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30 王子の意地

ズバーンッといって、ドゴーンッですよ!

俺が身体強化を発動し「戦闘」モードに入った瞬間、ワイルドセンスが警戒を訴えてきた。

だがそれはギル兄さんからではなく、闘技城の外…エレンが走り去っていた方角からだ。

そしてこの危険を放置すれば「取返しがつかない」と、俺の何かが訴えていた。


正直、俺が普通に戦ってもギル兄さんに負けるとは思っていない。

いや、オーバードライブを使わない条件で戦っても「相手にならない」だろう……。

だが、ワイルドセンスに反応した警戒の強さからして、一刻を争うレベルだった。

俺は一瞬で決着をつけることにした。


「ギル兄さん、ごめん。ちゃんとギル兄さんのこと知りたかったけど、今はちょっとダメみたいだ」

「……何?」

「【オーバードライブ】」


瞬間、世界の動きが止まったかのような錯覚を得る。

俺は一瞬でギル兄さんの懐へ詰め寄り、正拳突きを繰り出した。


ドゴォッ!!


「……ッ! ……ッ!!」


兄さんが声をだしかけるが、遅すぎてよく音が拾えない。


俺は、オーバードライブを切った。


ドサァ……。


「「「…………」」」


闘技場が静まり返った。


「しょ、勝者、ゼノン・クロハート? ……ッ! 勝者ッ! ゼノン・クゥウウウウロスハアアアアァト!」

「「「ウオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」」」


ギル兄さんが沈んだのを確認すると、俺はなにふり構わず走り出した。


「ギル兄さん、また今度やろう」


ギル兄さんからは何の反応もなかったが、たぶん聞こえていたと思う。



──闘技場から飛び出し、そのままワイルドセンスから感じた方角へ走っていると、ミーシャがいた。


「……ミーシャッ!! 大丈夫かッ!?」

「……ッ! ゼノンさん!」


ミーシャの反応があった、よかった。とりあえずミーシャは無事だ。


「エレン様が飛び出したので追いかけたのですが、ものすごいスピードだったので見失ってしまいました。……はぁ」

「そうか、とりあえずミーシャは俺の父さんに緊急事態だと伝えてくれっ、俺がエレンの方に向かうからそっちを頼む!フィッテが闘技場にいると思うから絶対に外へ出さないでおいてくれっ!!」

「えっ? え?」


よく分かってないみたいだが、大丈夫だな。

ミーシャは仲間の必死さが分かる奴だ、絶対に実行してくれるはずだ。


そうして、ワイルドセンスの危機感知能力を頼りに走り続けていると、ものすごい気配と魔力を感じた。


「あそこかっ! ……ッ!」


辿り着いてみれば、そこにはボロボロの姿で蝙蝠女に応戦しているエレンがいた。

ボロボロというか、すでに戦えるレベルの怪我じゃない。


「うふふ、こんな活きのいい子供は初めてだわぁ。こんな子を生贄に捧げたら、さぞかし出来のいい召喚体が生まれるわねェ、あはっ!」

「ぼ、くは、ね、これでも王子なんだよ。召喚とかは、わからないけど……、君が仲間に、よくない事をしようと……、しているのは分かるのさ……。──だから僕は……、<友達>を裏切るような事だけは絶対にできないんだよっ!!」


エレンから膨大な魔力が生まれ始めた。

纏っている光のオーラが明らかに通常の【光騎士】の次元じゃない……。

まさかあいつ、命を捨てようとしているのかっ!?


「おいっ!無茶だエレンッ!バカなこと止めて後は俺にまかせろッ!!」

「……ッ、……ゼノン、は、ははは。ざまぁないね、魔族。僕の、……勝ちだ」


そう言ってエレンは光のオーラの生産をやめ、ドサリと地面に倒れた。

まさかお前、俺がくる確信があったのか。

時間稼ぎのためなんかに無茶しやがって……


「あらぁ……? あは、あははははぁ! あんたも美味しそうな魔力してるわぁ。あの筋肉達磨、たまにはいいこと思いつくじゃないの」

「……黙れ」

「はぁ? ……ッ!?」


俺の怒りで、体内の魔力が沸騰しそうになるほど膨れ上がった。

2万越えの魔力が俺の制御下を離れ、暴れだしたみたいだ。


「悪いな、……お前はもう、許さない事にした」


制御下を離れ、暴走した魔力が俺の周りにオーラのように集まってきた…オーラは炎のように揺らめき、蒼く輝いている。

俺にはなんのことだがわからなかったが、ちょうどいい【オーバードライブ】以上の力を感じるからな。


俺は女型悪魔に急接近し、感情のままに拳を振り下ろした。


「グボォッ! ちょ、ま、まっ「待たない」……ガハァッ!」


俺は怒りのままに拳を振り下ろし続け、気が付いた頃には蝙蝠女はミンチになり、贓物をまき散らしていた。


「……はぁっ、はぁっ。終わったぞ、<親友>」


エレンに語りかけるが、当然反応は帰ってこない。

すると突然、蝙蝠女の体から魔法陣が輝きだした。


「はぁッ!? くそっ死んだあとに発現するトラップ魔法かよっ!」


この蝙蝠女が自分の死を考えていたとは思えない、おそらく他の魔族に掛けられていたのだろう。

ということは少なくとも複数いる。

召喚がどうとかいっていたし、教会がもぬけの殻だったのもこいつらのせいかっ!


しかし気づいたときには魔法陣は発動していた。

今の俺の魔力は暴走していて魔法スキルを使える状況じゃない、パワーはあがったがコントロールするには時間がかかりそうだ。


すまんエレン、最後の最後で詰めが甘かった。

幸い、魔法陣に攻撃的な力を感じないのが救いか。

そして俺たちは魔法陣に飲み込まれていった。


(ま、死なないならなんとかなるだろ。闘技場にはパパンとママンがいる、そして各国の猛者にあの王のおっさんだ。どんな魔族が攻めてきても、最悪の事態になることはありえない、絶対にな。)


そして気づくと、俺とエレンは真っ暗な部屋にいた。


「ッファ!?」


なんでや。


魔大陸編、はじまります。

学園編が終わったわけじゃありせん、学園編ルートにはいずれ戻ります。

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