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37 はじまったのなら、勇者召喚を止めても無駄だ

帝国の聖女の予知は主人公が対象ではありません、世界の異変と解決方法が見えるだけです。


今回はゼノンが解決の鍵です。

澄んだ魔力が俺の宿の個室前まで来た。

近くで感じられるようになってようやく思い出したわ、これ聖女だ。

あの時の聖女より魔力が大きいが、たぶん違う聖女かなにかだろう、質が全く同じだ。


問題はいったい何しにきたんだってとこだな、ここが魔大陸じゃなければ勇者うんぬんで片付くんだが、俺を追ってきたとしても聖女がここに到達するのが速すぎる。

まるで「ここに居るのが前から分かってる」前提じゃないとつじつまがあわない。

聖女の加護に【予知】があるのは知っているが、まさかそんなピンポイントで信じ込んでいいか微妙だ。


……コンコン。


「夜分遅くに失礼するわ。ゼノン・クロスハート君、いるわね?」

「(……)」


エレンがノックの音に反応して起きたようだ。

……ヴァニエは全力で寝ているけどな。


相手は女性の声だ、おそらく聖女だ、間違いない。

あとクロスハートとか言うなし!

誰が聞いてるかわからんのに、バレてまうやろ……。


今すぐ出てもいいが、聖女のそばにもう一人でかい気配を感じる。

護衛にしては数がすくないし、教会の暗部ではないみたいだ。


だが怪しい、怪しすぎる。

態度から様子を見よう、とりあえず寝たふりだ。

俺はねてるよー。


「あら……? おかしいわね? 中から神の加護を感じるのだけれど」


……ビクッ

神の加護ってなんや、分かるものなのか?

聖女おそるべし。

しかたない、狸寝入りはおしまいだ。

いざとなったら【蒼炎の魔神】がある、現在魔力はMAXだし負けはないだろ。


「はいはーい、ここに居るよ~おねぇさん達はだれ?」


子供モードで一応聞いてみる。


「あら、ふふっ。お姉さんだなんて、メイ以外に呼ばれるのは初めてだわ」


メイ!?

ってことは、帝国の聖女か。

メイちゃんいつも語ってたしな。


「私が居るのも気づいていたか、さすがは剣聖の息子。魔大陸の首都で無暗に立場を明かすことは憚れる、私たちは味方だといっても信ぴょう性はないが、<助けてほしい>ならどうだろうか?」


パパンを知っているのか、ってことはあのおっちゃん声も人間だな。

なるほどわかった、まずは信用していいだろう。

それに助けてほしいとは考えたな、こちらに主導権を委ねてきている以上は、危害を加えないというアピールになる。

とりあえず通していいだろう。


「わかった。今開ける」


口調を元に戻し、扉を開いた。



聖女たちを通した俺は、すぐに鍵をかけ風魔法で外への音を遮断する。

どこで情報が漏洩するか分からないからな。


「で、聖女様がなんの用? ここまで来るのには1~2年はかかるはずだ。俺たちの境遇からして【予知】でもないとこのタイミングでは来れないように思えるが?」

「……あら、これは想像以上ね」

「フム、いつ使用したのかも分からない風の結界魔法に、聖女様の加護の特定。やはり勇者で間違いないようだな」


やっぱ勇者がらみの【予知】聖女か。

おそらく、俺たちが飛ばされたあと王都で騒ぎが起きているのだろう。

そしてそれを予知し、勇者である俺の元へ先回りしてきたということか。

聖女同士なら勇者の情報が共有されててもおかしくない、さっそく召喚の件について聞いてみよう。


「勇者、ね。俺が勇者であると知っているなら、なぜ勇者召喚などというバカげたことをしているんだ。あれほどのプラスエネルギーを消費してしまえば、これから先の未来で使えるカードがなくなるぞ。本当にどういうつもりなんだ?」

