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33 俺が説く人間説。俺「奴らは強大な種族だった…」

縦ロールちゃんが魔大陸編でのヒロインになるかどうかは…秘密です。

俺は今、人類で最も偉大なことを成し遂げたのかもしれない。

そう、魔族との和平を成立させたのだっ!

……半日かかったけどな。


「そう、でしたのね。私は今まで、何も知りませんでしたわっ! 愛とは戦い、平和とは決着。世界は愛と平和で廻ってたんですのねっ!」


てへっ、無理でしたっ


「あ、うん、そういうことだ。じゃあ、俺たちはいくから、またな」

「お待ちなさい」


……はい。


「……ゼノン、もう諦めよう」


エレンの目が死んでいる。

親友は説得をとっくに諦めていたようだ。


「私に愛と平和の大切さを教えてくれたあなたは、きっと盗人なんかではありませんわ。これでも見る目は持っているつもりですのよ。ですから、私は決めました。この魔公爵家長女、ヴァニエ・ヴェルゼブブが命じます、私の家来になりなさいっ」

「いや、無理」

「なぜですのッ!?」


いや、なぜですのって言われても。

俺は早くクロスハート領にもどらなきゃいけないし、俺のオアシスが待ってるし……


だが、この子そんなに悪い子じゃなさそうなんだよな、思考回路が完璧に魔族だけど。

それに家名が気になる、ヴェルゼブブって地球の大悪魔の名前じゃなかったか?

とにかくこの子に付き合ってる場合じゃない。


「無理なものは無理だ。俺たちには戻るべき場所、家がある」

「戻るべき場所? わかりましたわ、ではあなたの家まで案内しなさい。あなた種族はなんですの? ヴェルゼブブ家と同じ肌をしていますし、ツノも生えていませんわね。分家か何かでしたら、ご両親に便宜を図ってもよろしくてよっ! オホホホホホッ!」


縦ロールちゃんは家までついてくる気らしい。

というか、人間を知らないのか?


あの蝙蝠女はバリバリ知ってたが。


「それも無理だ。家につくまで何か月かかるか分からないし、何年かもしれない。何よりお前の親はどうするんだよ、雇うにしても許可がいるだろ。……どちらにせよ雇われないけどな」

「……そうだよ。キミのご両親も心配しているかもしれないし、もう戻った方がいい」


魔族の年齢なんてわからないが、人間と同じような感じらしいし、たぶん親とかいるだろ。

たぶんな。


蝙蝠魔族のときは激情に駆られていたエレンも、相手が子供の姿であるためか同情していた。


「ご心配なく、私のお父様はこんな些細なことを気に掛けたりしませんのよ。あの筋骨隆々としたお姿の中に含まれた包容力には、全てをお許しになられる優しさがありますの。私もはやくあのような姿になりたいですわっ」


いや、筋肉関係ないやろ!

それに縦ロールちゃんの筋肉姿なんて誰が得するんだ。

少なくとも俺は見たくない…魔族の価値基準は謎だ。


「そうか。どうするエレン、俺はもうついていけそうにないぞ」

「僕ももう無理だ」

「オホホホホッ! ならば決まりです! あなたの家へ案内なさい!」


……あい。


そうして俺は謎の縦ロール、いや、ヴァニエを連れて町を目指すことにした。

ここ山の中だったんだよ。


「なぁ、腹も減ったし、とりあえず町を目指さないといけないんだが、ヴァニエは町がどこか案内できたりしないのか?」

「知りませんわ」


うん、なんとなくわかってたよ。

すると、エレンが別の質問を投げかけた。


「ところでヴァニエさん、<人間>もしくは<人族>とか聞いたことない?」

「にんげん? にんげん……、たしかお父様が先日、他の公爵家の方とにんげんの町へ転移すると仰っていましたわ。魔国ヴァンゲイムの公爵方が総出で向かうなんて、きっと素晴らしい種族なのですね。間違いないです、私の勘がそう囁いていますわ」


盛大に勘違いしていた。

てか、王都へこの国の魔公爵が総出でお出迎えしていたのか。


でもまあこの子のアホの子っぷりを見るに、脳筋が多そうだ。

おそらく物的被害はともかく、人的被害は大丈夫だと思う。

人間なめたらアカン。



「そうだ、人間には魔法があり、スキルがあり、文明がある。もの造り最強の種族とも言われている、伝説の種族なんだ。」

「……ブホッ」


おいエレン笑うな、台無しだぞ。


「まぁ! やはりそうでしたのね。お父様のあの気合いの入り方、納得がいきましたわ」

「あぁ、そういう事だ」


そういうことだ、そういうことにする。


そんなこんなで、伝説の種族の情報をヴァニエにダウンロードしていると、大勢の魔力を感知した。

やっと町か、森を出てから約2時間ってとこだな、いいかげん腹減った。

というか俺徹夜だわ、飯食って寝たい。

魔石ならある、使えるかわからんが。



「町だ。いや、村か? とりあえずやっと飯が食えそうだな」

「そうだね、さすがにもう眠いけどね」


門番はいないっぽいな、魔族の文化の違いってやつだろうか。

ヴァニエは城から出たことがないのか、キョロキョロと村を物珍しそうに見渡している。


俺たちは村へ不法侵入(?)したあと、畑を耕しているゴブリンみたいな種族に声をかけた。


「あーすいませーん、ここらへんに宿か食堂ってあります?」

「あ゛~? なんダ、ヴェルゼブブ家のお子さんじゃねぇガァ、こんな村へようごぞダ。食堂はねぇガ、宿なら村の端っごのデケェ建物がそうダァ」

「ありがとうございましたー」


やはりヴェルゼブブ家の領内だからか、まったく不審に思われてない。

なんとかなりそうだな。


そうして俺たちは魔石を換金し、宿へ泊った。

1人一泊で、貯蓄していたわたあめ魔石が20個消えた、なんでや。

おそらく、魔国ヴァンゲイムではE~Dランクの魔石なんてそこらへんに転がっているんだろう。

なにせ魔大陸だからな、魔物の平均レベルも高そうだ。


─翌日、俺たちは村での情報収集をし旅立った。

魔石と交換してもらった地図によれば、魔国ヴァンゲイムは人間の大陸に一番近い領土らしい。

ヴァンゲイム→教国→帝国→クロスハート領みたいだ。


おそらくだが、教国の賢者たちが魔大陸への封印魔法で侵攻を極力抑え、魔大陸側はヴァンゲイムという最大の国家を中心として攻め続けているのだろう。


ちなみにヴェルゼブブ家は、数ある公爵家の中でもヴァンゲイムの一番端だった。

海とかどうすっかなぁとか考えつつ、次の目的地を目指す。

次は今は亡き魔王がいたヴァンゲイムの王都だ。


ヒロインどころかワロインになりかけてます。

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