオオオオオォッ!!」」」


「……女子供ばかりか。ますますやる気になるなぁ、へへっ」


相手チームの大剣持ちはゲスらしい、まあやる気になる理由なんてなんでもいいけどな。


「はは…同じ剣士として見過ごせる相手じゃないね、あの人は僕が相手しよう」


エレンが飛び出していった。

まあ確かに実力で劣るとは思わないしいいか、仮に実力で劣っているなら分断されるのはマズイが、勝っているなら分断したほうが有利だ。


「じゃあ俺は大槍を相手にしますかね、いくぞっスラキューランスモードだ!」

「キュッ!」


俺はスラキューをランスモードに変化させ、身体強化を纏い突進した。

相手の出方はわからないが、槍の経験を積むに越したことはない。


確かにスキルで槍術を入手できる俺ではあるが、槍をすごく上手く使えるのと槍をつかった戦い方やアイディアが経験として貯まるのでは意味が違う。

技術と戦術の違いだな。


例えるなら、クオリティの高い絵をかけるのと、絵をつかった面白いアピールができるのとでは意味が違うのと同じだ。


「その頭の上の金属は槍であったか。だが、槍としてはいささか大きさがたらないようだ。リーチ不足は決定的だぞ!」


どうやらこちらは武人タイプらしい、ゲスじゃなくてなによりだ。


「……そう思うか?」

「当たり前である!」


そうか、そう思うか。

ならばスラキューの真の力を見せてやろう。

俺はリーチなど関係ないとばかりにそのまま突っ込んでいった。


「馬鹿め、血迷ったか!ぬぉおおおお!【紅蓮槍・突】!」


炎をまとった疾風の突き技だ。

突と瞬はどちらも速度重視だが、瞬のほうが速度が高くカウンターに向いている、ギル兄さんが魔力剣でカウンターを瞬で狙ったのはこのためだな。


だが突には魔力の武器強化と捻りによる貫通効果がある。

当たればさすがの俺でも結構なダメージだろう。

ま、当たればな。


「スラキューランス、ロケットモード!!」


スラキューは俺へ大槍が到達する前に、ロケットのようなスピードでグニョーンと伸びた。

当然スラキューが伸びた先には相手の胴体があり……。


「なッ!? ……ゴッハアァ!」


……直撃した。

まあ大技を使う直前と直後は隙だらけだからな。

いくら突きスキルがスピード重視とはいえ間合いが変わったらなんにもならない。


「バカッ、なっ……」

「俺とスラキュー2人じゃあ相手が悪かなったな」


とりあえず一人片付いた。

経験になったかは分からないが、実践で技を繰り出すだけでも違うと思う。


さて、エレンとヴァニエはどうしてるかな。


「はは、これならゼノンのお兄さんのほうが何倍も強いよ」

「くそっ! この俺がガキに圧倒されるなんてありねぇ! ありえねぇぞぉ!」

「そう思っているうちは、僕には勝てないよ。【極光連剣・瞬】」


エレンが超速度の連撃を繰り出し終わった。

最近のエレンは極光連剣を使いこなし始めているようだ。


レベルの上昇もあると思うが、おそらくここ最近の特訓が効いてる。

対人戦もスキルの使い方を学ぶにはもってこいみたいだ、スキル外スキルというやつだな。


「ふぅ、あなた守ってばかりでつまらないですわ。その盾ももう使い物にならないみたいですし、そろそろ終わりにします」

「ふっ、これが公爵の力か」


ズドンッ


「「容赦ねぇ……」」


俺とエレンはヴァニエのあまりの容赦のなさに震えた。

既に負けを認めた顔をしている大盾相手に、容赦なく巨大ハンマーを叩きつけるとは……


兜が頑丈そうなので死んではいないだろうが、フィールドにめり込んだその姿はヴァニエのパワーを物語っていた。


「おおおおおっとぉ! 決着がついたようだァ! 予想外も予想外、チームゴブリンハートを瞬殺したヴェルゼブブチームの完勝だァ! 今日の試合を俺たちは忘れないぜッ!」

「「ゥオオオオオオ!!」」」


「ふん、相手になりませんでしたわ」

「まあ1ヶ月前なら苦労してただろうけどね」


そんなことはないと思うがな、そのときはチームワークを駆使するだけだ。

すると、闘技場のフィールド中央へ見知らぬ男が歩いてきた。

執事服のおっさんがにこやかな顔で拍手をしている。


「はっはっはっ、実に見事な試合だったよ。私は闘技場のオーナーである、クロウと申す者だ。どうだね? 君たちをぜひ、我が城へ案内させてもらえないだろうか。称号はそうだな、<ブレイブハート>なんてどうかね?」

「……ッ!!?」


どういうことだ、ただの偶然か?

いや、そんなわけがない。

だとすればなんだ?


「ゼノン、どうする」

「<ブレイブハート>ですって? あなた、我が公爵家をバカにしているんですの!? あんな殺戮者たちの称号をここで使うなんて!」


まあ魔族からみれば勇者こそが魔王だからな。

だが、いまはそんなことを気にしている場合じゃない。

ここで王都から逃げるのも手だが、放置するのは問題の先延ばしにしかならない可能性が高い。

幸い相手から敵意がないことを考えれば、誘いにのってみるのも一興だ。


「はっ。まぁ、あんたがどんなつもりでその称号を使ったのかは知らないが、決定権はあんたにあるんだろ? いいだろう、受けて立つ事にする」

「おおぉぉおっと!? これは以外や以外!伝説の闘技場オーナーにして現魔王城の管理者、マスタークロウが現れたと思ったら<ブレイブハート>の称号だァ! 今夜は歴史に残る大スクープだぜェ! 会場に集まった魔族共も今日という日を忘れるんじゃねぇぞォ!」

「「「ウオオォオォォ!!」」」


そうして俺たちは執事服のおっさんの城へと案内された。

スラキューをなでながら。


スラキューは汎用性が高いですね。

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