「……ッ!? まさか、勇者召喚どころか、召喚の条件まで把握しているなんて。ありえない……、いいえ、ありえるわね、この世にありえないなんてこと存在しないわ。ただ、あなたが私の想像を超えているということ。ですが、それなら話が速いわ。いま王国では大規模な勇者召喚がはじまろうとしています。勇者である、ゼノン・クロスハートが至急王都へ向かい、召喚を止めて頂きたいのです」


やはり召喚は既に始まっていたか。

しかし明確に王国での召喚と言い放つということは、もう表に出た情報であるってことか。

うーんでも、それを俺にとめてほしいって言われてもね、正直無理だと思う。

いや、無理だな。


「いや、無理だな」

「……なぜだっ!そなたは既に事の重大さを理解しているはずっ!! このままでは人間が魔族を滅ぼすか、魔族が人間を滅ぼすかしかない最悪の戦争がはじまるのだぞ!! そなたの父、ロイル・クロスハート殿もすでに正気ではない!そなたが死んだと思っているのだ! このままでは、このままではいずれ最悪の結末になるッ!」


パパンが俺を死んでいると思っているのは可能性の一つとしていたが、こうなってしまったか。

てか、本当に無理なんだよね。


エレンがパパンの話しが出た時に悔しそうな顔で拳を握っていたが、おまえのせいじゃない、おちつけエレン。


「違う、俺はやらないといっているんじゃない、無理だと言ったんだ」

「……どういうことだ?」

「確かに<今回の>召喚を止めることはできるよ。だが、はじまってしまった本気の<戦争>を止めることは誰にもできないんだよ。そして、戦争が止まらない以上、今回だけ召喚をとめても意味はない。何度でも召喚するものは現れる、それこそ戦争がある限りな」

「……ぐぬぅ!」


おっさんは納得いかないようだが、理解はしているようだ。

さすがパパンの知り合いだな。


「だから俺は、力をつけることにした。ここ魔大陸で力をつけ<勇者>と出現すると思われる<魔王>を力ずくで説得する。……どちらも殺さずにだ。どちらも死んでいなければ、生きている両種族のトップが戦争のストッパーになるからな。俺はそうするつもりなんだよ。当然帰る手段も計算に入っている、ここで高ランクハンターとなり、魔族に便乗して人間大陸へ向かうつもりだ」


まぁ、俺が勝てる前提の話しなんだけどね。

でもちゃんと鍛えれば俺の方が強い、神のお墨付きだ。


「……あなたは、いったい」

「いったいもなにも、ただの人間さ」

「……ッ。わかりました、私に言うことはもうなにもありません。あなたを連れ帰ることはできませんでしたが、信じてみたいと思える話でした。……あなたに、女神さまのご加護がありますように」


いや、ないんだなそれが。


「少年よ、私はそれでも納得ができない。だがそなたが、漢として決めた事ならば何も言うまい。だからせめて、王子を頼む」


おっさんが土下座してきた、この世界にもあるんだな。

まぁ仲間や親友を守るなんて当たり前だ、言われなくてもそうするさ。


「ははは、騎士長には悪いけど、僕はもうきみがしっている僕を超えてるよ。力も、技術も、何もかもね。心配されるなんて論外さ」

「そのようですな、これはご無礼を」


あんた帝国の騎士長だったんか、そりゃパパン知ってる訳だ。


そうして聖女と騎士長は帰っていった、このことを国の上層部やパパンに伝えるらしい。

聖女の【予知】では信ぴょう性にかけるらしいが、実際に「見た」のなら可能性はあるとのことだ。


「ゼノン、君が公爵家だと聞いたときも驚いたけど…まさか勇者だとは思わなかったよ。目標がまた高くなったな」

「いや、ごめんあれウソなんだ」

「えっ」


……てへっ


あと、ヴァニエおまえ、さすがに寝すぎじゃね?

起きる気配が全くない。



ロイルはまだ王都を出発しようとしているところです。

聖女の予知で「進軍」しているところが見えてるだけですね。

でも既にブチギレているのは事実です。

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